講演とシンポジウム取り組む
広範な国民連合・大阪は、「《世界が変わる。問われる日本の進路》―アジアで生きる―」と題した講演・シンポジウムを実行委員会の一員として開催し、成功裏に終えた。
今年は、日中平和友好条約締結40周年であり、また、朝鮮半島情勢が一気に緩和の方向に動きだした。そこで、講演は丹羽宇一郎さん(元在中国全権大使、現在日中友好協会会長)にお願いした。シンポジストは3人で――田中誠太八尾市長、戸毛敏美大阪府日中友好協会副会長、郭辰雄コリアNGOセンター代表理事。コーディネーターは広範な国民連合代表世話人の佐々木道博さん。
丹羽さんは、日本は中国、韓国、北朝鮮、ロシアと地理的に近い位置に存在し、嫌になったからといって引っ越しできるわけではなく仲良くするのが一番という前提を確認。食料も輸入に頼っているので貿易が滞ったら一巻の終わり。だから隣国との平和な環境をつくることが不可欠である。安倍政権は日米同盟を基軸としているが、同盟とは同盟国の利害により自国に直接関係ない戦争に巻き込まれる危険性が高い。日本を取り巻く5カ国相互間には複雑な問題がある。いわば5元方程式だ。それを解くのは難しいが、一度答えとして「平和」を当てはめるとどうなるだろうかと考えることを問題提起。最後は、何かしら行動に移す第一歩を踏み出そうと叱咤して講演を終えた。
田中誠太八尾市長は、八尾市が外国人の比率が高く、中国や韓国、北朝鮮、近年はベトナム人も多く住んでいるが、その方々が孤立しないように日本社会に溶け込みやすくする施策とともに、祖国の祭りのような催しを後押しすることによりアイデンティティを高めることも大事である。最近はそこに日本人が参加するようになってきた。このような相互理解を深めることによって、ヘイトスピーチ問題の解決につながると話された。
戸毛さんは、とくに「日中不戦」を強調された。そのためにはどうしていくべきか? 戦時中のハルビンに生まれ、中国人の日本に対する怒りや嫌悪感をいかに克服したのかの実際を見てきた経験を踏まえ教育の大切さ、日本では「過去を水に流す」などと言って忘れようとするが、過去を忘れず教訓にすることが大切だと話された。
郭辰雄さんは、今回の南北交渉は拙速な南北統一を目指すのでなく、お互いの発展のため平和で友好的な関係をつくることを最も重視し、そのためアメリカを引きずり出すことで一致しているのではないかとまず紹介。韓国政財界では、ソウルから北朝鮮を通って大連に連なる渤海湾沿岸と東海から北朝鮮を通ってウラジオストクへという二つのルートを鉄道で結ぶ計画が進んでいる。こうした大経済圏構想が進んでいるのにそこに日本は存在しない。東アジアが変わろうとしているのに日本はどうするのか。日本では拉致問題解決が先決だと言われるが、韓国にも拉致問題は存在し被害者数など日本とは比べものにならない。当然、今の流れに反対する人たちもいるが、多くの人は南北が経済発展し友好関係が築かれる中で解決できると信じていると紹介。
質疑応答では、大阪や関西地域が日中、日韓などアジアとの平和友好や経済発展に寄与できることがたくさんあり、一歩推し進めるため奮闘しようと確認できた。
米中冷戦がいわれる中で、アジアの平和・共生へ国の進路を切り開いていくためいっそう奮闘したい。(広範な国民連合・大阪事務局 澁谷文孝)