敗戦80年 強制連行労働の死者を慰霊

 強制連行労働の死者を慰霊

三井三池炭鉱の熊本県荒尾市のお寺で

熊本県荒尾市のお寺

 80年前に終わった戦争中、朝鮮半島や中国から日本の炭鉱などに強制動員され、過酷な労働や事故で亡くなった人びとを悼む合同慰霊祭が4月12日、旧三井三池炭鉱があった熊本県荒尾市の正法寺で行われた。1972年から毎年開催され今年で54回目。
 慰霊祭では40人ほどの参加者で、読経の後、浅田敏彦荒尾市長、中国の福岡副総領事、在日本朝鮮人総聯合会の青年同盟委員長(熊本県委員長代理)、在日本大韓民国民団熊本県団長、華僑華人総会代表たちが焼香、来賓あいさつした。一様に54回目という長きにわたって慰霊祭が行われてきたことに対する感謝の気持ちが表明された。浅田市長は「不幸な歴史を繰り返さないよう、平和への取り組みに力を入れる」と、成岩副総領事は「追悼するのは憎しみを持ち続けるためではなく、歴史から教訓を学び、より良い未来を切り開くためだ」と語った。
 会場からは在日コリアン、朝鮮学校を支援する会など3人からの発言もあった。発言では、過去に日本が犯した過ちに正しく向き合うことの大事さを指摘し、戦争は絶対に避け平和を求めることなどが強く訴えられた。朝鮮人、韓国人の慰霊塔には『不二之塔』と書かれていて、いつか南北は統一してほしいという願いも込められているなどと紹介された。
 二つの慰霊塔は、今は亡き赤星善弘住職(荒尾市金剛寺)が中心になって、3年半にわたり熊本と福岡県内を托鉢しながら市民から浄財を集めてつくられた。一つは「中国人殉難者慰霊之碑」、もう一つは朝鮮人、韓国人殉難者を慰霊する「不二之塔」である。慰霊塔には強制連行と苛酷な労働を強いたことへの謝罪と反省、平和への誓いが書かれている。
 かつて赤星住職はあるジャーナリストの取材に答えて「私はね、真実を語り伝えてこそ歴史だと思うんですよ。日本が侵略を行ったのは事実ですから、それは素直に認め、詫びるべきは詫びて、許しを請うという姿勢が大事だと思うんです。仏教の思想からすれば、まず懺悔をすること。そしてお許しをえて、初めて湯真の友好親善が生まれる。懺悔の気持ちを形にするために、供養塔を建てようと思ったのです」と述べていた。かの空海や月輪大師も供養したであろうと思い、托鉢をしたという。
 現在の赤尾善生住職はかつて戦後70年の2015年に「私共の慰霊碑・供養塔には三池炭鉱の殉難者に限らず、全国の炭鉱や造船所等で犠牲になられた殉難者の方々の名簿が収められております。また幸いにも行政や企業の主体ではなく、建立に際し資金援助も求めておりません。宗教者としての信仰に基づくものであり、政治やその他の要因に左右されることなく一貫した姿勢で続けられるものと思います。今後も微力ながら日中、日韓、日朝の平和と友好のために精進してまいります」と述べていた。
 衰退するアメリカが台頭する中国を力ずくで抑え込もうと危険な動きに出ている。戦後80年、対米従属政治の日本政府はアメリカのお先棒を担いで沖縄、南西諸島、九州と軍事要塞化を進めている。
 日本と中国は絶対に戦争をしないという世論をつくるうえで、民間でのこうした慰霊祭はますますその意義を高めている。