沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム(続) ■ 羽場 久美子

「沖縄平和のハブ宣言2022」

青山学院大学名誉教授 羽場 久美子

 本日ここに集われました沖縄、日中韓、地域自治体、若者、すべての皆さま、ありがとうございます。日中韓と沖縄の3カ国+地域の方々による「沖縄を平和のハブに!」をめざす国際会議にふさわしい会合となりました。
 玉城デニー知事はご病気で来られませんでしたが、「沖縄を平和のハブに!」を積極的に推進するごあいさつをいただき、元内閣総理大臣鳩山友紀夫先生からもごあいさつと問題提起をいただきました。


 中国社会科学院の楊伯江先生、韓国ポリテク大学の朴相鉄先生、琉球大学名誉教授の上里賢一先生、ジャーナリストの屋良朝博さん、沖縄を未来につなぐ若者たち、自治体議員や参議院議員の伊波洋一さん、中国の黄星原さん、本当にありがとうございました。
 3月、玉城デニー知事と沖縄県が主催された沖縄会合で、私は「沖縄を平和のハブに!」を提言し、それが週刊金曜日と、韓国のプラットフォームCというオンライン新聞に掲載されました。
 それを踏まえ本日、第1回の「沖縄を平和のハブとするアジア対話」の場を現実化できたことは、歴史的にも素晴らしい対話の第一歩となりました。主催者の皆さまに感謝申し上げます。東アジア共同体研究所琉球・沖縄センターや広範な国民連合の方々、未来を創る若者たち、日中韓沖縄の参加者すべての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。「沖縄を決して戦争の地としない。平和と友好のハブとする!」という決意、特に若者のパワーに触れ、感動しております。

「アジアにおける平和と安全保障の話し合いの場」を市民の手で!

 「沖縄平和のハブ宣言2022」として3点を示したいと思います。
 第1は、今こそ「アジアにおける平和と安全保障の話し合いの場」を築く、今日スタートする、ということです。1975年、冷戦の最中に、欧州で「ヘルシンキ宣言」として出されたCSCE(欧州安全保障協力会議)/OSCE(協力機構)のように、市民の手で、平和のハブを沖縄に、継続的・恒常的につくり上げる。今回の会合はその第一歩となります。
 欧州では冷戦期に、東西の双方の国や地域を呼び、意見の違いや体制の違いを超えて、平和と安定について話し合う場がつくり上げられました。「会議」は冷戦後「機構」となり今もロシアやバチカンまで含み平和の要として活動しています。冷戦期に、市民が立ち上げた対話の場が、平和の要となったことは大きな意義があります。
 ヘルシンキ宣言のように私たちも、「沖縄平和のハブ宣言2022」を今日から実現したいと思います。ぜひご協力、ご承認ください。
 沖縄は、歴史的にも近隣国と一度も対立したことがない、豊かで温和な地域です。自然も文化も多彩で、中国や朝鮮半島、台湾や東南アジアまで、深いつながりをもって発展してきました。基地の島でなく、アジアを結ぶ平和の島なのです。市民の平和と環境保全を願う沖縄こそ、対話の場としてふさわしいのです。平和の島に基地を広げ、戦争の最前線とするなど、言語道断です。
 2022年を「沖縄平和のハブ宣言」第1回の場とし、毎年皆さまと対話を継続し「アジアの国連」をつくっていきましょう! 体制が異なり意見が異なっても、平和と対話と繁栄を維持し、世界に発信する沖縄として、22世紀への100年を、つないでいきましょう!

東アジアでは絶対に、再び戦争をしない!

