「日朝全国ネット第2回総会・シンポジウム」に参加して

国交正常化のためには日本が変わらなければいけない

広範な国民連合・福岡代表世話人 中村 元氣

 「日本と朝鮮を結ぶ全国ネットワーク」(略称:日朝全国ネット)の第2回総会とシンポジウムの前日(9/26)、共同代表の私をはじめとした日朝全国ネットのメンバーで、「朝鮮学校に対する公的助成の実現をめざす国会議員の会」の石橋通宏参議(立憲民主党)やラサール石井参議(社会民主党)ら8人の国会議員と共に、文科省に対して朝鮮学校の高校無償化、幼保無償化適用を求める要請行動を行った。

文科省に朝鮮学校
差別撤廃を求める

 要請では、高校無償化、幼保無償化制度からの朝鮮学校除外を止め、在日朝鮮人の人権保障を求める内閣総理大臣および文部科学大臣宛ての要請書が、文科省の担当者に手渡された。
 続いて、私をはじめ日朝全国ネットのメンバーや国会議員らが「朝鮮学校への差別を直ちにやめて早期の制度実現を!」などと発言した。文科省の3人の若い女性担当者は、「(朝鮮学校は)法令上定められた基準に適合すると認めるに至らなかった」「現時点では改めて検討する予定はない」といった内容を繰り返すのみだった。
 参加者からは「『日本人ファースト』を提唱する政党により外国人差別や排斥などの風潮が高まっている」と述べ、「朝鮮学校の制度除外自体が外国人差別につながっている」などと追及したが、やはり同じように、「法令上定められた基準に適合すると認めるに至らなかった」「現時点では改めて検討する予定はない」と、同じ回答を繰り返すのみだった。
 私をはじめ参加者は、質問の内容を変えていろいろな角度から質問をしたが、回答は、まったく同じ内容で終始した。同席した石橋議員やラサール石井議員からもいろんな角度からの質問を行ったが、回答は、まったく同じで、私は、不親切な回答に対する「怒り」よりも、なぜか、「哀れさ」を感じた。
 同席された朝鮮学校保護者からの切実な訴えに対しても、表情一つ変えずに同じ回答を続けるその「意志」の強さ、否、官僚制度の強靭さ、自分の「感情」を抑制させられているこの現状を、私は、改めて日本社会の断面を見た感じがした。いくら官僚社会であっても、「子どもの教育」を柱とする文科省のみは、少なくとも「血の通った」「小童の心が分かる役人」と思っていたが、思い過ごしでしかなかったのか!
 その後、文科省前で「金曜行動」を行っている仲間に、文科省交渉の内容を私が代表して報告をした。参加者はその報告内容に落胆はしたものの、私の報告後も、すぐに抗議活動を再開し、「制度実現まで闘うぞ!!」と、力強くシュプレヒコールを続けた。
 この日の金曜行動には、各地から集まった日朝全国ネットのメンバーや朝鮮大学校の学生、オモニたち、支援団体のメンバーら約70人が参加した。

排他的な社会を許さない

 翌日の9月27日には、今年2月に結成された「日本と朝鮮を結ぶ全国ネットワーク」(日朝全国ネット)の第2回総会が日本教育会館で行われた。全国各地の日朝友好連帯組織、朝鮮学校支援団体、朝鮮半島平和促進団体の代表やメンバー、国会議員、来賓である総聯中央の徐忠彦副議長兼国際局長、各地総聯本部や中央団体・事業体の国際活動担当活動家ら、オンラインでの参加者も含め100余人が参加した。
 総会ではまず、保坂正仁共同代表(日朝友好促進東京議員連絡会・共同代表)が、「昨今は、寛容で包容力のある社会から、狭隘で排他的な社会へと移行している。今こそ日朝全国ネットの役割が高まっている」と強調した。そして日朝全国ネットが掲げる①日朝国交正常化、②在日朝鮮人の権利確立、③東北アジアの平和と安定、という三つの課題の解決に引き続き取り組んでいくと述べた。
 続いて、立憲民主党の平岡秀夫衆議院議員、社会民主党副党首のラサール石井参議院議員、徐忠彦総聯副議長が来賓のあいさつを述べた。

来年第3回総会は長野県で

 総会では、議案として提出された日朝全国ネットの活動報告、各地活動報告、情勢および活動方針、運営体制に関する報告が行われ、参加者たちの拍手で承認された。
 日朝全国ネットは、18の中央団体、68の地方団体(37都道府県)、計86団体、そして、国会議員、県議会議員、大学教授、記者、文化人など多くの個人を網羅している。結成以降、三つの活動の柱に沿って、活動を展開してきた。今後は当面、①日朝国交正常化を求め、市民レベルでの日朝交流を追求し、②政府交渉に取り組み、③朝鮮訪問団を組織し、④民族教育の確立を求め、朝鮮学園を支援する全国ネットワークとともに、朝鮮高校への就学支援金制度適用のための政府交渉、幼保無償化実施のための各自治体への要請や政府交渉、金曜行動支援に取り組み、⑤朝鮮戦争の終結を求め、広範な市民との連帯強化に取り組んでいく予定だ。また、第3回総会は来年長野県で開催することとした。
 最後に、日朝全国ネット共同代表の私が、閉会のあいさつを述べて会を閉じた。

日朝平壌宣言から23年

 総会後、同会場で「日朝全国ネット戦後80年企画第3弾」となるシンポジウム「日朝平壌宣言から23年―国交正常化の進展を求めて」が行われ、日本市民、一般の同胞や活動家など数多くの人が参加した。
 シンポジウムでは、日朝全国ネットの藤本泰成共同代表(フォーラム平和・人権・環境顧問)の司会のもと、3人のシンポジストが各自提起を行った。東京大学の和田春樹名誉教授が「日朝国交正常化推進運動」について、朝鮮大学校の李柄輝教授が「朝日関係をめぐる課題―朝鮮からの視点で」と題して、カナダ在住のジャーナリストのピース・フィロソフィー・センターの乗松聡子代表が「日朝国交正常化のためには、日本が変わらなければいけない」と題して、それぞれ3人が発言し(字数の関係で二人の発言のみを掲載)、その後、総括討論が行われ、閉会した。

新たな結びつきで運動を

東京大学・和田春樹名誉教授

 日本では政府が「拉致三原則」に固執し、議会、メディア、国民がこれに従っている。この状態から脱して、拉致問題の現実的解決を求めなければならない。拉致問題の解決には国交正常化交渉を再開し、その中で拉致問題の交渉を進めるべきだ。そして、国内では、在日朝鮮人との共同活動が欠かせない。今回結成された日朝全国ネットに期待したい。