■2022年新春メッセージ 組坂 繁之

差別と戦争に反対する
共同の闘いを大きく前進させよう

部落解放同盟中央執行委員長 組坂 繁之

 昨年は、東京オリンピック・パラリンピックの強行開催もあり、新型コロナウイルス感染症の拡がりが収束せず、私たちの生活と人権や平和の確立を求める闘いなどでも、多くの制限や制約があるなかでの取り組みになりました。また、菅政権が退陣し、その後継としての岸田政権のもとで実施された衆議院総選挙では、自民党が議席を減らしたものの、日本維新の会が大幅に議席を伸ばし、改憲発議の条件ができるなど、たいへん厳しい結果となりました。しかも議席を減らした立憲民主党では、枝野代表が辞任し、新執行部のもとで党再建をすすめるということで、新自由主義政策に対抗する野党勢力がどのような方向で政治の変革を実現していくのか不透明な情勢になっています。


 岸田政権は、衆議院総選挙において「新しい資本主義」をめざすとして、「成長と分配」を強調しました。しかし、選挙後は、成長のみを優先するばかりです。しかも、十分な補償もないままでの「緊急事態宣言」以降、無責任な「自粛」や休業要請などで、中小企業の経営破綻、派遣切りや雇い止めなどが続き、格差や貧困の問題がいっそう深刻化しました。また、これまでの医療制度の改悪、福祉や社会保障関係予算を削減してきたことが、医療関係者の疲弊、医療崩壊を生み出して、経済優先をすすめてきた新自由主義政策による「人災」であることは明らかです。
 必要な感染症パンデミックへの国際的に共同した対策は、自国第一主義が生み出した国家間対立ですすまず、多くの国において医療崩壊と貧困や格差、差別の問題を顕在化させています。分断と対立は、米中対立、EU諸国の不統一、中東や朝鮮半島情勢などのように、国際情勢をいっそう不安定なものにしています。
 求められるのは、人権と平和の確立にむけた政治勢力の結集であり、差別と戦争に反対する市民運動の拡がりです。岸田政権は、米国への追従をより深めるなかで、軍事費の増大をすすめるとともに、沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設をあくまでも強行する姿勢です。また、「敵基地攻撃力」の保持を明言するなど、憲法違反の戦争推進政策をすすめ、その軍事力を背景にしながら、中国や韓国との対立を激化させ、アジアでの覇権をめざしています。
 今日の日本社会は、新自由主義政策のもと、貧困と格差が拡大、固定化しています。とくに感染症拡大のなかで、社会不安や不満を背景にして、インターネット上の差別情報の氾濫やヘイトスピーチのように差別と暴力が公然と煽動されており、人権と平和を確立するための闘いは、ますます重要な課題となっています。
 「部落差別解消推進法」「ヘイトスピーチ解消法」「障害者差別解消法」「アイヌ施策推進法」などの立法措置の実現は、厳しい差別の実態を訴えてきたそれぞれの当事者の奮闘と、より広範な共同の闘いの成果です。私たちはさらに、部落差別撤廃と、国内人権委員会の設置を中心にした人権侵害被害救済制度の確立、狭山再審闘争の勝利、天皇制の強化に反対する闘いなど、反差別共同闘争の力を総結集して闘います。本年は、部落民自身の自主解放をめざした全国水平社の創立から100年の大きな節目の年です。部落解放―人間解放をめざした多くの先達たちの苦闘に想いを重ね、闘いの勝利にむけてともに奮闘しましょう。

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