 二つ目は、そのためにはやはり「東アジアで絶対に、二度と戦争をしない!」ということを、皆で誓い実現しようということです。
 戦争は極めて小さなきっかけで起こり始まったら止められません。
 20世紀の二つの世界戦争、第1次世界大戦も第2次世界大戦も、大変小さなきっかけから起こりました。第1次大戦は、19歳の青年ボスニア党の青年が、偶然道を間違えて路地に入ったハプスブルクの皇位継承者をピストルで撃ち暗殺したことから始まりました。その小さな事件がハプスブルク帝国の戦争参加を呼び、戦争が欧州に、そして世界に広がりました。
 広がった戦争はもはや止められません。4年4カ月続き、欧州の4大帝国(ロシア帝国、ドイツ帝国、ハプスブルク帝国、オスマン帝国)がすべて崩壊し、終結しました。
 第2次世界大戦は、ドイツのソ連侵攻によって始まります。それは1938年のミュンヘン会談で、英仏がドイツを西側に、アルザス・ロレーヌに向けさせず、チェコやソ連など東方に向けさせ、ドイツ・ソ連双方を弱体化させて、「漁夫の利」を得ようとしたところから始まったのです。
 現在、ロシアのウクライナ侵攻が2022年2月にあり、東では「台湾有事」がアメリカによって煽られています。ウクライナ・台湾どちらにもアメリカから大量の武器が配られ、日本も防衛費を2倍に増強しようとし、欧州も武装を強化して、その結果、アメリカの軍事産業は空前の儲けを生み出しているといわれます。誰が儲かり誰が犠牲になっているのか、それを深く知ることが重要です。
 ウクライナ戦争、「台湾有事」を第3次世界大戦の火種にしないためには、ロシア・ウクライナ戦争を可能な限り早期に終結させること、東アジアで台湾、尖閣諸島、南シナ海などの小競り合いの事件から戦争を絶対に起こさせないということが極めて大事です。
 台湾で戦争が始まれば沖縄と日本が、台湾・中国の戦いの最前線となります。絶対にそれはさせない、憲法改正も防衛費2倍増額も、決して許してはならない、という決意が重要です。

経済中心の地域協力

 三つ目は、朴先生も言われた、経済を中心とする地域協力の重要性です。あと10年で中国経済がアメリカ経済を抜く、20~30年もすれば世界の1位・2位・4位をアジアの中国、インド、日本が占める時代になる。これらの国々が協力して平和と繁栄を築く。軍事力によってではなく、アジアの経済協力によって、和と繁栄の力によって、世界を平和と安定に導くことが求められています。
 現在RCEP(東アジア地域包括的経済連携)やCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が大きな発展を遂げています。日本・中国・韓国・インド・そしてASEANで、36億人、世界の半分を占める地域協力の経済圏が世界を繁栄させ、幸せにしていく、発展していくハブになるのです。
 アメリカ一国の覇権は、あと10年もすれば中国と入れ替わる。あと30年もすればインドにも抜かれ3位に落ちてしまうという現実の中、それを押しとどめるために、世界最大の軍事力と軍産複合体によって、戦争の緊張を生み出していることを忘れてはなりません。
いま中国を敵視して日中、中印、中台の対立を煽っているアメリカは、欧州でのロシア・ウクライナの「兄弟殺し」に続き、東アジアでの中台・日中の「兄弟殺し」により漁夫の利を得ようとしています。それは、第2次世界大戦の独ソ戦をけしかけた英仏と同様です。
 とても重要なこととして強調しますが、沖縄は周りすべての国々や近隣地域と、歴史的に仲がいい。決して近隣国と戦争などしてきませんでした。
 先ほど伊波さんが平和な王朝の時代が450年続いたと言われました。それはおそらく、武力を持たず、あらゆる周りの国々と仲良くしてきたからこそ、平和が続いたのです。その美しい素晴らしい平和の沖縄に、基地を置く、拡大するというようなこと、あるいはここからミサイルを中国に向け発射する、中国のミサイルを迎え撃つということを、絶対に許してはならないと思います。
 日本が世界から信頼されているのは、憲法9条があり戦争を二度としない平和の国とみなされているからです。世界で唯一、市民の上、都市の上に、投下された核爆弾を、広島、長崎に次いで、3度目の核ミサイルを、沖縄や東アジアの市民の上に落としてはならない。これを、皆さんと共にはっきりと誓いたいと思います。
 戦争を嫌い、平和を願う市民の皆さま、沖縄の県民、自治体の皆さま、世界と未来と結ぶ若者たち、日本・中国・韓国、そして東アジアのすべての皆さまと共に、沖縄から、私たち一人一人から、平和と対話のネットワークを生み出していきましょう!
 ぜひ共に、若者たちと共に、未来に向けての、アジアの平和のハブをつくりましょう!
 ありがとうございました。

(本稿は、シンポジウムのまとめ発言に筆者が加筆したもの)