東アジアの戦争と平和日本の進路

 世界戦争の一環としての東アジアの戦争

日中不再戦を、市民・自治体から!

世界国際関係学会アジア太平洋会長、京都大学客員教授 羽場 久美子

九州自治体議員の会準備会合で記念講演(4月13日、福岡市)

1.東アジアの戦争

 2024年3月25日の「朝日新聞」。「変わる戦場、まるで『ゲーム』」と題して、AIとドローンを駆使した戦争が、ウクライナでロシアに対して、イスラエルでガザに対して、先進国の最新兵器で戦われていることが、イスラエル・テルアビブでの会合に出席するアメリカのデータ解析企業「パランティア・テクノロジーズ」の幹部ハリス氏へのインタビューを通して語られている。彼らは「イスラエル軍に戦争を支援するための技術を提供する」ことで合意した、と。どちらの戦争もアメリカのAI兵器で戦われている!

日露戦争で、日本のロシア攻撃をあおる英米(G・ビゴー)


 気になったのは次の言葉だ。「東アジアなどで想定される未来の戦争は、従来と全く違うものになる」。東アジアでは、ウクライナやガザで行われている戦闘以上の大規模な戦争と悲劇が起こり得るということである。なぜなら、ウクライナやイスラエルとガザのように、欧州に近くなく、貴重な石油資源があるわけでもないからだ。むしろ東アジアは、米欧を経済成長によってしのごうとする、目の上のたんこぶ、少し弱体化してくれた方がいい地域でもあるからだ。
 中国と日本が戦争をしたら、双方がつぶされ「漁夫の利」を得るのは米欧。彼らは東アジアが相互に戦って自滅するのを待っている。

2.西欧と日本の
歴史的な植民地主義

 西欧の植民地主義は明治以降の日本に大きな影響を与えた。
 日本は欧米の植民地主義をまねてアジア大陸に進出する拡大主義をとっていった。米欧も、日本を中国や朝鮮などと対立させることによって、西欧が漁夫の利を得る、と考えた。
 明治期に遅れて成長した日本が「富国強兵」を目指して大陸に進出し帝国主義化していった歴史について、現在の視点に立って批判することはできまい。黒船がやってきて、大砲と銃で脅かされた時、当時の支配的勢力の現実の選択肢としては、つぶれて植民地となるか、自らも武装して植民地を獲得していくかしかないと考えられた。その二者択一の中では、植民地になったほかの国も含め、植民地になることを自ら選択してなった国はなかった。いや応なく敗北させられたわけだ。
 日本が幸運だったのは、戦国時代でなかったこと、国家統一がなされていたこと、ゆえに米欧列強に付け入るスキを与えなかったこと(それでも米欧は幕府勢力にも倒幕勢力にも双方に銃を与えて敵対をあおった)、鎖国していたが蘭学などの医学・兵法を学び、読み書きそろばんなど庶民の教育水準の高さなどがあった。清国、ロシアが疲弊して内部瓦解していたことも大きい。こうして最終的には、《極めて幸運にも》日清・日露戦争に勝ち抜いたことで、欧米列強の最後の一翼に加わった。

列強の清国分割「中国のケーキ」(アンリ・マイヤー)

 しかし日清・日露戦争も、米英欧に促され、戦って分け前を得たのであって、自力ではなかった。朝鮮半島を植民地化し、中国東北部満州の権益を獲得して大陸全面侵略の橋頭堡を築いた。
 その結果、力を過信し、第2次大戦では日独伊という三国同盟につき領土獲得要求を掲げ、米英に宣戦布告した。アメリカも中国も敵とする、という無謀な戦略となった。大国から挟み撃ちされる位置を自ら選択してしまった。
 アメリカは20世紀の二つの世界大戦ではほとんど戦争していない。孤立主義をとり、少なくとも自国本土で戦争はしていない。戦争を自国ではせずに、戦後秩序を自分が仕切った。日本はその点、歴史的にその真逆なことをしてきたがゆえに、侵略した国々の国民だけでなく、自国民にも多大な犠牲を強いた。

