特集 沖縄「日本復帰」50年  新垣 邦男

改憲より地位協定改定が先だ

衆議院議員 新垣 邦男

復帰闘った親世代の思い

 今年復帰50年を迎えますが、当事、私は高校に入ったころです。復帰前の運動の印象は強烈にありますね。沖縄が日本に復帰するんだということで、大人たちが頑張って運動を進めていましたから。
 実は父が教員で、戦前も教員をやっていました。厳しい親でしたが、戦時中の教育に忸怩たる思いがあったのかもしれません。東京で学生運動の影響を受けた兄が帰ってきたときに、若気のいたりでえらそうに父を問い詰めても、父は全然反論もしないし何も言わないんです。でも、なんとなく寂しそうな顔でいたことを覚えています。

 戦争でたいへんな思いをしてきた親の世代が復帰を非常にめざしてきた。日本に復帰したら憲法下で守られるという理想をみんなもって復帰したはずなんですね。車も右から左側通行になるし、大きな変革もありました。県民みんなが希望をもっていたと思うんですね。日本に復帰したら米軍にいいようにやられないだろうし、人権もしっかり守られるだろうという思いで。いつまでも虐げられている沖縄ではなくなるんではないか、基地も減っていくんだろうという思いだった。
 ですが、とんでもない。私も成長していくにつれ分かるんですが、「あれ? だんだん違っているんじゃないの」という思いを抱くわけですね。
 私は小さな村の首長もやってきたんですが(北中城村長を4期16年務める)、確かに社会資本整備、空港、道路は整備されてきました。それで沖縄県民の所得は上がってきたのか? 生活は楽になったのか? 決してそうではないですよね。特に基地問題、まだ70%の米軍基地が沖縄にある。そして連日爆音、騒音に悩まされて、最近はPFOS(ピーフォス)など環境汚染問題も出てきた。事件、事故は毎日のようにあり、米軍の訓練も多くなっている。振り返ってみて、50年たっても何も変わってないんじゃないかと思うんです。

どこかおかしい国会

 今回(2021年総選挙で衆院議員初当選)、初めて国会に来てエッ!とびっくりしたのは、沖縄問題をだれも語らないし、基地問題をほとんどだれも言わないということです。沖縄の問題というのは日本全体の縮図だとずっと思ってきました。当然これは国会で語られているだろうけども、私も沖縄選出の議員として言わなければいけないと思って来てみたら、だれも何も言わないんです。
 私は憲法審査会、安全保障委員会、沖縄北方特別委員会の三つの委員会に入っていますが、憲法審査会は毎週木曜日に開かれます。そんなに開いて何の議論をするんだろうと思っていたら、メンバー50人のほとんどが憲法を変えるべきだと言うわけです。自民党、公明党だけかと思っていたんですが、維新も国民民主の皆さんも非常にあおっているんです。私は立憲会派に入っていますが、立憲民主は基本的には反対だけれども、毎週開催に合わさないといけないような状況なんでしょうね。
 最初に憲法審査会に参加したとき意見表明の機会を頂いたのでありがたく発言しました。「憲法を変えるなんて沖縄じゃそんなことはだれも言ってないし、憲法を変えるより国家主権を貫けない日米地位協定を変える方が先じゃないか」という話をしたんです。それから毎回意見を言わせてもらっているんですが、雰囲気がへんなんです。私がものを言ったらみんなしらけて、なんだあいつはというような顔をする。私が言っていることがおかしいのかなと、悩んでしまいます。
 でも、そうじゃないでしょう。憲法というのは権力者をしばるもので、権力者を野放しにしないために憲法がある。本来は国民から改憲の声が上がってきて初めて変えるべきでしょう。ところが権力者である国会議員が自ら憲法を変えたいと言っている。ウクライナにロシアが侵攻してたいへんだから、憲法を変えるべきだという話をしている。それこそまちがいじゃないですか。ウクライナの戦争を見たら、憲法を変えちゃいけないと思うのが普通でしょう。
 国会はどこが与党でどこが野党なのかよく分からないような状況です。大政翼賛会になるんじゃないかという心配をしています。健全な野党がいないとまともな与党にならないし、まともな与党がいないとまともな野党もいなくなるんです。

ゼレンスキー演説に感動?

 ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで国会で演説しましたが、国会で演説していいのか?と私は思ったんですね。ロシアが侵攻するのはもちろん悪いですが、しかしウクライナも争っているわけだから、国会が当事者の一方だけを呼ぶというのはいかがなものかと思います。国会議員の先生の中には「感動した」と言う人もいて、それにはびっくりしたというか愕然としましたね。ゼレンスキー大統領のメッセージはほんとうに危ういと思うんです。戦争で人が死んでいるんです。これはもう戦前回帰です。日本もそうして太平洋戦争に突入し、沖縄戦で二十数万人が亡くなった。沖縄戦のほうがひどいですが、今のウクライナの状況も同じです。
 原爆が落とされたという国で、戦後77年たつとこうも変わるのかと、私には信じられないです。国会の先生がたには申し訳ないけど、もう一度原点に返って議論すべきではないかと。一年生議員の私が言うのは失礼かもしれないですよ。でもね、それがどんどん助長されていく今の世の中、今の政治、これはいったいどこに目を向けているんだろう。ましてや前総理が核共有論とか軍事費6兆円をさらに増やせとか、敵基地攻撃は基地に限定せず中枢でもいいみたいな話をするわけですよ。日本は何を学んできたんでしょうか。
 昔は自民党の皆さんの中にも憲法を変えちゃいけないと言う人たちがいたわけですよ。自民党のある議員さんが「田中角栄先生は、戦争を知っている俺たちがいれば大丈夫だ。それ以後はこの国は危ないと言っていた」と言っていましたが、なるほど、よく見ているんだなと思いましたね。
 今、日本という国の立ち位置を政治家がしっかり認識しないとまた道を誤る。だから、ぜひそのことを訴えていきたいですね。

