沖縄の日本復帰50年

沖縄問題は、本土の問題、日本政治の問題

元自民党幹事長 山崎 拓

 沖縄が復帰してから50年もたつわけです。しかし、今も、基地負担が大きくのしかかっている。本土の政治家として、そのことに深く責任を感じます。
 「オール沖縄」の勢力で県政を担っている玉城デニー知事が、その解決を求めるのは当然です。普天間基地の辺野古への移設について反対だというのは、県民投票などで示された県民の意思、総意であるわけで、県政を預かる知事がそれを進めるのは民主主義から言っても当然です。そこは私も理解します。


 しかし今、政権は自民党、公明党が担っています。普天間基地の辺野古への移設をなんとしても進めるという立場です。軟弱地盤が発覚し、県は工事を中断せよと行政措置を執ろうとしても、政権はそれを認めない。あくまで工事を続けようとしている。この対立は、解決の見通しがない状況です。工事完了には少なくとも10年はかかると言われる。

 ですから残念ながら、沖縄の県民にとっては引き続き大変な状況、納得しがたい状況が続きます。すなわちその間、普天間基地は返還されないままでしょう。

激変の情勢で外交を進める指導者が求められる

 そうした中で、ロシアのウクライナ侵攻、これがどういう状況となるか。プーチン大統領の暴挙ですが、国際情勢に大きな影響を与えたことは間違いない。

 これに伴って台湾海峡情勢も緊張していくだろうということが公然と論じられるようになった。2月24日のロシア軍の侵攻で、それ以前とは国際情勢は変わってしまった。

 私はそれ以前、「(普天間基地の)危険も除去されず、跡地開発による発展にもつながっていないのに、県民に納得しろという方が無理な話だ。最大の目的である危険除去を優先させ、普天間返還を求めるならば、岸田文雄首相はバイデン米大統領と直接会い、グアムへの一時移転を頼むしかないだろう」と言っていました(「毎日新聞」2月21日)。

 しかし、この現今の安保情勢激変で私は考えを変えないといけないのかなと、今は思っています。普天間基地の米軍・海兵隊は東アジア軍事情勢に重要な役割を担っています。どうしても当面、現状固定的にならざるを得ないかなと思っています。負担軽減をどうするかももちろん重要ですが。

 国際情勢は、大国の指導者次第という側面が強い。ロシアも中国も、この先10年くらい指導者が代わらないとすれば、軍事的緊張の国際情勢は変わらない可能性が強いと思います。アメリカもどうなるかわからない。そういう時代認識を持たざるを得ない。今年の1月や2月の状況と違うということです。

 しかし、沖縄問題は国内問題です。沖縄だけに負担を押しつけていいのか。本土側の課題です。特に、かつての戦争で、沖縄県民に多大な犠牲を押しつけた歴史があるわけで、その反省の上に立って日本の政治が行われる必要があることは当然だと思います。
 当面、外交努力が重要ですが、それがやれる指導者がいるかどうかです。

 いずれにしても国際情勢があまりにも緊迫している状況があるわけです。そういう中で沖縄問題を考えていかないといけないと思っています。

自衛隊と「台湾軍」との直接的連携はあり得ない

 だからといって、「台湾有事」は「日本有事」という言い方での前のめりはダメです。

 「台湾軍と自衛隊が連携して作戦行動」などというようなことまで言われるようになっています。そんなことは憲法違反でしょう。日本が集団的自衛権を行使するとすれば、いろいろ意見はありますが、限定的ですが米国とだけでしょう。

 自衛隊は、「台湾軍」とは一緒に戦争はできません。田中角栄首相が、日中共同声明で「台湾は中国の一部」という中国の立場を十分に理解し尊重すると約束し、国交を実現したわけです。日本は、残念ながら台湾の「独立」を認めていません。もしも台湾と中国が戦争になっても、台湾軍と自衛隊の共同作戦などということはあり得ない。国際法上もあり得ないし、日本国の憲法も許さないわけです。

 私は心情的には台湾支持派ですが、わが国の自衛隊が台湾に行って、「台湾の軍隊」と一緒に戦うなどということができるはずがないと考えています。ただし米軍が台湾海峡の安全を守るために軍事行動を行う場合は、自衛隊が後方支援をすることは可能です。

 アメリカだって、「台湾関係法」はありますが、台湾を国家とは認めておらず、外交上「あいまい」にしています。厳密に言うと米台は軍事同盟関係ではない。ウクライナに対しても、NATOの一員ではないという理由で、軍隊は送らず武器供与のみにとどめてロシアとの決定的対決は避けている。したがって台湾海峡危機で、米国が中国と戦うことになるかどうかは不透明です。

 私は、基本的には「日米同盟+日台中協商」が一番よいと思っています。しかし、中国の習近平主席の考えには柔軟性がないように見えます。今の日本には、中国にもロシアにも、あるいはアメリカにもはっきりと主張し渡り合える指導者が必要ですね。かつては田中角栄首相とか、中曽根康弘首相など「胆力」のある指導者がいましたが。

 いずれにしても大変危険な国際軍事情勢にあるわけですから、中国が台湾問題を平和的に解決するよう日本が導いていければ理想ですが。それをやれる政治家が日本にいるのかどうかですね。

「非核大国」としての日本

 安倍晋三元首相の核共有論にも私は反対です。これは持たず、作らず、持ち込ませずの「非核三原則」に反する。私はこの原則を堅持するという岸田首相の発言に拍手しています。

 日本は唯一の原爆被爆国で、NPT(核兵器不拡散条約)締約国です。「核共有」という形での「核保有」でも、NPTから脱退すべきです。NPT体制を否定して、核廃絶の主張をやめれば、平和主義の理想がないではありませんか。

 日本は技術的には核兵器を作る能力があります。しかし、日本が核保有したら、世界中への核拡散につながりかねません。
 日本が核武装して北朝鮮と核を撃ち合う戦争をしたら、世界中に波及して人類は破滅の危機になります。

 北朝鮮に対して朝鮮半島の非核化を求めているのに、日本が核保有することは矛盾しています。日本は世界平和のために、「非核大国」として発言し行動すべきです。
 

(インタビューは4月15日。見出しとも文責編集部)

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