戦後80年、大陸侵略130年

沖縄の国際交流(地域外交)の目指すもの

沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流プロジェクト共同代表     ・
東アジア共同体研究所理事/世界国際関係学会アジア太平洋前会長 羽場 久美子

 編集部 本誌9月号は羽場久美子先生の署名入りで「若者が平和と未来をどうつくるか」と題した論考を掲載した。これは「若者訪中団」結団式での先生の記念講演を大幅に要約したものだった。しかし先生の最終校閲を受けていなかったため、先生の意図に反した論考となってしまった。そうした不完全な論考を掲載してしまったことを先生と読者の皆さんにおわびいたします。
これを撤回するとともに、東アジア共同体研究所が那覇市で9月7日に開催した「沖縄のこれからを考える」シンポジウムでの発言全文を掲載します。

 戦後80年、東アジア共同体研究所10年の、大変貴重なシンポジウムに、沖縄を平和のハブに!共同代表として参加させていただき、誠に光栄に存じます。
 タイトルは、「戦後80年、大陸侵略130年 沖縄の国際交流=地域外交の目指すもの」ということで報告をさせていただきます。

1、戦後80年、戦争半世紀の反省と平和構想 〈被害と加害〉

 戦後80年は、沖縄戦80年、原爆投下80年でもあります。
 私は、父が80年前の8月6日、爆心2キロの広島駅構内で被爆し奇跡的に生き残った広島の被爆2世です。戦争がいかに無辜の人々を犠牲にするかを心に引き継いできた世代です。沖縄の皆さんもそうだと思います。だからこそ強い平和への希求があります。
 2025年は、戦後80年と同時に、戦争の節目の年です。日清戦争130年、日露戦争120年、第1次大戦勃発110年、昭和100年です。
 明治、大正、昭和20年は、戦争の半世紀でした。今年は、極めて節目の年です。
 にもかかわらず、「日本の大陸侵略130年」、戦争半世紀のことは、誰も語りませんね。
 それを知ることは極めて重要です。知らない、語らない結果、「戦前」といわれる状況が作り出されているように思います。
 沖縄、広島、長崎は、先の戦争で、一番被害を受けた地域であり、人々です。
 だからこそ、併せて、誰も語ろうとしない《日本軍部の加害》についても、私たちは考えておく責任があるように思います。被害と加害は戦争の裏表だからです。
 なぜなら、被害には常に加害者がおり、加害には常に被害者がいるからです。
 沖縄は、沖縄で起こった最大の悲劇の加害責任を、アメリカと日本政府・日本軍部に果敢に問い続けるべきです。政府とアメリカがそれを認め、謝罪するときに、平和が訪れるのだと思います。
 広島、長崎の原爆を考える際も、私たちはアメリカの原爆投下の罪を許してはならない、謝罪を要求するべきであると思います。謝罪をしないから、アメリカは今でも原爆を落としたことで日本の戦争をやめさせられたと言い、いつまでもリメンバー・パールハーバーを言い続けています。また沖縄で、さまざまの犯罪を起こしながら責任を取らずにいます。
 同様に、私たちは、130年前に日本軍が大陸で起こした日清戦争、120年前の日露戦争、115年前の韓国併合について、日本軍の加害を認識し、謝罪を行うべきと思います。
 また第2の戦争の山、1931年に始まる中国の仕業と称して鉄道を爆破させた柳条湖事件と満州事変、満州併合、それが日本の仕業と知った後の33年の国連脱退、再び中国の仕業として戦争を始めた37年7月の盧溝橋事件、同年12月の南京虐殺事件、10年近くにわたる軍部と学者による731部隊の細菌戦と人体実験など、日本軍部の長期にわたる大陸への、噓と卑怯と人として許せない残虐行為を行った戦争の加害責任をしっかりと認識し、できれば中国旧満州地域に行って見て深く考える必要があります。(百聞は一見にしかず、です)
 これら日本軍の著しい加害の歴史を知らないことによって、「中国が攻めてくる」と歴史的にはなかったことを、多くの人が口にし恐れる結果となっています。噓は軍の常套手段、かつての日本軍、関東大震災の時の朝鮮人虐殺と一緒です。
 今や参政党が、他の野党をしのいで比例区で多くの票を取り、若者と就職氷河世代(40代から50代)に広がったように、「外国人が日本人を脅かしている、排斥せよ! 核武装は安上がり!」というとんでもない噓が、若者たちの間に広がる状況を生み出しています。
 今年8月、長崎で、長崎、広島、沖縄の若者たちを集めて大陸侵略130年と、戦後80年の話をし、若者に加害と被害を議論していただいたうえで、40人の若者たちが、中国のハルビン、北京に行き、731部隊の記念館や盧溝橋事件などの抗日記念館を見、中国の若者たちと交流してきました。とても奥深い素晴らしい旅で、近く報告会が行われる予定です。
 沖縄の若者たちも、ぜひ中国に行き、日本軍の加害の跡を見、平和を共に作る試みをしていただきたいと思います。
 日本軍の加害の上に、中国の方々の被害、沖縄、広島、長崎、全国絨毯爆撃の被害もあるからです。
 私たちは、戦後80年に、被害の頂点にあった沖縄、広島、長崎の国民を代表して、130年前からの日本軍部と政府の加害を、告発し続けなければならないと思います。彼らの加害の上に、私たちの被害もあるからです。
 日本のアジア大陸進出がいかに中国、満州、朝鮮半島の人々の心や体を打ち砕いたか。その反省と謝罪がなされないまま、今に至ったか。
 近隣国への侵略、殺害、噓と蔑視を知らず反省しないままだと、若者たちは、今本気で、日本の格差の広がりと、中国、韓国、ASEANの成長の中で、中国が攻めてくる、と歴史にあり得なかった噓を信じ、中国に敵対してしまいます。政府、防衛省、自衛隊は、43兆円もの予算を投じて再び戦争準備を始めていますが、それを正しいことと信じてしまいます。
 ぜひ、日本軍部の近隣国に対する加害、沖縄県民に対する加害、アメリカの広島、長崎への原爆投下、全国絨毯爆撃の加害を併せて深く認識し、被害の地域から、被爆の人々から、中国・韓国と連帯し、真の平和を主張していきましょう!