3.全方位外交を指針に

 戦争をしないための最大の方策は、近隣国と、また可能なら近隣国ではない国とも、全方位外交をすることだ。日本の第2次世界大戦での軍事戦略上の最大の過ちは、中国もアメリカも敵としたことだ。相手側は、挟み撃ち作戦が可能になった。米欧中国ロシアをすべて敵に回し、ドイツもイタリアもはるか遠くにいた。自国以外、誰も共同してくれる国がいない中、戦争に突入していったことである。
 これは現在の教訓にもつながる。目と鼻の先にあるアジア大陸の近隣国はまさに歴史的にも「一衣帯水」として大切にし、アメリカとも1万キロの太平洋を隔てたお隣さんとして「全方位外交」を実現していくことが最も平和的・安定的な国家戦略である。その戦略からすると、目と鼻の先の中国・ロシア・北朝鮮に向けてミサイルを配備し敵に回し、1万キロ離れたアメリカだけを同盟とし、その先兵となるなど、危険極まりないことである。
 誰を利するか。アメリカだけの利益のためだ。そのために自国を軍事化し、基地を拡大し、ミサイルを配備している。今も日露戦争の時の風刺画通りだ。得をするのは日本ではない、戦わずして「東アジアの分断と自滅」を望んでいる米欧の利益にしかならない。
 沖縄市民の立場から見ると、「二度と戦争をしない、沖縄を平和のハブに!」を実現するためには、沖縄国際大学名誉教授の石原昌家さんも言うように「白旗を掲げる」「戦わない勇気を持つ」ことが、最も沖縄市民を守り、平和、利益、安定をもたらす方策であろう。
 基本的に、欧米の帝国主義国は、有色人種を劣等民族と見下していた傾向がある。古来、中国、インド、ラテンアメリカの高度な文明も含め、すべて破壊され植民地化されていった。優れた文化の宝物はグロチウスの「捕獲法」によって、より文明的な国は劣る国から宝物を持ち帰って保管する責任があるとして持ち帰った。それが現在の大英博物館、ルーブル美術館などに陳列されている。
 軍縮会議において清国・ロシア帝国に勝利した日本に対してもすでに警戒していた(黄禍論)とみなされる記述が多くある。日露戦争の風刺画でも、類人猿のように描かれた日本を後ろから押してあおってロシアを倒させる。そして分け前は自分たちで取るという米英の行動は、自らは戦わずして敵同士を戦わせる「漁夫の利」を狙っていた側面がある。それを覆した日本の「大東亜共栄」を掲げた米英の植民地への攻撃は、技術的には無謀であったが、理念的に白人支配を超えようとしたナショナリズムがあったことは認められる。
 だがそれを沖縄が言う「万国津梁」(「万国の津梁=架け橋となって貿易を行い、国に宝物が満ちている」)となることによって実現しようとはせず、周りの国々を植民地化して軍事的に達成しようとした。それは日本自体の遅れた植民地主義、また自由や民主主義の理念が国民に根付かないままに始めた軍国主義戦争を導いてしまった。

