朝鮮南北関係の劇的前進を断固支持! アメリカは平和協定を結べ

安倍政権は制裁を撤廃し対話、国交正常化に向かえ

 息詰まるような緊張の朝鮮半島情勢は一転した。3月5日、朝鮮民主主義人民共和国の金正恩委員長は韓国の文在寅大統領の特使と平壌で会談し、史上第3度目となる南北首脳会談を4月末、南北軍事境界線にある板門店の南・韓国施設内で開催することで合意した。この前進は、米朝関係の劇的な進展を生んだ。トランプ米国大統領は、文大統領特使に、5月までに金委員長との首脳会談開催を伝えた。文大統領は米朝韓首脳会談も提起した。
 こうした前進を心から歓迎する。史上初の米朝首脳会談が実現し、朝鮮半島の緊張緩和の合意が進み、さらに朝鮮戦争終結・平和協定を展望できるならばまさに歴史的なこととなる。
 朝鮮半島の平和は、これからの闘いにかかっている。わが国安倍政権は内憂外患の極致である。関係国で唯一対話を拒否し、動揺もしているが、制裁強化だけを叫び続け敵視政策に凝り固まり対朝鮮軍備を増強している。時代の流れに逆行するものであるといえる。
 始まった流れに遅ればせながらも合流し、わが国は、諸国に先んじて制裁を撤廃し、日朝間の真の和解と国交正常化を成し遂げなくてはならない。
 そのためわれわれは広範な国民世論形成のため奮闘する。

朝鮮民族の画期的な勝利

 民族の問題は民族自身で解決するという朝鮮民族の闘いがこの画期的前進を生み出した。
 韓国国民は一昨年来の、キャンドル革命と呼ばれた朴槿恵旧政権打倒の国民的闘いに勝利し、昨年5月10日、文新大統領を生み出した。米韓同盟に縛られ国会も与党少数派の文大統領だが、国民との「政権成立後1年以内に南北首脳会談」という約束を果たそうと、一貫して南北和解のために努力してきた。
 金委員長と朝鮮民主主義人民共和国は、昨年、アメリカの史上空前の軍事演習など核恫喝に屈せず、核武装力の基本的確立に成功し、「自衛的核抑止力」を保有するに至った。その成果を踏まえ金委員長は、1月1日、「北南関係を改善し、今年を民族史に特記すべき画期的な年」としようと民族和解の劇的な提案を行った。
 文大統領はそれに即座に応えた。南北は、平昌オリンピックを通じて関係を発展させ緊張は緩和した。
 こうして3月6日、南北首脳会談開催が合意された。
 韓国政府の発表によると、金委員長は「朝鮮半島非核化の意思を明確にし、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がないという点を明白にした」という。
 さらに、「北朝鮮は非核化問題の協議と米朝関係正常化のため、米国と虚心坦懐に対話する用意がある。対話が続く間、北朝鮮は追加の核実験および弾道ミサイル発射実験などを再開することはないと明確にした。同時に北朝鮮は、核兵器はもちろん通常兵器を韓国に向けて使わないことを確約した」。金委員長の提案は、この間も朝鮮が主張してきた原則的内容だが、息詰まるような緊張情勢を一気に緩和する、十分にチャンスをとらえたメッセージであった。しかも、このメッセージを携えて文大統領特使がトランプ大統領との会談に臨んだ。
 朝鮮と韓国の共同した闘いがトランプ政権を初めての米朝首脳会談合意に追い込んだ。両国国民と政府は、文字通り「南北間の問題は、わが民族で解決する」(北南宣言)を貫き、初歩的だが画期的な勝利を闘い取った。
 中国やロシアなど6者協議の構成国も、国連なども、世界は大歓迎である。ひとり安倍政権だけは違った態度を取った。

アメリカの南北分断は破綻

 こうした南北の緊張緩和が進んで、トランプ政権の軍事オプション(選択肢)は大きく制限された。米軍も、韓国の協力なくしては朝鮮半島で戦火を開くのは容易でない。
 1950年の朝鮮戦争に「国連軍」として介入して以来、52年の停戦後も休戦協定に反して米軍は韓国に居座り、米韓軍事同盟体制を確立した。日本には、国連軍司令部がおかれ、日米安保体制で膨大な米軍が駐留することになった。朝鮮を主権国家と認めず平和協定も結ばず、核兵器を中心に軍事包囲で絶えず存立を脅かし、緊張の火種としてきた。朝鮮半島の緊張はアメリカ中心の東アジア国際秩序の維持に不可欠だった。
 途中には、1994年の米朝核合意や2006年の6者合意など、緊張緩和の時もあったがすぐに崩れた。今回の事態に直面して慌てふためいたわが国マスコミは、朝鮮の「裏切りの歴史」だとか「本音隠す偽りの平和」とか口汚い。だが、緊張が緩和して困るのはアメリカの側だった。東アジアに介入する最大の手掛かりを失うことになるからであった。とりわけ米ソ冷戦体制終焉後は「アジアに残された(残した!)冷戦体制」などと言って危機をあおった。だから朝鮮がどんなに譲歩しても、アメリカは和平を受け入れる気など毛頭なかった。朝鮮が求めた平和協定は今日まで結ばれずにきた。
 アメリカは、今もアジアへの政治・軍事・経済の干渉政策をやめたわけではない。しかし、アメリカ本土を射程に収めるICBMを含む朝鮮の核武装と南北協調の進展には対応を迫られた。国民の間に危機感が広がった。トランプにとっては、秋に控えた中間選挙に政権の死活がかかっていて実績づくり上も魅力的だった。
 何よりもアメリカにとって最大の国家戦略課題は、世界の大国をめざすことを公然化させた中国を抑え込むことである。中間選挙での支持票獲得のためにでもあるが、経済危機が深まる下で鉄鋼などをめぐる中国との貿易戦争の発動とそれへの対応こそ急がれている。
 金融危機以来の経済危機とその下でのアメリカの内外での急速な衰退、他方、アメリカの覇権を揺るがす中国の強国化で世界の構造は激変している。大国支配で長い間蹂躙されてきた国々が自国の命運をわが手に握ろうとする歴史的時期となった。こうした歴史環境の中で、朝鮮民族はチャンスをとらえて、また、準備もして画期的な前進を勝ち取っている。
 アメリカが朝鮮の核についてどんなに「完全かつ不可逆的な非核化」などと言っても通用する時代ではない。朝鮮を核保有国として認めるべきだとの意見がアメリカ国内でも広がっているという。
 しかし、国内亀裂が深まり内戦の可能性が高まっているとまで言われるアメリカである。また中間選挙も控えている。このように重大な困難を抱えるトランプ政権は、国内世論を引き付けるために、いつ危険な軍事的冒険に出ないとも限らない。覇権国がおとなしく引き下がった歴史はない。朝鮮敵視政策をやめさせなくてはならない。

