鳩山由紀夫元内閣総理大臣のあいさつ
私は一昨日の沖縄県議選最終日、南城市選挙区で見事トップ当選を果たした瑞慶覧長風さんなどの応援をしてまいりました。その彼が最後の演説で、「いま(沖縄は)一触即発の状況である」と訴えました。沖縄の皆さん方はそういう思いになっているのだと、痛切に感じた次第です。
先ほど司会の方からお話がありましたように、岸田政権になって米国への従属化がどんどん進む日本になってしまっていることは残念ながら間違いない。このような国になってしまっているのを、皆さん方のお力によってつくり直さないといけない。そのための今日の集会だと思っています。
米国への従属・隷属化がますます進んでいく中で、とにかくトマホークなどを何百発も買ったり、防衛費はGDPの2%、もっとそれを超えるまでになるんじゃないかと危惧されます。
そういう中でその最先端にある沖縄がまさに、一触即発という懸念を抱いているのも不思議ではないと思います。「敵基地」にまで届くような兵器まで持とうとしているわけですから。
「独立国」に踏み込んだ
台湾の頼「新総統」
それでも私は、そこまではまだないだろうと最近まで思っておりました。
しかし、頼清徳さんが「総統」になって台湾は一体どうなるのか。日本の報道は「現状維持」ということだった。もっと過激なことを言うかと思ったら割と穏当な発言で終わったと、そんなふうに多くのメディアは報じました。
でも中国の受け止め方はまったく違っていた。メディアが報じる「現状維持」というのは、現状そのものが、もうそもそも既に分裂的な状況である。それを是とする方向なんだと。
さらに頼清徳さんはもっと過激な意味で「現状」について言っている。すなわち彼が言う「現状」は、「もう既に台湾は独立しているんだ。すでに独立国なのだから独立するなどということを改めて言う必要もない」ということであったと明らかになりました。
彼は中華民国という言葉を12回使いました。台湾は、ある意味でもう国であるという意味です。彼は、中華人民共和国あるいは中国という言い方もして、それに対して自分たちは中華民国であると、すなわち中国に対して自分たちは明らかに別の独立国なんだということを就任式で演説しているわけです。
だからこそ中国は大変に驚いた。ここまで過激な発言をするとは思わなかったというのが中国側の現実のようでございます。
あくまでも台湾は中国の不可分の一部
私たちはそういう状況だからこそ、どうすればよいのか。これは言うまでもありません。1972年の日中共同声明のスタンスにしっかりと戻らなければならない。
そしてそのことを十分に日本が学び取らなければいけない。多くの国会議員も、また国民の多くも、必ずしも72年の共同声明を十分に理解していないのではないかと思います。
そこでは、「台湾は中華人民共和国の不可分の領土の一部である」という中国政府の立場に対して、私たち日本は「十分理解し尊重する」と約束した。台湾は中国の一部であって、「台湾問題」というのは明らかに中国の内政問題です。
中国の内政問題に対して、例えば米国が台湾独立を画策する、そうした方向に導こうとしたときに、日本がそれに呼応するなどというのは、とんでもない発想だと言わなければならない。ここが一番大事なことで、私たちは「一つの中国」の原則、その原点に戻ることが重要であるということをきちんと認識し、多くの国民にそのことを知らしめなければいけない。
武力を使っても阻止する行動に出る可能性も
万が一、台湾がもし本気で独立をしようとする、米国などにそそのかされてそうした方向になったときには、中国は武力を使ってでも阻止する行動に出ないとも限らない。
もしも、そういう状況になったときに、日本としてどう振る舞うべきなのか。米軍基地が沖縄などにたくさんある。それを「どうぞお使いください」ということに今の政府の考えではなりかねないでしょう。
しかし、これは間違いなく日本を含む、中国を敵とする戦争が勃発するということです。そのような状況は何としても避けなければならない。
逆に、日本としてしなければならないのは、中国と米国との間で戦いが始まることをさせない道筋をつくっていかなければいけない。
もし戦えば米国よりも、日本のダメージは取り返しがつかないことになります。原発施設などが攻撃されれば、日本国土に国民が住めなくなることだってありうるわけです。
そういう可能性を呉江浩中国大使が頼氏の就任式の日に申されました。それがあまりにも過激なんだという批判が起こったわけでありますが、冷静に考えれば呉大使が言っていることは当たり前で、なんの誇張でもない。だからこそ私たちはそれを何としても防がなければならないと思うのであります。
そのためには、中国をはじめ周辺諸国との緊張を緩和し、友好関係を築いていく。私が常日頃申し上げているような東アジア共同体の構築です。日本と中国と韓国などが中心となり、またASEANの国々も含めて東アジアの国々が全ての問題を対話によって解決をする仕組みをつくる。それによって、彼らとの間の信頼関係を高めていくこと、これが今一番大事な平和への道筋だと私は信じております。
そういう道筋を皆さま方全員と一緒につくらせていただくことができますよう心から念じて、私からの皆さま方への訴えとさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。