戦争あおる危険な雰囲気

 今100歳超えて施設に入っている母が、80歳ころに言っていたことを思い出します。母は「太平洋戦争をする前も反対する人たちは多かった。しかしそれを政府が取り締まって、声が消されていって、結果的には国民が戦争するのは正しいんだという機運になっていった。ちょうど今と似ているよ」と言っていたんです。まさにそのことが現実になろうとしている。戦前に戻る始まりじゃないかなと非常に危機感をもっています。
 今度の参議院選挙で政権与党が大勢を占めて衆参3分の2を改憲派が確保したら国民投票になり、「2分の1の賛成で憲法が変えられてしまいますよ」と訴えているんです。陣形を考えないとたいへんなことになる。
 政治家が憲法を変えて戦争できる国にしたいという思いは、いったいどこから出てくるのか。戦後、憲法を変えるんだという人たちはずっといたのかもしれません。それが根っこにある人たちは時代とともに大きくなっていって、あたかもそれが正しいんだというふうな雰囲気になりつつある。戦争をあおっているかのようなベテランの自民党議員は、これが当たり前の対応だと言うかもしれないけど、歴史に学べばだれが考えたってそういうことはないと思うんですよ。戦争はやらないことが大事であって、やってはいけないんです。
 日本は島国でそんなに戦力があるわけではない。資源もあるわけじゃない。そこで日本が戦争をし、あるいは巻き込まれたら日本全体がなくなるということが目に見えてるわけですよ。これは太平洋戦争を振り返れば一目瞭然なのに、なぜこんなにあおるのかなと。私は非常に不思議で、この理不尽さをどう訴えていけばいいんだろうという思いですね。

軍事より外交が大事

 私は空手を長年やっているんですが、先生に教えられるのは、「空手は勝つ必要はない、負けなければいいんだ。だから闘う前に逃げろ。強くなれば強くなるほど手を出してはいけない」ということです。それを「平和の心」「武の心」というんですね。空手は自己鍛錬であるし、精神修養なんです。でも、初めて初段で黒帯を締めたときに、自分は強いと思ってやりたくてしようがなくなるんです。さらに鍛錬して力をつけていき、空手のほんとの怖さ、奥の深さがわかるようになってきたら、もう自分から手を出しません。
 日本は軍事を増強して核を持ったら平和になるんでしょうか。プーチンみたいな人が日本の総理として出てくる可能性は大いにあるわけですよ。だから日本の場合はていねいな外交が大事だということをしっかり肝に銘じなければいけないと思います。
 今、多くの皆さんが「台湾有事」と言っているけど、私は有事にはなってないんだから「台湾問題」という表現にすべきだと思っています。中国国内の問題をなんで日本が騒ぐんですか。それは間違っていると私は思っているんです。中国が台湾にいきなり武力行使することはないと思います。自民党にも反対したい人もいるでしょうけれども、なぜ声を上げないのかな。なんでそこまですり寄っていかなくちゃならないのか。
 日本は戦争をしないんだ、外交の話し合いの中で友好的にやるべきだというのが私の思いです。特にアジアとは歴史的にいろいろあるわけだから、尊敬される日本じゃないとだめだと思うんです。自分たちの立ち位置をしっかり見つめなおして、足場を固めてどこに向かっていくのかということを政治家がしっかりやらないと。政治家の責任が非常に重いと思うんです。

オール沖縄力で自立めざす

 今回の沖縄振興計画、与党からは復帰50年を迎える沖縄はもう自立してもいいのではないかとの声も上がっています。それは一理あるかもしれない。私は基地をなくしてくれれば自分たちでやりますよ、基地はそのまま置いていて自分たちでやれという話は通らないでしょうということを言いたいわけですね。ただ補助金はザル経済と言われてほとんど沖縄に残らない。公共事業もほとんど吸い上げられてしまう。財源が沖縄に残る制度をどうつくっていくかということは重要な課題だと思います。
 これから沖縄が自立していくことを考えると、確かに沖縄県内にも課題があります。県民の欲のなさというか県民性もあるかもしれませんが、それを政治でどうひっぱっていくのか。農林漁業などの第一次産業を大事にしてそこに人材と資金を投じていくことも重要な課題だと思っています。
 復帰からの50年を振り返り、未来に向けた50年というのを自分たちで新たにつくっていき、60年後、70年後の沖縄を描いていく。そのために沖縄選出の国会議員は与野党を超えて本音の話し合いも必要じゃないかなと思ったりもするわけですよ。自民党の皆さんは言えない部分があるかもしれないけど、その分われわれが言うからバックアップしてほしい。そうじゃないと、そのまま流されていくような気がして心配なんです。政治家が先頭に立って、知事や県議会の議員さんたちもいっしょになって一致点を見いだすことが、「オール沖縄力」を強める意味でたいへん重要ではないかと思っています。

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