朝鮮の核保有がもたらした「東アジア非核化」の始まり

 朝鮮が一貫してめざしているのは「朝鮮半島の非核化」である。1992年の南北共同宣言も、2005年の6者共同声明でも「朝鮮半島の非核化」が確認されている。それは決して北側だけの一方的な「非核化」ではないのである。「体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」という金委員長の発言に尽きる。主権国家として当たり前のことである。
 ところが、アメリカや日本政府は、国家主権を認めず、朝鮮に一方的な妥協を強いてきた。アメリカは、核軍事包囲網には変更を何一つ加えなかった。オバマ政権も「戦略的忍耐」という核包囲だった。わが国も、例えば最近明らかになったように麻生政権時代の2009年に、外務省高官は沖縄への核兵器備蓄を「説得力がある」とアメリカ側に伝えている。
 朝鮮に一方的な核放棄を迫るだけならば、今後の米朝交渉が平坦に進む保証は全くない。むしろ、交渉が行き詰まり、戦争の瀬戸際に再び立たされる可能性すらいつでもある。
 朝鮮は、朝鮮半島の非核化に向けて、自国の「非核化」と同時に、当然にも朝鮮半島とその周辺にアメリカが配備している核兵器の撤去を求めるだろう。周辺国の保有する核兵器も問題になる。朝鮮の「非核化」を要求する各国は、自らも核兵器廃止に向けて行動を起こさなくてはならない。
 わが国もアメリカの「核の傘」をそのままに朝鮮に核廃棄を求める異常さに気づかなくてはならない。核保有国も、わが国政府も、核兵器禁止条約を朝鮮と共に承認、批准して、核兵器のない東アジアに向けて前進する時である。

わが国も対話と国交正常化に動かなくてはならない

 こうした世界の進展は、アメリカ支配に慣れきって独立の気概を失ったわが国政界やマスコミ、知識層には思いもよらぬことかもしれない。
 安倍首相は、「対価を与えることがあってはならない。引き続きあらゆる方法で圧力を最大限まで高める」などと国会答弁を繰り返し、圧力強化一辺倒である。しかし、慌てふためいてもいる。すでに、河野太郎外相をアメリカに派遣し、トランプの周辺に懇願させた。本人も、4月中旬にも訪米し、トランプ大統領に直接懇願するという。
 不安で慌てふためく安倍首相だが、ワシントンに飛んで行ってもよいことは何一つない。今こそ、制裁を解除して平壌にこそ飛ぶべきだ。内閣の最大課題と言ってきた拉致問題もそれなくしては解決しない。
 制裁強化で緊張をいっそう激化させて戦争の危険を招いて、どうやって国民の生命・財産、安全を確保するのか。自立心のかけらもないようなアメリカ依存派が恐れるように、アメリカが自国に届くICBM開発の凍結・破棄で朝鮮と折り合ったらどうするのか。
 それとも、敵基地攻撃能力を急いで持つなど軍備を増強し、そのためにも憲法改悪を急ぐ必要があると世論をあおるためだろうか。
 金委員長は文大統領に「核兵器はもちろん通常兵器を韓国に向けて使わないことを確約」した。こうした外交こそ今国民が求めているのである。
 野党各党にも、言わなくてはならない。森友改ざん問題もあって窮地の安倍政権を追い詰め、打倒するチャンスである。
 しかしこの期に及んでも、衆参両院で超党派での朝鮮制裁強化の国会決議を見直そうという意見が全く聞かれないのはどうしたことか。むしろ野党の中心を自負する党の幹部からも、「適切な圧力をかけ続ける必要性をすぐに解除する事態ではない」といった発言すらある。米朝首脳会談を「歓迎」した共産党志位委員長だが、「朝鮮制裁強化」政策の見直しなどにはいっさい踏み込んでいない。
 地域の平和と安定、生命・財産の安全を求める国民の期待に応えられないではないか。こんなことで国民世論を結集して安倍政権と闘えるだろうか。
 広範な国民が望んでいるのは、平和であり、隣国との友好的な関係の確立である。南北朝鮮がつくり出したこの情勢はまたとないチャンスである。どの党にも、事態を憂えている多くの党員、幹部、支持者がいる。自民党の中でも変化が進み、中枢の幹部までもが「日本は北朝鮮と対話せよ」と言い始めている情勢である。
 「安倍政権は直ちに朝鮮と対話せよ、国交正常化を実現しよう」の国民世論を広げよう。

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