生活と地域経済の復旧を急げ!
4月14日から熊本県を中心に連続して大地震が起こり、地域住民に大きな被害をもたらしました。
被災されたすべての皆さんに心よりお見舞い申し上げます。
いまなお、5万人近い人びとが、危険で不安定、不便な避難生活を余儀なくされています。せっかく生き延びたのに、対策不十分で「関連死」が後を絶ちません。安定した住居と食料など生活支援緊急対策の抜本的強化が求められます。
さらに今後、生活と営農や営業、地域をどう立て直すか、復旧と復興が課題となっています。一刻も早い被災者、県民大多数のための復興が求められます。
問題は「誰のための復興か」です。政府や県がどのような復興を行うのか、その内容が厳しく問われます。しかし、地震発生後の政府の言動は、どん底にある被災者第1の救援活動とはまったく言い難いものでした。地震を自らの悪政推進に利用することにしか頭にない安倍政権の本性が露呈しました。
振り返っても、東日本大震災、原発事故への対応と復興も国民の願いと裏腹なものでした。
被災者を中心に国民のための復旧復興に広範な力を結集しましょう。
広範な国民連合は、東日本大震災に際して「緊急討論会」を東京と大阪で開催し、「財界支援ではなく、被災者救援、国民大多数のための復興」を呼びかけました(国民連合ホームページ 「タグ: 東日本大震災緊急討論集会」参照)。
しかし、東日本大震災後、歴代政府は復興のためとして一般予算と別に「復興予算」を計上、それを国民への所得税増税などで賄った一方で、企業に対する復興特別法人税は前倒しで廃止しました。その「復興予算」の多くは、大企業の設備投資など被災地以外に使われるなどしました。
被災地でも、被災者の生活と農林水産業など地域経済のための復興策ではなく、大企業の生産復興と「巨大防潮堤」や水産特区での「漁港」復旧などが中心的でした(本誌4月号で「東日本大震災から5年――宮城県の復興の現状と課題」を坂下康子宮城県議会議員が報告してくれています)。
こうした経験から見ても、「誰のための復旧・復興か」は重要な政治課題となります。
被災地と全国で、被災者救援、さらに真に被災者と国民大多数のための復興実現のため奮闘しましょう。また、全国すべての自治体で、阪神淡路大震災、東日本大震災、それに熊本大地震の検証をふまえた、防災対策の抜本的な充実が必要となっています。
(月刊「日本の進路」編集部。なお、熊本市内在住で被災された渡邊浩さんからの投稿を次に掲載)
熊本地震の渦中からの通信
被害は減らせたはず
私の住む熊本市東区、そしてすぐ隣の益城町は、今度の地震で最も大きな被害を受けた地域の1つです。10日たった今も、県下で6万人に及ぶ人が、避難所ですし詰めになり、また、車中で体を伸ばせずに寝て、度重なる余震におびえながら必死に生活しています。
私の知人の1人は、家の下敷きとなって死亡、友人の家が何軒もつぶれ、瓦が落ち、車が壊れ、みんな途方に暮れています。やっと電気とガスは復旧したものの、水道はまだです。私は、益城町に住む両親の家と自宅の市営団地を、道路が渋滞する中、何度も往復しながら、水汲みや、洗濯、食料の買い出しなどと駆けずり回っています。
本当にすごい地震でした。60人の犠牲者、1万軒以上の家屋の損壊を出した今回の地震ですが、被害をもっと少なくすることできなかったのでしょうか。
予測はされていたのです。熊本県で2007年から始まった「建築物耐震改修促進計画」では、九州地域における今後30年以内の大地震の発生確率は30~42%で、とりわけ九州中部の確率が高いとされています。また、震度7の連動型地震で、960人の死者が出ると予測し、「建築物の耐震対策は喫緊の課題」としていました。
そして「2008年の住宅の耐震化率72%を2015年度末までに90%にする」という目標をあげています。しかし、実際は数%しか向上しませんでした。
耐震改修が進まない理由ははっきりしています。「耐震診断」に10~20万円、「耐震改修」には100~200万円かかり、耐震改修が必要な古い家の住人には年寄りが多くて、なかなかお金をかけられなかったからです。
これまでの大震災でも繰り返し経験したことでしょうが、防災や復興支援に当たって誰のために金を使うかが問われているのです。実際に被害にあってその切実さをあらためて強く感じています。
今の政権ではその実現は到底できません。被災者の差し迫った衣食や住居の問題を一刻も早く改善し、将来の不安を少しでも和らげるのが政治家の責任なのに、安倍首相はどうでしょうか。
「政府主導の生活支援」といって派手なパフォーマンスで目立とうとしたり、なにをさておき「原発の安全性」を声高に叫んだり、願ってもないチャンスと考えて米軍のオスプレイを使ったり、官房長官は「緊急事態条項」が必要と憲法改悪を口にしたりと、まったく被災者のことは2の次、3の次にしています。
「政府主導」については、地元からは「どこに何が届くかわからない」という困惑の声も上がり、地元新聞も、もっと「被災者の訴えに耳を傾けよ」と社説で書いています。
政府は、何も分からない状況にもかかわらず、いち早く「川内原発は安全」と宣言しました。稼働継続などとんでもないことです。専門家すら予測できない事態が自然界では起きているのに、最悪のことを考えずに安易に「安全」と叫んでいるのです。
オスプレイ投入は、自衛隊関係者すら「政治的意図と思われても仕方ない」というほどのあからさまなやり方です。安倍首相が23日にやっと被災地を訪ねたとき、ある女性が「ダブル選挙より、被災者の生活を優先して」と言ったそうです。全くその通りです。
ボランティアで若い皆さんが頑張っています。
今は、1日も早く日常を取り戻すことが第一ですが、同時にその中でも、最も弱い立場の人のことを忘れずに頑張りたいと思っています。
(2016年4月25日 渡邊浩 記)