[全国水平社創立100周年]記念集会 3月3日、京都市岡崎

部落解放・人間解放にむけた闘いのいっそうの強化を誓う

解放新聞社提供

 部落解放同盟中央本部は全国水平社創立から100周年を迎えた3月3日、創立大会が開かれた京都市岡崎のロームシアター京都(京都会館)で全国水平社創立100周年記念集会を開催した。約1000人参加の、新型コロナウイルス感染症の影響で規模を縮小しての開催となったが、厳しい部落差別と闘った先人の苦闘を受け継ぎ、部落解放にむけた広範な闘いを前進させることを確認した。


 集会では、創立大会で採択された「全国水平社創立宣言」を俳優の峰蘭太郎さんが読み上げた後、坂本三郎・中央執行副委員長のよびかけで、物故者と無名戦士慰霊の黙禱がおこなわれた。
 主催者を代表して、組坂繁之・中央執行委員長は「100年続く部落解放運動を受け継ぐことを誇りに想いながら、先人の血、汗と涙の苦闘と尊い犠牲が切り拓いた闘いがあったことをしっかりと胸に刻まなければならない」とあいさつ。さらにロシアのウクライナへの軍事侵攻に対して「戦争は最大の人権侵害であり、人間の尊厳を求めるわれわれは、連帯共闘する仲間とともに、全国各地から反戦の声を大きくしなければならない」と強調し、記念集会を契機に、部落解放―人間解放にむけた闘いのいっそうの強化を訴えた。
 来賓あいさつは、西脇隆俊・京都府知事と門川大作・京都市長が地元の行政を代表あいさつ。立憲民主党の福山哲郎・参議院議員、公明党の伊佐進一・衆議院議員、国民民主党の前原誠司・代表代行(衆議院議員)、社会民主党の大椿裕子・副党首の祝辞の後、石川一雄さんと早智子さんが狭山事件の再審実現にむけた支援を訴えた。
 功労者・物故者表彰では代表して、大野昭則・元中央執行副委員長(京都府連顧問)と岸田章子・元中央執行副委員長が表彰状を受けとり、岸田・元副委員長が代表あいさつ。女性役員として闘った女性独自の狭山闘争の取り組みなどを紹介、部落解放運動のなかで女性の役割を高めることが重要と強調した。また、国際連帯の取り組みでも、世界の被差別女性とのつながりを広げ、部落女性の闘いを国内外に発信することで、女性差別撤廃の協働した取り組みを強めてもらいたいと次代の女性たちにエールを送った。
 さらに特別表彰として、部落解放中央共闘会議の安藤京一・議長(情報労連委員長)、全国企業連絡会を代表して柄川忠一・大阪同和・人権問題企業連絡会理事長、宗教教団連帯会議の足立宜了・議長の3団体を表彰、それぞれから今後の抱負などを含めたあいさつがあった。また、第7回松本治一郎賞を反差別国際運動代表理事のニマルカ・フェルナンドさん(インド在住)に贈呈されることが紹介された。祝電では、山﨑鈴子・中央女性運動部長から自民党の二階俊博・元幹事長、れいわ新選組の大石あき子・衆議院議員のメッセージが代読された。
 記念式典第1部の最後に、「部落解放同盟~新たなる決意」(別掲)を青年部の松本美鈴さんが朗読した。第2部では全国水平社創立100年記念行事として制作した映画『破戒』が上映された。
 西島藤彦・中央書記長が閉会あいさつで「部落差別を次の世代に引き継がせまいと苦闘してきた先人の想い、闘いの歴史を継承し、全力で闘い続ける決意を確認することができた。部落解放運動の強化にむけて、協働・連帯の取り組みをすすめていきたい」とよびかけた。

[全国水平社創立100周年]

部落解放同盟―新たなる決意 (一部略)

 自由と平等の渇仰者であり実行者であった先人たちは、第一次世界大戦後に人間を尊敬する人間主義と部落民としての尊厳を高らかに宣言し、部落民自身による差別からの解放を実現するために全国水平社を創立した。
 多くの先人たちの意志と行動に、あらためて深い感慨を覚えると同時に、さらなる前進を期して100年という歳月を確認したい。
 全国水平社は、差別と貧困の耐え難い屈辱的な日々のなかで、自らの自覚と行動によって絶対の解放を期せんとして生まれた。あれから100年、部落大衆の自主的かつ組織的な部落解放運動は、人間としての尊厳を掲げて部落解放を求めて闘い続けてきた。また戦前・戦後を通じて、平和と民主主義の確立に向けて、多くの仲間との連帯を発展させ、労働運動や市民運動のみならず、日本社会と国際社会に多大な影響をあたえてきた。
 そして全国水平社は、部落差別に抗議する差別糾弾闘争を軸としながら、労働者・農民と連帯して貧困と生活苦を克服する生活擁護闘争、国内外の被差別マイノリティと連携するなど果敢な運動を展開した。しかし、侵略戦争と軌を一にしたファシズム体制に抗しきれず、戦争協力を余儀なくされた。
 第二次世界大戦後、部落解放への意欲が涸れずにあった先人たちは、全国水平社の闘いを継承して部落解放全国委員会を結成し、発展的に改称された部落解放同盟は、東西冷戦と日米安保体制のもとで、日本国憲法の主権在民、基本的人権、平和主義の原則を遵守する平和勢力の一翼を担った。
 また高度経済成長期以降は、差別糾弾闘争、生活擁護闘争、行政闘争、狭山差別裁判闘争、反差別共同闘争、反差別国際運動、まちづくり運動など広範かつ大衆的な部落解放運動を展開し、さらに部落問題の解決が国の責務であり、国民的課題であることを、同和対策審議会答申で明らかにさせた。
 しかるに現在では、新自由主義と国家主義が日本と世界を席巻し、新たな貧困と困難によって社会的格差が拡大し、差別排外主義も公然と台頭している。またネット社会の到来は、世界を急速に結びつけて情報の拡散と交信を促進させたが、同時に差別、偏見、抑圧、監視、憎悪などを増幅させている。
 さらに感染症の爆発的拡大をはじめ、地球温暖化、自然災害、環境破壊、戦争、核兵器、原発などの脅威によって、地球的規模の人類的な生存の危機が現実化している。これらが、部落大衆をはじめ被差別マイノリティの人権にも大きな危機をもたらしているだけに、この危機を克服するための取り組みは部落解放運動にとって重要な課題となっている。
 全国水平社創立から100周年という節目を迎えた部落解放運動は、「危機の時代」に直面しているという現実認識のもと、社会の変化に対応するために組織の再生をかけて、大胆に4点からなる部落解放同盟としての「新たなる決意」を明らかにし、その実現に向けて奮闘するものである。
 決意の第1点は、「人権の法制度」の確立をめざすことである。
 決意の第2点は、部落差別と深く結びついた、「社会的格差」と「社会的排除」に対する徹底した闘いを挑むことである。
 決意の第3点は、感染症をはじめ、地球温暖化、自然災害、環境破壊、戦争、核兵器、原発など、「地球的規模の人類的危機」に立ち向かう。
 決意の第4点は、部落大衆の結集を軸としつつ、国内外の被差別マイノリティと勤労諸階層との連帯と協働を促進させ、部落解放同盟を開かれた「未来志向の組織」に改革する。
 かくして部落解放の「よき日」―人権確立社会の実現に向け、必ずや新しい歴史を刻んでいくことを、ここに決意するものである。

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