今こそ原点に立ち返り政策転換が必要
社会保障の確立を求める自治体議員連盟準備事務局 長谷川 豊
社会保障制度は、憲法25条の趣旨である国民には生存権、国には生活保障の義務があるとの定義にたって、公的な支援を必要とする国民の生活全般を、国や自治体が責任を持って支え、国民の健康で文化的な最低限度の生活を、権利として国が保障するものである。公的責任で国民の安心と安全を確保する極めて重要な制度である。
しかし近年、「岐路に立つ社会保障」と述べられるように、制度の根幹ともいえる考え方、つまり国が果たすべき公的な責任が曖昧となっている。そのことが社会保障費の抑制や給付の削減につながり、公的支援が極めて不十分な内容にとどまっている現状となっている。
実質賃金の低下に加えこの物価高のもとで、このような状況を引き続き許すならば、社会保障制度が、所得再分配によって果たしてきた所得格差の是正、社会の分断や不安定化を抑制するという役割も損なわれる。さらなる格差拡大やいっそうの貧困化、そして社会不安につながることは明らかである。
したがって今こそ原点に立ち返り、国の責任と義務を明確にして、現行の社会保障政策の大転換を進めることが必要である。そして国民の安心や安全のために、公的資金の投入によって社会保障の充実をはかることが喫緊の課題となっている。
『国民会議』では
政策転換はできない
高市首相は1月5日年頭の記者会見で、税と社会保障の一体改革について議論する超党派の議員や有識者で構成する「国民会議」について、今月中に立ち上げると表明した。しかし自らが突然国会の解散を決め、総選挙実施を行い、その開催は延期となった。
目玉である「給付付き税額控除」は、中低所得者に対し、消費税の逆進性の緩和、低所得者層に直接的な現金給付が届くなどメリットもある。しかし公平性を重視するには所得の正確な把握が必須であり、現行制度との整合性や、財源の在り方など、実現には時間がかかることが指摘されている。国民会議も、予算審議すらもすっ飛ばす解散では、物価高対策などとても追い付かない。国民の置かれている待ったなしの現状が理解できていない。
そもそも「国民会議」は、これまで政府が進めてきた「全世代型社会保障の構築」の推進がベースである。
医療・年金・介護どの分野でも高齢者への支出が多い。給付は高齢者中心、負担は現役世代中心の今の偏った制度を改めるというものだ。それはことさらに世代間の対立を煽ることで、高齢者への負担は広げ、給付は削減し抑制するというものだ。現役世代も満足できる負担軽減や給付にはほど遠いことは明白である。
さらなる社会保障の
削減、切り捨て、負担増
高市首相は昨年12月、連立を組んだ維新と、負担増や受診控えにつながるなどの恐れの多い類似薬の保険適用除外を合意した。対象の医薬品は広く処方されており、保険適用外となると利用者は格段の価格の市販薬を求めざるを得ず重い負担になるのは明らかだ。
昨年11月の予算委員会で、高市首相は2025年6月の最高裁による生活保護の基準引き下げ違法判決を受けて、政府として初めて公式に謝罪した。判決では厚労大臣の判断過程に誤りがあったとし、憲法25条に基づく生存権の保障にたって、国は謝罪し減額前の水準に戻すべきとの内容であった。
ところが厚労省は8月に入り、国が支払うべき支給額が総額4千億円を超えるとも言われる試算を拒否し、専門委員会を設置し再減額して1470億円とし、原告とそれ以外の受給額に差をつけるなど、法の趣旨を逸脱する極めて不当な対応を行った。当然にも「最高裁判決に従わない厚労省の対応は、人権侵害行為であり、直ちにすべての生活保護利用者に生活保護基準引き下げ以前の保護費を支給するべきである」として、日弁連の元会長ら11人を含む1254人の弁護士による共同声明が発表された。
根強い反対により石破首相は高額療養費制度の限度額引き上げを25年3月に凍結した。それからからわずか1年。高市自維政権は凍結を解除し、上限額引き上げを予算案に盛り込んだ。配慮条項はあるというものの、負担が増えれば治療はやめざるを得ない。セーフティーネットは大きく後退したと言わざるを得ない。
自治体議員連盟に参加し運動を前進させよう!
コロナ禍の中で私たちは医療崩壊の現実に当面した。政治による医療費抑制、削減が制度の劣化を招いた結果であることは容易に想像できる。その後の記録的な物価高の中で貧困化や格差がいっそう進んだことも社会保障費の抑制と削減による制度の劣化に理由があることは明白である。まずその事実を明確にすることが重要である。
社会保障の充実を実現するためには、原点に立ち返り、社会保障が果たしている再分配による格差の是正の機能や役割を改めて重視すべきである。本質的な問題から目をそらす「世代間格差」、社会の分断を生む「若者対高齢者」の対立構図を解消することが重要である。
そして応能負担の原則を徹底し、公平性の実現、支払い能力に応じた負担、世代間・世代内での公平性を実現することが必要である。国民各層が、共通の公平感や共有できる負担感で合意ができれば、思い切った公費を投入することで、医療や介護をはじめ各分野の社会保障の充実を進めることが可能である。そのためには何よりもそれを推進できる政治の在り方が問われることは言うまでもない。
医療、介護、子育て、生活全般にわたって地域住民と身近な関係にある自治体議員は、社会保障制度の利用や正しい在り方など、発言や行動が果たす役割は大きい。
国の社会保障制度の在り方を本来あるべき姿に転換し、充実を実現させるには、全国的なネットワークを形成し、地方議会で自治体議員が社会保障政策に対して異議申し立てや、充実のための提言を行い、その運動を全国的に前進させることで実現をはかることが、岐路に立つ社会保障制度の政策転換に最も必要であり、実現可能な道筋と思える。
社会保障の確立を求める自治体議員連盟設立の呼びかけに応え、全国の自治体議員の皆さんが賛同され、共に運動を進められることを強く訴える!
