事務局長">   事務局長"> [シンポジウム 台湾有事を避けるために] <span class="em08">  事務局長</span>

[シンポジウム 台湾有事を避けるために]   事務局長

シンポジウムを終えて

広範な国民連合事務局長 山本 正治 

 ロシアはウクライナ全土に軍事侵攻した。アメリカによる世界支配秩序の時代は終わり、「多極化」の世界が公然と現れた。「ウクライナは明日の東アジア」「台湾有事、日本有事」「核共有」までもが語られる。こうした中でのシンポジウムとなった。
 各氏のご発言は当然にもこの問題からだった。ウクライナの国家主権と領土の一体性への乱暴な侵害・破壊、殺戮行為は許されず、即刻の停戦とロシア軍の撤退を求めるとともに、東アジアでの戦争を避ける、台湾有事にしてはならないことは共通の認識だった。


 あまり触れられなかったが、ロシアの軍事侵攻は、ウクライナ東部の二つの「人民共和国」の主権を承認し、両「人民共和国」との「友好、協力、相互援助条約」に基づいているというカタチを取っている。この点は重視し問題にする必要がある。国連憲章にある「集団的自衛権の行使」という言い分だからである。今は「正義の味方」面しているアメリカだが、2001年のアフガニスタン侵攻も、古くはベトナム戦争も、この「集団的自衛権行使」を理由にした。「台湾の独立承認」は集団的自衛権行使の口実となる。
 柳澤氏は、米中対立の根源は深く、台湾独立を認めない政策が戦争を防いでいたとの趣旨を述べた。米日両国が、「一つの中国」の約束を違えないこと、かつ、一方的な集団的自衛権行使を認めないこと、ここが有事を避けるポイント。ところがバイデンは、「一つの中国」政策を意図的にあいまいにして中国を挑発する。
 国際紛争処理の専門家である伊勢崎賢治氏は、「今回のように独立運動や民族紛争で争うすべての国や勢力に対しては、集団的自衛権行使の対象にすることはもちろん、あらゆる軍事支援や介入を禁止する」協定を提唱する(毎日新聞、3月5日)。注目に値する提起である。中日韓、さらに朝鮮など東アジア諸国、ロシアやアメリカも含めてこうした協定は地域の安定平和に寄与するであろう。
 柳澤氏は、「核の先制不使用」にも触れた。重要な点だ。他方、わが国政府は「敵基地攻撃」を検討し、「核共有」論まで高まる。中国など近隣諸国はどう受け止めるか?
 柳澤氏が言うように、この政治家たちに「中国と戦争をする」というリアルさはあるのか。南西諸島などの住民、国民の命はどうなるのか? 想像力はあるのだろうか? 石破氏が、沖縄戦犠牲者追悼の「平和の礎」に触れて、戦場にさせない住民・国民を守る視点の重要さを語られたことは新鮮だった。
 と言うのも、「米国が日本配備の核兵器を実際に使うときは、日本が高い確率で滅亡するときであるから、核の運用をシェアリングせよという権利がある」と、前国家安全保障局次長の兼原信克氏が平然と書いていたのを思い出したからだ(『日本の対中大戦略』PHP新書)。「日本が滅亡するとき」、滅亡を防ぐのが政治の役割だ。柳澤氏は、自民党総選挙公約の「国の役割は国家の『名誉』を守ること」の危うさを指摘した。
 絶対に戦争をさせない、国民の命、生活を守る。ここを起点に、ベースに、安全保障と防衛を考える必要があると改めて考えた。
 安全保障については、石破氏が多方面から触れられ大いに刺激を受けたが議論する時間はなかった。石破氏から、「機会があれば次回にも」と発言いただいたことは誠にありがたいこと。氏の唱える「小日本主義」の安全保障政策をこの次は伺い議論したい。
 食料も原油も高騰し国民生活を直撃。サプライチェーンの安全、
食料安全保障、エネルギー安全保障を含む、文字通り国民の命と生活を守る総合的な安全保障の確立が求められる。アメリカと日米同盟への信頼が揺らいだ結果といわれる「核共有」問題もある。
 アメリカに国の命運を委ねてはならない。自主・平和の安全保障を追求したい。岡田、羽場両氏をはじめ皆さまのご協力に感謝します。