4.米中対立の背景
  ―米覇権の衰退

 米中の衝突、第3次世界大戦はあり得るか? 新たな戦前にしないために何をなすべきか?
 今、緊張を高めているのは中国ではなく、アメリカである。ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ガザ戦争、台湾有事・沖縄の戦闘準備、すべての背景にアメリカがいる。なぜか、アメリカの覇権の衰退である。それ故に米中関係が緊張化している。
 中国もアメリカへの警戒から習近平体制が硬化しているのも事実である。ただアメリカの軍事的威圧に対し14億の民をまとめ発展させるには態勢固めは不可欠ともいえる。さらにアメリカや欧州の経済制裁(半導体部品や技術の差し止め)も白人至上主義、自国ファーストのナショナリズムの復活だ。トランプ再選によってアジアへの攻撃が弱まるとは思えない。
 重要なことは、「全方位外交」、とりわけ近隣国への信頼と、共に経済発展を行うという理念だ。アメリカを敵とする必要はないが、米英と結んで近隣国中国を敵に回すのは愚かだ。われわれは駒になるだけ、かつ最大の犠牲を払わねばならない先兵だからだ。今まさに、米英は日中を分断させようとしている。その手法は、ロシア・ウクライナの分断、イスラエル入植によるアラブ世界の分断と同様だ。
 近隣国への不信や国内の対立に依拠して、東アジアで紛争の火種を起こさせようとしているのは、米英であることを知るべきだ。その目的は中国を封じ込め、米欧の覇権をあと100年も続かせるためだ。
 もし東アジアで大戦が勃発したら、米英は東アジアでも劣化ウラン弾やクラスター爆弾のように国際法に違反した兵器や核兵器を使う可能性がある。第3次世界大戦という戦争の世界への広がりを避けるためにも、アジアで決して戦争をさせてはならない。最初に示したように、東アジアの戦争は、中東以上の残酷な戦争になる危険性がある。東アジアで日中、台湾が戦争してくれれば、米欧は得るものこそ多大にあれ、失うものはないからだ。日本は捨て石になる。
 アメリカにとって、沖縄と南西諸島に基地を集中させるのは、歴史的にも、中国をにらみ、またベトナム戦争や東南アジアの戦争に行くときの燃料補給路、あるいはそこから飛び立って戦闘する基地として、地政学的に有利だからだ。台湾、さらに沖縄は、中国の目と鼻の先、とくに中国の発展地域の目と鼻の先であり、攻撃の戦争をするのに圧倒的に有利な地勢であるからだ。いわば本丸の前に陣取った捨て身の攻撃基地だ。
 しかも沖縄では、日米安保体制・地位協定の下でほぼ自由に基地と陸海空の領域を使える。その意味ではまさに戦闘態勢の日本はアメリカの植民地、発進基地だ。それを日本列島全土に広げ、米軍はグアムに退こうとしている。
 しかし冷静に見て、中国との戦争で日本・アメリカは勝つことはない。孫崎享氏も言うように、アメリカの戦争シミュレーションでも、中国と8回戦争をして8回とも負けている。日本は負けるために戦うのだ。
 アメリカのたくらむ戦争を拒否しなくてはならない。日本は近隣国(特に中韓ロ、可能なら北朝鮮も)と、冷戦期の米ソのように、何かあったときにきちんと対応できるホットラインをつくって戦争を防止しなくてはならない。

5.戦争を避けるために欧米の覇権主義の
先兵から、地域の共同へ

 世界はウクライナやガザを巡って大きく変化し、新冷戦、いや新たな戦争とも言われる状況に陥っている。戦争を繰り返してきた歴史の教訓をどう生かすべきか。
 イスラエル・パレスチナ戦争は、20世紀から21世紀に継続された、時代遅れの植民地戦争である。
 すでに述べたようにアジアの戦争で中国と日本が相打ちしてくれれば、欧米の時代はあと100年生き延びるからである。
 その戦争挑発計画に乗らないためには、まさに、不再戦、二度と戦争をしない決意で白旗を掲げることだ。台湾有事を起こさせない、沖縄の基地強化やミサイル基地を拒否し、沖縄を平和のセンターとして中国やASEANとの経済関係を続けることで発展する道を選ぶ、これに本土も合流していくことが必要だ。
 われわれがやるべきは、アジアの地域共同はアメリカを敵とするものではなく、戦争はしたくない、ということをさまざまな場で公言し続けること。さらに日本政府を交代させる必要がある。次の選挙がカギだ。これができずに戦争に突入していけば日本は第2次世界大戦を大きく超える、悲惨な戦争に突入する。
 現在、日本は、台湾有事、中国封じ込め戦略、 「安保3文書」に基づき、アメリカに指揮権を統合された軍事同盟に踏み切った。米軍依存の下で、自衛隊の強化が進み、沖縄および全国へのミサイル配備が進行している。なぜこれほど急ピッチに基地・ミサイル・司令塔拡大が進められているのか。
 それは、いま日本政府が憲法9条を形骸化することで、アメリカ軍部の要請に従い、戦える国になろうとしているからだ。

6.自治体からの「6カ国協議」、沖縄を平和のハブに!