日清戦争130年

日露戦争120年

韓国併合115年

1931年柳条湖事件と満州事変、33年国連脱退

37年7月盧溝橋事件・日中戦争、同年12月南京大虐殺

731部隊の軍と学者による細菌実験

1941年12月真珠湾攻撃、1945年8月広島原爆爆撃

2、沖縄を平和のハブに! 近隣国との地域外交、NEAR北東アジア自治体連合

 沖縄の誇りは、1429~1879年の450年間にわたる琉球王国の伝統に息づいています。とても誇り高き民族だと思います。2023年の、訪日外国人の観光客数でみると、1位東京都、2位大阪府、3位京都府、4位北海道、5位沖縄県で、沖縄は堂々5位に入っています。
 また、沖縄県庁への大使の訪問などを見ても、沖縄の国際性は極めて高いと言えます。
 私たちは、2022年に、「沖縄を平和のハブに!」という組織を立ち上げ、鳩山元首相や東アジア共同体の方々と共に、またオール沖縄の皆さんと共に、前泊先生や髙良先生と共に、沖縄を基地の街から平和と繁栄のセンターにすべく活動を行っています。
 ぜひ、沖縄の首里城に東アジアの国連の支部を作り、ASEANの地域協力に学び、欧州のCSCE(全欧安保協力会議)・OSCE(全欧安保協力機構)のような、体制を超えた地域の共同のセンターを作ろうと、活動しています。


 今年、戦後80年で、国連で核廃絶の会議に参加しましたが、その時、広島と長崎の高校生や大学生が多数国連を訪れ、高校、大学で平和を守るイベントや平和教育を実行していることが示され、世界の国々の感動を呼びました。
 沖縄もぜひ、地位協定の改定に加えて、沖縄からの平和、非核都市宣言、平和都市宣言を主張するため、県のお金で、高校生、大学生が国連に行き、平和を訴えたらどうでしょうか。沖縄の平和は、東アジア、アメリカ、欧州など、世界の平和と共同とともにあると思います。ぜひ、沖縄の若者たちも、国連で性被害の問題を訴えた神谷めぐみさんたちに続き、積極的に国際交流にかかわっていただければ、広島、長崎に並び、沖縄の平和への知名度もますます高まることとなり、素晴らしいと思います。変わらない日本政府を恨む前に、世界に向けて発信し、外圧によって沖縄を世界平和のセンターにしていきましょう!
北東アジア自治体連合
 沖縄と東アジア、ASEANを結ぶとても重要な自治体交流の組織が、北東アジア自治体連合(NEAR ニア)への参加と活動です。
 今年、私はNEARに入る自治体を増やすべく、NEARの日本顧問に任命されました。
 沖縄は2023~24年に、玉城知事・照屋副知事(当時)、地域外交課や、山内末子さんなど県議会議員の尽力によって、北東アジア自治体連合にオブザーバー加盟しました。
 今年から来年にかけ、正式加盟の予定です。NEARは、現在9カ国(日中韓、モンゴル、ロシア、北朝鮮、ベトナム、キルギス、カザフスタン)、91自治体が参加しています。日本からは11自治体とオブザーバー3自治体を合わせて、14自治体が参加しています。
 ぜひ皆さんも、自治体連合の活動に参加し、若者育成、自治体の経済発展、海洋の安全、少子高齢化対策、自治体間交流と発展など自治体の最重要課題を議論し交流し、解決する自治体連合NEARの活動に参加してください。できれば近い将来、沖縄で9カ国91自治体のNEARの国際会議が、県と若者、経済界のコラボによって開けたら、沖縄の国際的価値がますます上がるのではないかと思います。
 沖縄を平和のハブに!は、沖縄の世界的活躍を心からお祈りし、お手伝いします。

沖縄を平和と経済のハブに!

