「日本を変える!どう変える?」
全国で大討論を呼びかける
編集長 山本 正治
第26回総会で、「日本を変える!政治を変える!」大討論と題してシンポジウムを行った。山崎拓元自民党副総裁の来賓あいさつに続いて鳩山由紀夫元総理の基調的な問題提起に始まった大討論は、刺激的で、日本を変え政治を変える「大討論」と言うのにふさわしいものだったと自賛したい。
「55年体制が終わった」と総選挙結果が評価されたように、80年前の敗戦で米軍占領下から始まった対米従属で経済成長一辺倒の自民党的政治の時代は終わった。明治以来のアジア侵略の敗戦80年である。新しい日本へ、その政治が求められている。
今年はそれをめざした「大討論」を全国で進めたい。総会方針でも、「『日中戦争回避』を中心課題に政治を変えるための取り組みを強める。意見交換の機会、懇談会や集会、シンポジウムなどを頻繁に開き、連携の発展をめざす」と確認している。無数の「小討論」で良い。「日本を変える!政治を変える!」討論を呼びかける。
以下は、総会の「大討論」にあたって私が述べた問題意識である。
思い出す石破茂さんとのやりとり―「侵略戦争を再び繰り返さない」
今回のような大討論の元々の計画での主報告者は、衆議院議員石破茂さんの予定だった。
この企画は23年11月の第2回全国世話人会議で決めた。「戦争の危険と持続可能性が問われる対米従属政治に代わる対抗軸を明確にすることが広範な国民連合の重要な役割」との位置づけで、「新しい国家像――持続可能で自主の日本」をめざす討論を全国各地でやろう、その集大成として東京で総会を迎えるとの企画だった。その時相談したら石破さんが報告者を引き受けてくれた。
私は石破茂さんとここ数年いろいろとやりとりをして、『日本の進路』誌にも何度も登場してもらった。報告を引き受けてくれた時にはこんなやりとりだった。石破さんは、『日本の進路』21年4月号で、「サステナブルでインディペンデントな日本へ」と題して発言されている。私は、報告内容はその「持続可能で自立の日本へ」で良いが外交政策があまり聞かれませんが、と質問した。
それに石破さんはこう応えられた。「あの中曽根(康弘)さんでも、『日米戦争はいろいろ評価があって良いが、日本の中国はじめアジアでの戦争はどこから見ても侵略戦争だった』と言われました。この認識をキチンとして再び繰り返さないことです」と。
私はそれを聞いて、「それで結構です」と即答申し上げた。21年4月号で石破さんは、戦前日本の植民地政策を批判し、戦後では日中国交正常化に動かれた石橋湛山元総理の話もされている。
対米自立で覚悟をもった人びとに支えられた政権をめざす
また、こんなやりとりもあった。私が、「世論調査で再び期待するトップになりました。首相で頑張ってくださいよ」と言ったら、こう言われた。「いや、なれても何もできない。そもそもなれない。アメリカの言うとおりにしないとダメだから」と。そう言って、防衛大臣の時の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事件の話をされた。勝手なことをするなと米軍に言うと、「何を言っているんだ。日本は、いつでもどこでも好きなだけ米軍を置く約束になっているではないか」と取り合ってくれないと。総裁選中にもこの件を語っていた。
私はその時、鳩山先生の話を紹介した。鳩山さんが総理を降りて、細川護熙さんと話した時のこと。「『(細川さんが)自分は総理として米国に対抗する力を十分持っていなかった。もう一度政権交代するときには、米国からいかに自立した日本を創れるか、そのための覚悟を持った人材が何人いるかだ』と述べておられました。細川さんが私と全く同じ認識であったことに驚いた記憶があります」(『日本の進路』21年1月号)。
それに対して石破さんは、「まったくその通りだ」と言われた。
しかし今回その準備もなく、「危機の日本を救う」ではなく、「危機の自民党を救う」ために総理にされてしまったのではと危惧する。「覚悟を持った人材」はほぼ皆無である。
それでも国会にはいま評判の石橋湛山研究会という議員研究集団がある。外務大臣に就任された岩屋毅さんが共同代表で、石破さんも総務大臣の村上誠一郎さんも熱心な会員だそうである。早く影響力をもってほしい。
力無しには
政治は変えられない
実は私はその時石破さんにさらに畳み込み、亀井静香さんとのやりとりを紹介した。亀井さんは、「力がないと政治は変えられない、血を流す決意がいる」と言っている、亀井さんの部屋にはキューバ革命のチェ・ゲバラの写真と江戸時代に「乱」を起こした大塩平八郎の絵が飾られていますよ、と。
要するに重要なのは国民世論であり、そのための国民運動であると言いたかった。「広範な国民連合はそうした力になりたいと考えています」と申し上げた。
そんなやりとりがあった。
私たちは、本当に急いで力をつけなくてはならない。国民の中に、都市でも農村でも、広範な国民各層の中に、国会の中にも、米国から自立し中国をはじめアジアに生きる日本をめざす機運を、世論と国民運動をみなぎらせたい。
「新しい国のカタチ」を「どう実現するか」
私は、「めざす国のカタチ」は石破さんの「持続可能で、侵略戦争の過ちを繰り返さない自立の日本」の提起で良いと今でも思っている。しかし、自民党を基盤とした政権ではその実現は不可能である。今の石破政権を見ていればよく分かる。石破さんは12月1日、地元の神社で「地方創生や、日本の独立と平和の維持を任期中に実現できるよう努めていく」(NHKテレビ)と述べた。だが、東京に帰って臨時国会ではその片鱗も見えない。
さてどうするか。
ここからが私の反省で、今日の議論の中心テーマである。
実は、鳩山先生に全国総会に来ていただいたのは今回で2回目。前回は19年11月、第24回の福岡での総会だった。「脱『大日本主義』を掲げてアメリカ依存から脱却し自立の新しい国のモデルを」との素晴らしい提起をしてくださった。
しかし、せっかく「めざす国のカタチ」の問題提起を受けながら、反省は、それを「どう実現するか」の議論と一致、ましてや具体化の方向を提起できず、議論もほぼなかったことである。
もちろん私たちの組織としての力量不足でもある。だがむしろ「政治を変える」をどう具体的に進めるのか、問題意識が鮮明でなかったと反省している。
しかしそれから5年、国民は総選挙でも明確に「自民党政治はダメ」と突きつけた。
そして自民党は延命に石破さんを担ぎ出した。
他方、野党側は満足に対抗できない。
閉塞状況の国民は自分たちの思いを託す先もない。危機の淵にある国民は、もう待てない。
「広範な国民の連合」と言いながら、この数年いったい何をしていたのかと自問もしながら、今回の討論で打開のなにがしかの糸口が見つけられればと願ってこうした機会を企画した。
この先は、今回の先生方、さらに全国の皆さま方のお知恵に頼れば大丈夫と確信している。「小異を残して大同につく」精神で、最も広範な勢力の連合を促す方策のために知恵を出し合えればと願っている。