いったい財政は何に使われているのか?
このレポートでは、自治体の課題対策度を示す一つの指標として15歳未満の児童1人あたりの児童福祉費を用いている。
都道府県別の課題対策度、課題深刻度の試算結果を整理したものが図6である。
マトリクス図で、平均値である偏差値50を境界線として、4象限に区分している。左上の象限Dに位置している都道府県は、「全国平均より課題が深刻であるにも関わらず、全国平均より予算支出が低い」ということを表している。象限Dに位置している都道府県は、北から北海道、宮城県、埼玉県、神奈川県、兵庫県、奈良県、和歌山県、岡山県、愛媛県、沖縄県となっている。
特筆すべきは、課題対策度と課題深刻度の関係であるとレポートは指摘する。「子どもの貧困が深刻である地域ほど、児童福祉費の支出が高い」という仮説が成り立つ場合には象限Aから象限Cにかけて帯状に各都道府県が位置するはずであるが、図4からはそれが読み取れない、という。これらの自治体は、平均的な対策すらおこなっていないのである。
「深刻度に比して児童福祉費が少ない」ことは間違いない。では、自治体財政は、何につかれているか?レポートは「行政が子どもの貧困の実態を十分に把握していないために、実態と乖離した状態で対策を行なっていることが考えられる」という。
自治体財政についてもう一歩踏み込んだ分析が必要である。
子どもの貧困率と非正規労働率は深い相関関係にある!
月刊誌『KOKKO』編集者・井上伸氏は、都道府県別の「子どもの貧困率」は子育て世代の「非正規率」とつながっている、過去最悪の非正規率へ更新し続けるアベノミクスが子どもの貧困をいっそう深刻化させる、と断言している。グラフをみると相関関係は疑いない(グラフ7)。
氏は言う――。
一目瞭然。子どもの貧困と非正規問題は密接に関連していると言っていい。ちなみに、子どもの貧困率がこの20年で倍になったとのことだが、厚労省によると、1989年の非正規率が19.1%、94年が20.3%、そして2012年が35.2%と、この20年で非正規率もほぼ倍化しているということにも符号している。
直近の総務省「労働力調査」を見ると、2015年12月の全体の非正規率は38.1%と過去最悪となっている。年齢階層別のデータは、13年1月のデータで、15~24歳の非正規率は49.1%、15~34歳は25.7%。そして、直近の15年12月には、15~24歳の非正規率は52.71%、15~34歳の非正規率は28.1%と、全体の非正規率 と同様、アベノミクスによって若年層の非正規率も過去最悪レベル。
今回発表された「子どもの貧困率」は、2012年のもの。上のグラフで見たように、若年層の非正規率と子どもの貧困率が比例してい ることを考えると、この間のアベノミクスによる若年層の非正規率アップが、子どもの貧困率をさらに悪化させてしまっていることは容易に想像がつく――と。
貧困の連鎖、子供の貧困は、親である労働者の急速な窮乏化の結果である。女性、青年層労働者の大半が低賃金、不安定雇用となった現実こそ、子供の貧困急増を引き起こしている。
(了)