北東アジア自治体連合(NEAR)で東アジアの平和を!

3、自治体問題解決、市民の力で! 「自分が、あなたが、何ができるか?」

 基地問題は大きな課題ですが、そのほかの重要課題で、目標として目指すべき点を3点挙げたいと思います。
 ①賃上げ、②若者によるエネルギッシュな街づくり、③大学進学率アップです。
何より賃金アップ!
 中国、台湾、東南アジアの企業などとの連携、観光の充実により、賃金をせめて日本最下位15県から脱しませんか? 今年の春闘の結果、昨年沖縄の最低賃金952円は一挙に1023円に上がりますが、まだ絵に描いた餅。賃上げは年を越すのではないかといわれますし、それを上回る速度で物価上昇が続いています。最低賃金15の県から脱するには、たった13円上げれば全国中位グループに入れます。沖縄の企業の皆さん、ぜひ奮発して13円上げてください!(笑) 賃上げで沖縄の商品を買ってもらえれば結局還元され、経済効果もアップすることになります。ぜひ労使一体となって、沖縄の賃金を全国中位に引き上げ、若者の流出を防ぎ経済効果をアップさせましょう!

全国最低賃金マップ2025年(沖縄は全国最低)

若者中堅の多い、エネルギッシュな、働き盛りの街づくりを!
 賃上げを生かし、基地の街から、経済発展の街へ。中国、台湾、東南アジアの企業とも連携して、積極的な企業誘致、IT・AI化、国際化の推進をしてはどうでしょうか。台湾、中国、東南アジアにも近い沖縄独自の自治体外交と企業連携を生かして、ぜひ沖縄を周りの地域、国々と共に連携して発展させてください! こちらも沖ハブができる限りお手伝いします!
沖縄尚学、甲子園優勝おめでとうございます!若者活躍の県へ!
 全国から見ても、東京日大三高という強豪校を破り、甲子園優勝した沖縄尚学の底力は驚嘆すべきと思います。沖縄のグラウンドと応援席の盛り上がりはあまりにも感動的だったので、写真も最大限載せさせていただきました!(笑) 沖縄尚学が沖縄に与えた高揚感、心理的影響、経済効果はとてつもなく大きいと報道されています。
 沖縄尚学の優勝のエネルギーに合わせて、伸ばすべきは大学進学率、企業誘致力です。
 2023年の最新データで沖縄の大学進学率は46・3%(実質40%)、東京の大学進学率は72・8%、東京との差は26%! 全国平均は60・8%です。他方、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の論文数は22年で日本1位、世界10位でした。トップ大学を誘致し、そこに沖縄の若者も入れる実力と県の教育支援を養成しましょう。大学進学率は賃金アップ、企業の底力アップ、世界の注目も集めます。
 まずはスポーツ進学、推薦入試も含めて、奨学金を付与する、特技を生かしAO(総合型選抜)入試に挑戦するなどの充実により、2人に1人、できれば5人に3人(全国平均)は大学に行くよう目指してはいかがでしょうか。
 大学進学率が、スポーツ進学を含めて5割を超え6割を目指すことで、優れた若者を育て呼び込み賃上げや地方育成にもつながります。国際性の高さや、経済振興を生かすことにもつながります。ぜひ中学・高校で、5人に3人(全国平均)が大学に行くよう、県もサポートし教育と経済振興の双方に力を入れたらどうでしょうか。沖ハブも支援します!

沖縄尚学

4、沖縄を
平和と発展のハブに

 美しい沖縄の地の利を生かし、基地やミサイルの街から、観光と、国際性と、エネルギッシュな経済と若者の街に発展させましょう!
 中国や、台湾、韓国、ASEANとも結んで、21世紀の平和と発展の沖縄の夢を実現するお手伝いをしたいと思います。
 海と空と、サンゴ礁の美しい沖縄を平和と発展のハブに!
 沖縄を地政学的な大国の政治、軍事の道具に使わせるのではなく、自治体から、戦争の被害を受けた地域から、若者から、広島・長崎に並ぶ、世界の平和と繁栄の街づくりへ!
 玉城知事や沖縄の皆さん、若者たちの力で、ここに参加されているすべての皆さんの力で、ぜひ沖縄を平和と経済エネルギー、IT・AIのハブとして、近隣諸地域、中国、台湾、東南アジアの自治体、若者たちとも結んで、沖縄を発展させましょう!
 沖縄を平和と発展のハブに!