 かつて、北朝鮮の核を議論するため、「6カ国協議」がつくられた。今それに代わる、下からの6カ国協議が、「北東アジア6カ国自治体連合」だ。
 私は、昨年12月、北東アジア6カ国(日、中、韓、モンゴル、ロシア、北朝鮮)の80以上の自治体が参加している北東アジア自治体連合に招聘され、初日の国際政治と平和の専門家会合で報告を行った。6カ国自治体連合は、各国政府の方針に縛られず、自治体共同の利害=若者育成、環境保全、経済発展、文化交流、平和構築など、現在活発に活動を続けている。これに日本も、日本海側の11自治体だけでなく、沖縄を含む47都道府県ほとんどの自治体が加盟し、自治体の友好と平和の声を各国に届けていくことが重要だ。沖縄も今年4月以降、この自治体連合に加盟予定だ。ぜひ福岡県をはじめ九州、四国、中国、近畿、東北、北海道など、地域のあらゆる自治体が、平和団体や平和議員の後押しを受けて、この自治体連合に加盟し、平和な、政府によるのでなく市民からの東アジアの平和な地域協力をつくっていってほしい。
 問題は、軍事的リスク請負地としての沖縄だ。現在、米中対立の狭間で沖縄は軍事的負担が増え戦場となるようなリスクが高まっている状況だ。これをどう打開していくべきか。
 現在の状況を、米、日本政府、沖縄の三つの視点から分析することができる。
 沖縄は、地政学的には、よかれあしかれ、大陸や日本列島をにらむ軍事の「ハブ」の位置にある。アメリカにとって戦争をするのに有利な位置にあるということだ。それが戦争の基地として「外から」見た沖縄だ。
 日本政府から見ると、大戦の時には、沖縄で決戦を行わせ時間稼ぎをし、1億総決起のような形で戦う準備をする捨て石になった側面がある。今も同様に、アメリカとの同盟を維持するために沖縄を捨て石として差し出している。しかしもはや沖縄では済まないこと、九州、四国、東北から北海道までの自衛隊基地にミサイルと司令塔が要請され始めている。これが断れない状況にある。
 他方、沖縄自身の側に目を転じると、歴史的に琉球王国の時代から、東南アジアや中国大陸との交流の要所(交流のハブ)としての役割が強い。それを沖縄県も、沖縄の人々も、自分たちの歴史的役割と思っている。つまり大国や日本政府が地政学的道具として利用しようとしていることと、沖縄の人々が考えている平和と交易と文化の交流地点としての役割には大きな齟齬・矛盾があるのだ。
 「沖縄を、平和のハブに!」はまさしく、沖縄の目線から見て、本来の歴史的な沖縄のプラスの役割を取り戻そう!ということなのだ。そしてそれは日本国民の利益にもつながる。沖縄を、さらに日本全土をアメリカの対中国戦闘基地にしてはならない。

7.中国は攻めてくるのか? 日本は戦わないといけないのか?

