これ以上沖縄を犠牲にしてはならない。これは全国民の課題だ

米軍兵をはじめすべての性暴力の根絶を目指して

高里 鈴代さん(基地軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表)に聞く

聞き手 山内 末子(沖縄県議)

たかざと・すずよさん(左)
オール沖縄会議共同代表、基地軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表、軍事主義を許さない国際ネットワーク沖縄代表。元那覇市議。

   1995年結成の「基地軍隊を許さない行動する女たちの会」は、結成から25年を迎える。高里鈴代さんは、共同代表として一貫して米軍兵の性暴力と基地に反対して奮闘している。高里鈴代さんに、東日本大震災から10年、節目の3月11日、毎月11日に全国で開催されている「フラワーデモin沖縄」開催前に、会場の沖縄県庁前広場で山内末子沖縄県議がお話を伺った。文責、見出しとも編集部

山内末子(以下、――) 1月末にも米軍人による強制わいせつ事件が起き、県議会でも「女性に対するこのような行為は、肉体的、精神的苦痛を与えるだけではなく、人間としての尊厳をじゅうりんする犯罪である」と、米軍への抗議と政府への意見書を全会一致で決議したところです。今日は、毎月全国で開催されているすべての性暴力を根絶する目的のフラワーデモの日で、これからデモがあるわけです。高里さんは女性への性暴力根絶に向け沖縄だけでなく、県外・国外でもご尽力なさっておられることに心から感謝を申し上げます。高里さんのこれまでの女性と性暴力に対する活動概略をお聞かせください。

高里鈴代さん(以下、高里) まず、大きな流れを説明したいと思います。1995年、北京で開かれた「第4回世界女性会議」に沖縄から71人の女性が参加しました。その前に行われました国連世界人権会議で、「紛争下における女性への暴力は人道に反する罪であり、戦争犯罪である」と規定しました。私は、戦後長期にわたる米軍の沖縄駐留下で続く米軍の性暴力は、武力紛争下でもなく独立国の一部ではあるが、「外国軍隊長期駐留下」として「紛争地」に準じてとらえるべきではないかと考えていました。それを踏まえて、沖縄の女性たちは、「沖縄における軍隊・その構造的暴力と女性~武器によらない平和の実現を」と題した報告書をまとめ、世界の女性たちとネットワークを築くための「共同声明」を出し、多くの共感を得ました。

 その会議の後に起きたのが、3人の米兵による12歳の少女へのあの衝撃的な性暴力事件です。私たちはまず、被害者を孤立させてはいけないと、すぐに記者会見や集会を行いました。そして性暴力被害支援センターとして「強姦救援センター沖縄レイコ」を立ち上げ、さらに「基地軍隊を許さない行動する女たちの会」を結成しました。

 少女に加えられた暴力は特殊なものではない、沖縄でずっと起きてきたこと。本気でこの問題に取り組まなければならないと強く決意したものです。

 その後、山内さんも参加されたアメリカ・ピースキャラバンは超党派の女性議員を中心とし、アメリカの市民に対して自国の軍隊が起こしている性暴力について訴えてきました。

 その実態を示す資料として作成したのが「沖縄・米兵による女性への性犯罪」年表第1版です。

 その内容を少し説明しますと、沖縄への米軍上陸直後から銃やナイフで脅しての強姦や性暴力が始まりました。2~6人の集団で、収容所、畑、道路、病院、家族の前、どこでも……、助けようとする家族や警察官が殺害される、あるいは重傷を負うようなこともしょっちゅうでした。

 被害者は、わずか9カ月の乳児、6歳、9歳、あらゆる年齢に及びました。強姦の結果の出産も多数ありました。

 ところが、大多数の加害者は不起訴。1972年の「復帰前」、戦後27年間の米軍占領下では沖縄に基本的人権はありませんでした。米軍犯罪の裁判は、すべて基地内で、英語で行われました。

 あれから25年、年表は12版までまとめられています。戦後75年連綿と続いてきた米兵による性暴力に、どれほどの女性たち、子どもたちが苦しんできたのか計り知れません。そこに表れない沈黙の中で、苦しい体験を抱えながら生き残っている人たちがいることも忘れてはならないわけです。

 1995年の事件後、日米政府は沖縄の怒りを抑えるために、「SACO」(Special Action Committee on Okinawa・沖縄に関する特別行動委員会)を設置、普天間基地返還問題へと流れていくのです。

――戦後すぐから今日まで、米軍による事件・事故は後を絶たず、特に女性への性暴力は数字として出てこないだけで、やはりまだまだ続いていると想定されます。日米地位協定の壁の高さも、世界各地の米軍駐留国とは比較にならないほどです。民主国家と思えない米軍優先の状況が続く沖縄、何をどう変えていかねばならないと考えていますか?

高里 ほとんど毎日、米軍関係の事件・事故が発生しています。その根底にあるのが、米軍のいまだにある植民地意識だと思います。何をしても基地内に逃げ込めばわからない。性犯罪について日本は「申告主義」で、日本人は性被害を訴えないという認識が米兵には共有されていると見るべきです。だからこそ、日米地位協定の改定は絶対に必要です。

 また女性の性被害については米軍がらみだけでなく、国内の事件でもやはり被害に遭った女性が声を上げにくい社会構造から変えていかねばなりません。性被害は暴力であり犯罪だということ、被害に遭った人が声を上げやすい社会をつくっていかねばなりません。「あなたは絶対に悪くない」ということも含めて、沈黙しないことが大切だと思います。

――沈黙しない、痛いことを痛いと言える社会、沖縄をつくっていきましょう。

 最後に今、沖縄戦激戦地になった糸満の地には、まだ戦没者の遺骨が眠っており、遺骨収集が続けられています。その地域の土砂を、政府は辺野古埋め立てに使おうとしています。沖縄防衛局は本島南部の糸満市と八重瀬町からは県内土砂調達可能量の7割に当たる約3200万立方メートルを調達し、新基地建設の埋め立てに使う計画です。それを止めるためにボランティアで遺骨収集を続けている具志堅隆松さんがハンガーストライキを行いました。そのことについてどういう思いを持っておられますか?

高里 南部一帯は76年前の沖縄戦の最激戦地で、まだまだ遺骨が出てくる場所です。たくさんの戦没者が眠っている場所です。全国各県などのものも含めてさまざまな慰霊碑も建立されています。その聖地から土砂を発掘し、戦争のための基地に使うなど到底人間のすることではなく許せません。そこには沖縄県民だけでなく、日本兵・米兵の戦没者も眠っています。戦没者を冒瀆する、二度にわたり殺すことになります。このことは沖縄だけの問題ではありません。

 ぜひ国民全体で共有し、止めていきたいと思います。

 すべてのことがそうですが、沖縄の問題は沖縄だけの問題ではありません。未来永劫、沖縄が日米安保の名の下に基地の島沖縄・暴力の島沖縄であることを拒否したいと思います。

――ありがとうございました。これからも私たちは力を合わせて、全国の皆さんと連帯して闘ってゆきます。よろしくお願いいたします。