農業基本法改正案――衆院を通過、参院へ

食料自給確立へ今こそ国民運動を

 食料・農業・農村基本法の改正案は4月19日衆議院本会議で、若干の修正を加えただけで賛成多数で可決され参議院に送られた。
 自民と維新が提出した修正案は、「生産性の向上」に関して「多収性に資する新品種」を明記しその導入を促進するという「生産性」を一段と強調し、種子メーカーを利する内容である。

 坂本農相は、食料自給率の低下は米国を中心とする海外からの輸入農産物の増大に起因するとの指摘に対して、「自給率の変動は消費者の行動と生産の動向が要因」と、消費者の嗜好や農家の生産動向が食料自給の低下を招いたなどとする暴論を吐いた。断じて許されない。
 参議院での審議が始まる。食料自給の確立に向け国民の世論と運動を盛り上げるため一段の努力が求められる。
 「食料自給の確立を求める自治体議員連盟」は3月21日に参議院議員会館で農業基本法改正についての集会を行い政府に申し入れした(4月号既報)。そこでの自治体議員の発言を紹介する。

所得補償が絶対必要

小沢和悦・大崎市議会議員

 1990年に1万3900人いた大崎市の農業者が2020年には3813人へと30年間で7割以上減りました。さらに、5年後も農業を続けるか確認したところ8割がやめると言っています。ですからいま方向転換しなければ手遅れになります。私たち大崎市の総合計画の第一番目の柱は、「誇りある農業の振興」ですが、誇りある農業が、今まさに存亡の危機にある。これが実態です。
 いま基本法の改正案に求められているのは、「自給率向上のために頑張ってほしいという農家へのメッセージ」であり、「生活の心配のないように欧米並みの所得補償政策をしっかりやる」という方向転換を明確にすることです。
 合併前は133人の議員が現在は28人。この中で政党を名乗っているのは自民党、公明党、共産党で、あとは無所属ですが、超党派の「農山村振興議員連盟」をつくって地域で活動しております。昨年の暮れには自民党の農業基本政策検討委員会の小野寺五典委員長を招きまして、「つぶれそうになっている農家、農山村をつぶしてはならない。国民の食料は日本でまかなえるよう、いま手を打たないと手遅れになるので超党派の国会議員連盟をつくって頑張ってほしい」と要請しました。ご本人からは、分かりましたという回答をいただきました。
 今国会はそれを具体化していただきたいというのが私たちの強い要望であります。自給率の目標をいつまでに、いかに向上させるか、そのために農家に対してどういう手当てをするか。これを明確にしていただきたいというのが、私たちが上京した目的でございます。

小規模も頑張れる政策を

荒井武志・長野県議会議員

 長野県は中山間地が非常に多いところです。要望書の4の「国民の食料を安定的に提供するためには、多様な農業形態が必要。家族経営が主体の農業者も」というところに関連して発言させていただきます。国は、大規模農家を支援するような、あるいは企業を支援するような枠組みがだいぶ強くなっています。私どもの地域では5反歩前後で頑張っておられる農家の方が多いわけです。そういう家族経営の農家も自給率向上の一縷になるような取り組みをぜひお願いしたい。
 あわせて地域の伝統野菜等を残すためにも種子の県条例にも関わっております。国も種の自給についても見直していただきたい。

家族経営農業が中心

三谷哲央・三重県議会議員

 三重県議会では「食料自給総合対策調査特別委員会」がございます。おそらく3月29日の議会最終日ころ、政策をまとめて執行部に提出する。三重県の農業の約8割は家族経営です。しかし、残りの2割のトマトやイチゴなど企業経営の農業に光が当たっています。肝心要の8割の家族経営の農業に光が当たっていない、行政の目が向いていない、これが現状だと思います。
 しかし、現実の食料自給を支えているのは家族農業です。少子高齢化の中で農業従事者がどんどん減っています。ここにしっかりとテコ入れしないと、日本の農業はダメになってしまいます。とくに三重県の農業の先行きは心配です。しかし、自治体がやれることには限界があります。やはり国がしっかりと支えていただく方策をぜひお願いしたい。

種を守ってこそ自給

原竹岩海・福岡県議会議員

 鈴木先生のお話を聞いて、参加してよかった、現場のわれわれ地方議員が頑張らなければと感じています。地元ではJAにも関わっています。一つは種子法廃止についてです。種子法は大特急で廃止されました。2018年4月のことです。しかし、国民・消費者の多くが種子法の廃止を現在でも知らない。勉強会などでこのことを知った消費者は、日本の食の安全と安心は大丈夫なのかとびっくりされます。
 福岡県農業総合試験場がイチゴの「あまおう」、水稲の「夢つくし」など種子や品種を育成しました。ところが農業競争力強化支援法の改正で、公的機関が育成した福岡の種や品種が、民間の研究者たちに無料で提供しなさいと言われ、大問題になっています。試験場は法律を守れば大事な情報を提供しなければならない。こんな理不尽なことはありません。

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