 今、「中国が攻めてくるから危ない」と軍事強化が盛んに言われる。実際中国は攻めてくるのか?日中が戦争になって日本は勝てる見込みもないのに、戦わないといけないのか。これは常に問われることだ。
 太平洋戦争末期の沖縄戦は、アメリカ軍の本土攻撃の足掛かりであり、日本にとっては「本土防衛」確保のための時間稼ぎだった。そうしているうちに広島・長崎に核爆弾が落とされた。
 米連邦議会ウォルバーグ下院議員(共和党)は、「長崎や広島のようにガザに爆弾を投下して手っ取り早く戦争を終わらせるべき」と述べ(CNN、4/1)、日本の被爆者から抗議を受けた。アメリカの核兵器使用はいまだにそうした位置づけである。また米国のオースティン国防長官は4月9日、上院軍事委員会の公聴会で証言し、自身の知る限りでは、米国は、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区でジェノサイド(集団殺害)に関与したという証拠を持っていないと述べた(CNN、4/10)。アメリカ政府の戦争認識はこのようなものである。
 東アジアでもし戦争が起これば、同様なことが、「事故」としてでも起こる可能性がある。例えば北朝鮮の核格納庫、日本の54基の原発のいずれか、あるいは本当に自然災害として地震・津波・原発事故という東日本大震災のようなことが起こる可能性は十分ある。この自然災害大国で、戦争中に自然災害や事故が起こらない保証は全くない。
 中国はこちらが、あるいはアメリカがあおらない限り攻めてこない。なんの理があって沖縄に攻め込むか。台湾統一にしても、中国は100年待てると言っている。今は経済成長を続けて、アメリカを10年か20年で抜こうという時である。「祖国統一」は悲願であるが、得意な経済ではなく不得手な戦争をして多大な犠牲を払ってまで、台湾統一を急ぐつもりはない。
 台湾が独立しない限り(つまり台湾にアメリカのミサイルや核兵器が堂々と置かれない限り)中国は台湾を軍事併合することはない。アメリカの金融機関ゴールドマン・サックスでさえ、2035年には中国がアメリカを抜く、と言っているのに、どうしていま中国が台湾に、ましてや沖縄に、日本に攻めて行くのだろうか。
 いま中国経済に問題があると政府やマスコミは言っているが、むしろ、半導体の経済制裁を仕掛け、中国の成長を遅らせ混乱させようとしているのがアメリカである。台湾有事は、日本のために戦うのではなく、中国の発展を阻止するアメリカの先兵として戦うのである。そのために沖縄市民を、日本国民を犠牲にするのか。
 台湾の世論調査でも、8割が現状維持を望む、中国との良好な関係維持だ。戦争は台湾の人々に何の利益ももたらさず、害だけだ。国民党の馬英九元総統は最近大学生を引き連れて中国、北京を訪れて平和な環境維持を、と語っている。中国も「平和統一」を強調している。
 日本も、中国との良好な関係を保ち、QUADや米日韓比の軍事同盟強化などを進めたり、沖縄をはじめ日本全土へのミサイル配備など、中国の脅威をあおったりす
るようなことをしなければ、あるいは半導体の対中輸出規制強化などで中国敵視を進めたりしなければ、歴史的に見ても中国が日本や沖縄を攻めることはない。攻めるメリットもない。しかし沖縄や日本本土でミサイルを次々に中国に向けて配備し、岸田首相がアメリカに行き軍事安全保障の指揮系統を統合すると約束すれば状況は異なってくる。現状ではむしろ日本政府が、中国に対してアメリカと共に軍拡をあおっている。
 私は、昨年10月には北京大学・精華大学などの招聘により、中国を2度訪問した。中国はいま日本との学術・市民交流・経済連携、沖縄との学術・市民交流・経済連携を言い、「3000人学生交流」、日本の知識人との相互交流を活発化させようとしている。
 近隣国との信頼関係を維持し、軍事化を止め、経済協力、人的協力を行うことで、対立は回避できる。それを中国も行おうとしている。
 「沖縄を平和のハブに!」 そして各自治体に、6カ国北東アジア自治体連合に加入し、戦争を避け、近隣国との信頼関係をつくろうと言い続けることが必要である。

