報告集会で「日本の主権の問題」と訴える
「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会」の実行委員会の要請団が2月6日上京して、外務、防衛各省、そして内閣府に対して昨年12月に開催した県民大会の決議文と抗議声明を提出した。決議は①被害者への謝罪と丁寧な精神的なケア、完全な補償、②被害者のプライバシー保護と二次被害の防止徹底、③事件発生時の当該自治体への速やかな情報提供、④日米地位協定の抜本改定―を要求している。
この要請に対して、各府省とも「要請を受け止める」などと答えたものの、再発防止に係る実質的な対応策は示されないなど、従来通りの対応に終始した。伊良波純子共同代表は、継続した取り組みの必要性を強調した。
実行委は要請後、国会内で要請についての報告と米兵の性暴力への抗議と根絶を求める集会を開催、約100人が参加した。
伊良波純子共同代表(沖縄県女性団体連絡協議会会長)が経過を報告、司会して始まった。髙良沙哉共同代表(沖縄大教授)は「日本全体からみれば沖縄の人びとは少数者。しかし、その日本の防衛政策で約7割もの基地が負担を強いられている」と発言。併せて、米軍に特権的な立場を与えている地位協定の存在が「沖縄への差別感情を生み、米軍犯罪の背景だ」と指摘、地位協定の抜本改定を求めた。
次いで親川裕子共同代表(Be the Change Okinawa代表)からは、国連の女性差別撤廃委員へ在沖米軍人の性暴力について沖縄の市民団体らが報告し、同委員会からの日本政府への勧告につなげたことなどが報告された。神谷めぐみ共同代表(Action Okinawa Achieve Gender Equality共同代表)も被害者への謝罪や完全な補償を求める要請に対して各省庁が「県を通じて」との回答に終始したことを問題視、地位協定の抜本改定の必要性を強調した。
教育現場から伊佐久仁子沖縄県教職員組合女性部長が、続いて「性暴力を許さない女たちの歩み」と題して基地・軍隊を許さない行動する女たちの会代表の高里鈴代さんが報告した。
昨年の県民大会の際にも登壇、発言に立った崎浜空音さん(慶応大生)は自身が2016年に起きた米軍属による女性暴行殺人事件に抗議する県民大会に参加したことを紹介、「何度、事件、被害者が出れば終わるのか」と語気を強め、「沖縄の問題ではなく、日本の主権の問題としてとらえるべきだ」と訴えた。
大会決議を実現させる東京行動を終えて
市民レベルでも行動を起こしていく
中塚静樹(沖縄大学3年)
2023年12月、沖縄県内で米空軍兵による少女誘拐・性的暴行事件が起きた。この事件を受け、昨年12月22日、「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会」が開かれ、「もう二度と繰り返してはならない」、私はそう強く訴えた。
しかし、大会から約2週間後、また新たな性暴力事件が発覚した。私は、強い落胆と激しい怒りを覚えた。私たちがこれ以上被害者を生まないと再発防止を訴えるさなか、その裏でまた卑劣な事件が起こっていたのだ。そのほかにも、事件化していないだけで、米兵による性暴力事件は度々起こっている。公になる性暴力事件は氷山の一角に過ぎないのだ。沖縄から何度声を上げても変わらない現状に、無力感さえも覚えた。
外務省に驚愕
そんなさまざまな気持ちが交錯するなか、私は東京へ要請に向かった。大会で決議された4項目が解決されるよう、内閣総理大臣と各担当大臣、各野党、アメリカ大使(郵送)へ要請した。
私は外務省へ要請した、何よりも今回の事件で問題となった、外務省が被害者のプライバシー保護を理由に県に事件を報告しなかったことについてその責任を強く問うた。
なぜ、速やかに県に報告しなかったのか。なぜ、沖縄県議会議員選挙、慰霊の日の後に事件が発覚したのか。私は不信感しかなかった。私たち県民は半年間もの間、危険に晒されていたのだ。事件を伏せるということは、事件をなかったことにすることと同じである。プライバシーの保護と謳って、事件を報告しなかった外務省の責任は重大である。
外務省の対応は驚愕だった。「被害者に謝罪をしたのか」と問うと、「プライバシー保護の観点から答えられない」、「日米地位協定のどこが問題であるか」と尋ねると、それも「答えられない」と返ってきた。責任の重大さの認識も、反省もいささかも感じられなかった。
寒い東京
この日、東京は身が引き締まるほど寒かった。しかし、それ以上に冷たかったのが外務省の対応だった。何というか、霧がかかったような冷たい空気がその空間には流れていた。沖縄からの熱い想いは寒波の渦に巻き込まれてしまったのか。そうでないと信じたい。
明くる日、社民党、日本維新の会、日本共産党に要請を行った。沖縄の現状を伝えるとともに党派を超えて議論を広げてほしいと伝えた。今回の事件は、司法により加害者の罪は認められたものの、沖縄の女性や子どもらが性暴力の危険に晒されているという構図は変わらない。この構図を変えるためにも、日米地位協定の抜本的な見直しが重要であると訴えた。
地位協定改定で手応えも
各政党の反応は、外務省とは対照的だった。基地という言葉を出すと、それぞれの考えや立場もあることからセンシティブになるが、日米地位協定に関しては、国家主権や航空特別法、身柄引き渡しなど、共感し合える問題が多々あった。少なくとも私が回った政党は同じ方向性を向いていた。改定に向けて保革を超えて考えていけるし、世論を動かせる。少し希望が持てた政党回りだった。
また、今回は要請行動に加え、議員集会、市民集会も開いた。集会では、日米地位協定の改定をはじめ、性暴力は人権問題であるということを強く訴えた。この間私たちは、一貫して人権問題であることを申し立ててきた。
性暴力というのは、私たちの身近に存在するものである。半無意識のうちに自分が加害者になっているかもしれないし、被害者になっているかもしれない。身近に存在するものだからこそ、米兵だけの問題として捉えるのではなく、自分を含め身近なところから根絶していきたい。一人一人が、今一度、自分自身を見つめ直してほしい。私はその姿勢を見せていきたい。
私は東京での要請行動を終え、日米地位協定の改定を目指し、国に要請するだけでなく市民レベルでも行動を起こしていきたいと思った。そこで今、住民投票を考えている。沖縄だけでなく、全国的に行い、大きな世論をつくっていきたい。