「北海道5区補選のように闘えば野党共闘は全国各地で勝てる」のか?

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「北海道5区補選のように闘えば野党共闘は全国各地で勝てる」のか?

月刊「日本の進路」編集部

 北海道5区の衆院補選(4月24日)では、野党統一(無所属。民進、共産、社民、生活推薦)の池田まき氏が健闘した。しかし、1万2千票差で自民党公認(公明及び日本のこころ推薦)の和田義明氏に及ばなかった。池田支持で奮闘された皆さん、まことにお疲れさまでした。
 補欠選挙とはいえ、「野党は共闘」が叫ばれて以後はじめての国政選挙での野党統一で、自公政権勢力と対峙し争った選挙となって、その結果が注目された。この結果から何を読み取るか。その教訓は、選挙闘争だけでなく安倍政権とのたたかいを進める上で重要である。
 中には、「衆院北海道5区補選のようにたたかえば自公に野党共闘は全国各地で勝てる」という見解まである。本当にそうか?

 池田氏は、和田氏に5区全体で1万2,325票差まで迫った。池田氏は、なかでも札幌市厚別区など都市部で和田氏に勝った。しかし、自衛隊基地があり「自衛隊関係者」が多い千歳市と恵庭市、それに町村部で引き離され、全体としては及ばなかったと言われている(表1)。shinro20160520-01

 しかし、これは表面的な見方である。

 前回14年12月の選挙結果と今回とを比べてみると、自民党とたたかう上での課題を見つけることができる。(表2)shinro20160520-02

 前回は、共産党も独自候補を立てて3万票余を獲得した。それに民主の勝部氏が獲得した票を合わせると12万6,498票で、今回野党統一の池田氏の12万3,517票よりも約3千票多い。今回、「反自民」勢力の得票を減らしているのである。
 「補欠選挙だったから」「準備期間が短かった」などの見方もある。しかし、自民党候補は前回よりも4千票近く増やした。投票率は若干減ったが、有効投票総数は約2千増えている。池田陣営は、自民党と対抗し、競り合って票を伸ばせなかった、競り負けたといわなくてはならない。政党公認でなく、選挙カーが1台しか使えなかったからだなどという意見すらある。
 要因はいろいろあるだろう。しかし少なくとも、「無党派層を引き付けた。あと一歩」という総括では事実を十分に説明しきれない。「無党派層の7割が池田に入れた」とマスコミは報道する。しかし、「新たな」無党派層を引き付けるどころか、前回の民主+共産支持票すらも維持できず、むしろ支持を減らしているからである。
 減った支持の一部は、「新党大地」の支持票もあろう。しかし、それはそう多くないと推察できる(「大地票」は、大雑把に最も多く見ても、自民党が増やした4千票マイナス新らたに投票に加わった2千票の差である2千票と池田氏が減らした3千票との間であろう)。多くの有権者は見抜いている。
 それでも選挙では「弔い合戦」などという要素も、結構な効果があるという。政策とかましてや政権選択とか、まったく関係ない要素も選挙戦を結構左右する。ばかばかしいとはいえ選挙はそうしたものである。今回も、亡くなった町村の自宅がある江別市で、和田氏は町田票から9・9%得票を伸ばしたが(全体では3・4%増)、池田氏は前回の民主+共産票を4.3%減らした(全体では2・4%減)ことなどから推測できる。

 もう少し長い経過でみると、さらに状況ははっきり見える。2000年代の選挙では大方「反自公」勢力が、自民党よりも多くの支持を得ているのである。今回の敗北は、むしろ「例外的」とすら言える。

 以下、さかのぼって結果を見てみると――
 前回14年だけでなく、その前の12年の民主党が政権を失った選挙でも、自民党(町村信孝)が12万8,435票で当選したが、野党の3人(民主、共産、それにみんな)で13万1,522票を獲得している。「反自公」が多数である。
 民主党政権となった09年総選挙では、民主が18万2,952票を獲得し、自民の町村は15万1,448票にとどまった(共産は立候補を見送った)。民主の小林ちよみが圧勝した。
 小泉が、郵政解散で「改革」を印象づけた05年の選挙だけは、町村が17万票余を獲得、民主と共産の野党は合わせても15万票弱にとどまった。
 03年の総選挙では、民主の小林は町村に9,000票弱まで迫った。共産が2万5千を獲得しており、合わせると自民党を1万5千票上回っていた。
 こうしたこと結果、経過である。選挙は勝ったり負けたりだといえばそれまでで、そうも言えないこともない。北海道の中では「保守基盤が強い」と言われる選挙区である。それでも、全体としてみると有権者の中では「反自民」勢力が終始優位に立っている。
 しかも、国民生活の危機がかつてなく深まり、「保育園落ちた。日本死ね」に象徴されるように政治への怒りが高まっている。
 にもかかわらず、野党が怒りを結集できていないことは間違いない。問題はどこにあるのか。