8.日本が白旗を掲げれば、
アメリカは戦争できない

 欧州や日本は、その域内で戦争をしてきた。人類だけが他の生物と違ってお互いに領土や利権をめぐって殺し合うといわれる。
 アメリカは20世紀の二つの世界大戦ではほとんど自らは戦争していない。戦勝国の側につき、戦後の国際秩序を確立することで覇権を握ってきた。アメリカは戦争を画策する。太平洋戦争でも日本から仕掛けさせて、防衛戦争をするという名目で参戦している。
 戦後、英米両国は、英国がインド、タイ、ビルマなど東南アジア、香港などの独立意識の高まりで撤退し、米国が、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガン戦争で敗退した。
 イスラエル・パレスチナ戦争も、アラブの大海の中に、第2次世界大戦後に入ってきた戦争国家イスラエルが最終勝利するとは思えない。イスラエルは負け、うまく交渉できれば「二国家併存」、イスラエルのジェノサイドがさらに続くようなら、イスラエルは現在の領土から追い出される可能性すらある。国連の8割が即時停戦に賛成し、また国連の4分の3が、パレスチナの独立と二国家共存に賛成しているとき、アメリカとイスラエルだけで、中東を抑え続けることはできないと思う。アフガニスタンのようにアメリカはいずれ撤退しなければならない。
 国際的に、21世紀の戦争継続、すなわち東アジアへの戦争の飛び火か、平和への努力か、を考えたとき、アメリカと結んで戦争を継続するのでなく、平和を望む国々との国際的連帯が欠かせない。
 今、平和のために共同できるのは、中国、韓国、ASEAN諸国、インド、グローバルサウスとの連帯であろう。ロシア・ウクライナ戦争での穀物やエネルギー輸入の困難さやエネルギー価格の高騰に加え、植民地主義を最も体験している国々であるからだ。日本はこれらの国々を支援し、平和を守ることを高らかに打ち出すべきである。憲法9条がある限りそれができる。「漁夫の利」は、イギリス、アメリカ、アングロサクソンの歴史的戦略である。典型的なのが、 1938年のミュンヘン会談だ。アルザス・ロレーヌに兵を進めようとしたドイツに対し、チェコのズデーテン地域のドイツ割譲を認め、軍を西にではなく東に向かわせて、ソ連と戦うよう促してともに疲弊させようとした。第1次世界大戦や日清戦争、日露戦争でさえ、米欧は日本に、中国、ロシアと戦わせて、その利を得ようとした。東アジアへの武器輸出はまさにそれである。武器輸出で儲け、中国の封じ込め、半導体の経済封鎖で成長を止め、さらに台湾有事、沖縄への基地やミサイル拡大で、小さな紛争を起こして、米軍はグアムに去る、というシナリオまでできているといわれる(沖縄の議員の言葉)。

9.中国とは戦争しない!

 われわれは全力を尽くして、沖縄で、九州で、日本で、二度と戦争をしないこと、沖縄を平和のハブとし、東アジアの国連を誘致し、北東アジア6カ国自治体連合に、可能な限りすべての自治体が参加することに尽力するべきだ。
 われわれは、知識人、自治体、市民、メディア、政党とも組んで、イスラエル・ガザ戦争、ロシア・ウクライナ戦争を早期に止め、双方の復興に協力する。パレスチナは自治政府ではなく国家として認める、等を早期に実行していく。そのためにも中国・インド・グローバルサウスの国々と連携して平和をつくる必要がある。
 なぜならこれらをいま止めないと、いずれ次の戦争、東アジアに戦争が飛び火し、「東アジアではわれわれが想像もつかないような未来の戦争」、すなわち欧州からアジアに戦闘が広がる第3次世界大戦となる。そして東アジアの戦争は、アメリカのAI企業の幹部ハリス氏が言うように「戦闘領域がより大規模になり、瞬時に意思決定が求められる。人間では対応できないことをAIが補完してくれる」。つまりアメリカのAIが遠く離れた外から仕切ることによって、われわれは政府の決定権すら持たず、途方もない犠牲が日本全土、東アジア全土に生み出される戦争になる可能性があるからである。それをアメリカのAI企業がはっきりと予言している! それでも私たちは戦うのか。AIの指令によって殺されるために?
 日中不再戦、戦争を止めよう! 白旗を掲げる勇気を持とう!
 私たちの子孫に、平和で豊かな未来を残すために!

九州自治体議員の会準備会合で記念講演(4月13日、福岡市)