食料自給推進議員連盟 私の大胆な提案

耕作放棄地 「公」が買い取り公務員が耕作

兵庫県宍粟市議会議員・いまい農場 今井 和夫

 この違いは何だろう。
 中国で2023年12月「食料安全保障法」が制定された。「食料安保の責任は党と政府にある」と明記され、1億2千万haの農地面積の確保を明記した。
 片や日本は。今国会で審議中の「食料・農業・農村基本法」。実質、「食料安全保障は食料の外国からの輸入で確保する」。


 日本の今の耕地面積は432万ha。つまり、中国はこの27倍の面積の耕地を確保すると宣言している。人口は日本の11倍。つまり、人口比にして日本の2.4倍の面積の農地を確保すると言っている。
 同時に審議している「食料供給困難事態対策法」には、「食料に困ったときは強制的に芋を植えさせる。違反者は罰金。加工・流通業者も取り締まる。配給制も実施」……、非常時に強制すると言っても農家や農地がその時、どれだけ残っているというのだろう。こんなことを平気で言う政府。それはもはや政府ではない。

「自分が耕作しなくなればこの農地も荒れるだろう」

 ほとんどの中山間地の農家の方々は思っている。あきらめている。これが一般的という日本の異常さ。そんな国は日本だけだ。それが当たり前になってしまっている、その異常さに気づこう。
 農地が荒れるのは自然現象ではない。これは政治の結果なのだ。若者が出て行くのは自然現象ではない。暮らしていけないからだ。農業で暮らしていけるなら少なくともその人数だけの若者は残る。
 農地を捨てた国が、食料を外国に委ねてしまった国が、国として成り立つのだろうか。そんな状態で平気なのは日本人くらいではないか。その異常さに気づこう。
 残念ながらすでに日本の農地は宅地化・都市化で最盛期(1961年608万ha)の4分の3以下に減っている。条件の良い農地の多くはすでに農地ではなくなっている。だから、中山間地域の条件の悪い農地でも、今となれば、一枚も荒らしてよい農地などない。それが日本の真実であり、そう考えるのが国民の命と暮らしを本気で守ろうとする本当の政治のはずだ。弱者・国民全体を守る気がもう今の政府・政権にはない。

危険な食料輸入を
強要する「同盟国」

 「食料安全保障は食料の外国からの輸入で確保する。今の食糧輸入国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジル……。同盟国・友好国だ。食料自給率もここを含めて考えればよい」などと言われる。
 しかし、どこも水不足や、化学肥料・農薬多投による土の衰弱等、持続可能性が危ぶまれている。
 また、同盟国と言うのならば、どうして自国では売らない成長ホルモン入り牛肉を日本に輸出する? あるいは、日本の農薬基準を緩めろとどうして圧力をかける? 同盟国ならば相手国民の健康を考えるのではないのか? ガンが増えているのは日本人だけだと聞く。同盟国でも何でもない、単なる利益を搾り取る対象国だ。

「全国消滅自治体」── 発想が間違っている

 このたびの「食料・農業・農村基本法」の審議の中で、農家の戸別所得補償について自民党と公明党は明確に否定した。「適正な需要と供給のバランス・価格が崩される」「農産物価格が低迷する」というのが理由だ。
 中山間地域のコメ代の適正価格は農家手取り最低でも30‌kg1万5000円程度だ。流通費用も入れれば、10‌kg6000円~7000円になる。これを適正価格として国民に負担しろと言うのだろうか。
 先日、全国の消滅可能性自治体が発表された。わが兵庫県宍粟市ももちろん入っている。女性の残る可能性とかで判別するらしい。
 根本的な発想が間違っているのではないか。
 「農業、農村、農地を維持しなければならない」という発想があれば、地域は消滅しない。人口は減るが、農地を維持するに必要な人口、食料生産に必要な人びとはどんな方法を使ってでも住んでもらわなければ、と考えるならば消滅する自治体は一つも出てこない。つまり、食料維持・農村維持という発想がないから、このような判断が出てくるのではないか。こんな情報でまた地方自治体は振り回され、競争させられ、でもダメだ~と希望をなくす。
 消滅していいのか?! 誰が食料を作る? 農地を捨てていいのか? あなたは何を食べる?
 だから、これは当該自治体の問題ではない。都市の方々の問題だ。

公務員として雇って
耕作放棄地を耕作する
しかないかも

 このたび、わが宍粟市では、私の提案を受けていただき、耕作放棄地をつくらないためにとりあえず市でできることを考えるプロジェクトチームをつくることになった。
 私はそこで、耕作放棄された農地は公が安く買い取り公務員が耕作していくことを検討してもらいたいと、未熟だが提案書を出させてもらった。もはや、今の日本では、農家への直接支払いとか、直接所得補償程度で農業を仕事にする若者はそんなにいないのではないか。公務員として確実に雇うくらいでないと若者は農業をしないのではないか、農地は守れないのではないか。そんなことを最近私は考えている。
 あるいは、当面出てくる耕作放棄地は山ぎわの小さな条件の悪い農地が主だ。そんな農地を公社のようなところに営利も含めて担ってくれと言うのは難しいのではないかと。
 「公務員が農地を管理する」―これは、農業を捨てようとしている日本政府、そして、その重大さに気づかない日本国民に対しての大いなるメッセージだ。本気で対策を打とうとしない、国民を見捨てようとしている政府やそれに気づかない国民に対して、「本当に農地を守るのはこのような方法しかない」というメッセージ・警告だ。
 もちろん、これは市単独では続かない方法だ。国がカネを出さないと続かないし全国的にも広がらない。だから、10年頑張って、国民に気づいてもらい、これをたたき台にさらに良い制度を国としてつくってもらいたい。そう国を動かすためのものだ。いい加減に目を覚ませよと。
 いずれにしても、国による大幅な農業予算の増額、農業者への直接支払いがなければなり立たない。その意味で、「食料自給の確立を求める自治体議員連盟」運動も進めていきたい。

とにかく連帯しよう

 とにかく、どこも同じ問題で行き詰まっている。だから、とにかく、連帯して、共に声を上げ立ち上がって、国を動かすことを考えていくしかない。
 党派を超え、都市と地方を超え、世代を超えて、共に立ち上がろう。食と農は全てにつながっている。真の独立を実現し、一人ひとりが地球のリズムに拠り立ち、主権を尊重し合えるような社会をつくろう。