自民党政治への怒りは、自衛隊員とその家族の投票動向にも顕著に読み取れる

 もう少し分析的にみると、重要なことがわかる。
 自民党は、自衛隊票が3分の1以上という千歳市、それに恵庭市で大きく得票を減らしている。8つの市区町村の開票単位のうち、この2カ所だけが票を減らしている(全体では3・4%増にもかかわらず、千歳市は実に6・4%減、恵庭市も0・2%減)。投票率が大きく落ち込んでいる。
 安保法施行が、自衛隊員とその家族に大きく影響していることが読み取れる。池田陣営の「安保法(戦争法)反対」の主張は大きな効果があった。自公政権の安保法強行は、自衛隊員とその家族の政治意識、投票行動に決定的に影響したのは間違いない。南スーダンへ派遣されることが予定される自衛隊員とその家族にとってはまさに生き死ににかかわる問題であり、強い批判・不満の意思を示したのは当然ともいえる。
 しかし、その批判が、池田陣営の得票増に結び付いたとは必ずしも判断し難い。恵庭市では、99票、0・8%増やしている。しかし、千歳市では、2・6%減で全体の2・4%減よりもより減らしている。だから「判断は難しい」ということにとどめる。この問題は、次の「生活課題」の争点化にも、それに、日米同盟の安保法でなくしてどのように国の安全保障を確保するかの野党側の政策不在にもあるであろう。

景気対策、生活問題打開を求めた有権者 

 では、有権者の側はどのように投票行動を決め、今回の結果になったのか。これまた諸方面の検討が必要だが、出口調査の結果でとりあえず見てみる(NHK、共同通信、北海道新聞などが出口調査を行っていて、手がかりになる)。
 政策課題として有権者は何を求め、投票行動に影響したか。働きかける政党、陣営の側はどうだったか。3つの調査とも、大方同じ傾向を示している。
 ここではNHKの出口調査結果を中心に紹介する。
 出口調査で、投票先を決める際に最も重視した政策課題を聞いたところ、いちばん多かったのは「景気対策」で54%。このうち、およそ70%の有権者が自民党候補に投票したと答えた。自民党は「経済を強くすることで社会保障の問題もすべて解決できる」として、景気対策に力点を置いたという。
 一方、池田陣営が最も力を入れて訴えたのは「安保法廃止」である。途中からは、「社会保障」政策を訴えて、「福祉の池田VS経済の和田」が争点となったという。
 しかし、出口調査で、最も重視した政策課題として「安保」と答えたのは「景気対策」の半分の27%。また、池田氏は、シングルマザーとして2人の子どもを育てた経験などを交えて、待機児童問題の解消などを訴えた。しかし、重視した政策課題として「子育て支援」と答えたのは16%。「安保」と「子育て支援」を合わせても、「景気対策」の54%に届かない。
 NHKの解説者は「訴えの面でも、和田さんの主張のほうが、有権者の関心を集めたことがうかがえる」と結んだが、否定できない。

「戦争で殺される前に経済苦で安倍政権に殺される」危機

 投票にさいして「安保法反対」を最優先した有権者はたぶん、よほどのことがない限り今回は池田に投票したであろう。
 しかし、有権者の政策判断基準は、「安保法反対」だけではない。安保法はもちろん重要だが、もっと切実な経済課題、生活課題が山積みである。いま国民の多くが「戦争で殺される前に経済苦で殺される」状況にさらされている。とりわけ非正規不安定雇用の青年層、それに無年金やあっても少額年金の高齢者などは文字通り「殺される」ほど深刻なのである。この人びとに、「そうだ!」と受け止められるような政策は野党側にあっただろうか。少なくとも引き付ける力はなかった。
 農民も、商工業者も、生存を脅かされる営業危機、生活危機で廃業があいついでいる。さらに、TPP(環太平洋経済連携協定)で追い打ちで、「北海道農業、したがって地域経済は壊滅的影響を受ける」といわれている。ところがこれまた池田氏は民進党、連合の政策に縛られたのであろう、「いまの与党のTPPには反対」という態度だった。これでは、農村部では勝てない。
 文字通り存亡の危機に直面した農民を中心に粘り強い反対のたたかいが続いている。TPP反対を言わなくなった農協JA全中だが、地方の県農政連や単協では参院選で自民党候補を推薦しない動きも広がっている。
 世代的に最も生活に苦しいはずの青年層(「貧困世代」という特徴づけさえされているほどである)も、北海道新聞の結果では、自民党候補は20~40代で、野党は50代以上で、それぞれ優位だったという。NHK調査でも「和田氏は30代で60%余りの支持」を得たという。青年層は、必ずしも若い池田に投票しなかった、むしろ自民党を選んだのである。考えなくてはならない。

経済政策と国の進路で明確な対抗軸が求められる

 同様な傾向は、共産党が単独で自公民候補と争った2月の京都市長選でも出ていた。1月の宜野湾市長選結果についても、沖縄タイムス社説は同様の評価を下していた。
 自民党の経済対策であるアベノミクスは、大金持ちや大企業だけが栄えただけ、われわれは貧困化しただけだと、ほぼ誰の目にも明らかとなっている。それでも、野党は経済政策、国民生活問題で対抗軸を立てられていないのである。
 さらに、安保外交政策で野党勢力は、「アメリカと一体化」の対米従属安倍路線に明確な対抗軸を持てないでいる。野党各党は「安保法」は「戦争法」などといって批判している。それは当然であるが、多くは日米同盟の枠内での批判にとどまっている。これでは事実上、自公路線と同じである。真の対抗軸が問われている。
 選挙で勝つうえでも、ましてや労働者や農民、商工業者など広範な国民の連合で国民運動を発展させて政治を変えようとすると教訓に満ちた選挙結果といえる。

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