被災者の安心を最優先に日常を取り戻す支援を急げ

台風豪雨の甚大災害 求められる検証と抜本対策

編集部

 記録的な豪雨で東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号の被災地では、今なお(10月24日現在)約4000人の住民が避難生活を強いられている。被災された方々に心からお見舞い申し上げるとともに、救助、救援、復旧などで奮闘されている自治体職員やボランティアの皆さん、消防や警察、自衛隊員の皆さんにもお礼を申し上げたい。
 被害は広域で深刻で全貌はつかみ切れていない。着のみ着のままで避難した住民の安全と安心を最優先し、日常を取り戻す支援を急がねばならない。東北や長野県の被災地は寒さが本格化する。障がい者や高齢者など「災害弱者」と言われる人びとをはじめ被災者の健康維持を最優先に、きめ細かな支援が求められる。
 生き延びた被災者の多くが避難所にいるが、人間の尊厳が無視されたような避難所はどうにかならないのか。東日本大震災の関連死は「避難所等における生活の肉体・精神的疲労」が原因の約3割を占めたという。せっかく助かった命を避難所で失ってはたまらない。
 住居の確保も大きな課題である。簡易な仮設住宅ではなく、最低限の質をもつ住環境を保障したい。電気や水道、道路など社会インフラの再建も急がれる。
 農畜産業には甚大な被害が出ているし、地域の産業全般にも大打撃であろう。被災地域の生業の再建は、地域再興の柱だ。
 災害救助法が適用された自治体数は、13都県の317市区町村で実に全国市町村の2割に相当する。前例のない緊急事態である。被害は、全国同時に、多発的に、流域一帯に発生した。
 しっかりとした検証と抜本的な対策が必要となっていることはだれの目にも明らかだ。
 豪雨の根本原因としての地球温暖化への取り組み、豪雨を受け止める森林や農地など国土の荒廃と地域社会崩壊をもたらした農林政策の根本的見直しも不可欠だ。今年5月に修正した政府防災基本計画も、「一極集中の是正」と人口減少が進む中山間地域や漁村等での集落の衰退、行政職員の不足、地域経済力の低下等を指摘。これは長年の政治の結果であり、そこを豪雨が突いたといえる。堤防を高くし早く水を海に流すという従来型の国土強靭化の限界も明らか。
 これは国家安全保障の大問題である。政府に、責任をもった救援、復旧復興の取り組みを強く求める。
 同時に、しっかりとした検証と抜本的な対策をめざす国民的な取り組みを進めなくてはならない。

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