ロシアは即時撤兵せよ 米国は火に油を注ぐ武器支援をやめろ

日本は即時停戦のため、中印はじめアジア諸国と共に動け

本誌編集長 山本 正治

 ロシアの軍事侵攻から早くも2カ月が過ぎた。ウクライナの国家主権と領土一体性を乱暴に破壊し、何よりも毎日多くの国民が命を落とし傷つき、日常を奪われ、祖国を後に難民となっている。プーチン政権の蛮行はいかなる意味でも許されない。
 わが国は、停戦と紛争の平和解決のために力を注ぐべきだ。

世界の大勢は「一方の側につかない」

 戦争の惨禍に苦しむウクライナ国民へのさまざまな人道支援は当然だ。

 だがわが国政府は、ウクライナに防弾チョッキなど軍事物資を送ったにとどまらず、林外相は4月8日、NATO外相会談に出席しロシアを攻撃した。この岸田政権の対応が、武力の行使を「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」した、わが国憲法違反であることは明白である。
 国連総会は4月7日、米日欧など58カ国が共同提案した3度目のロシア非難(国連人権理事国資格停止)を決議した。しかし賛成は93カ国にとどまった。「人道状況」の3月24日の決議と比べ、反対は24カ国で前回の5カ国から約5倍となった。39カ国が賛成から棄権に回り、反対と棄権は計82カ国で、無投票も合わせれば100カ国と賛成を上回った。
 「国際社会」はロシア非難一色ではない。とりわけアジアでは中国、インドだけでなく、インドネシアやタイなどASEANの8カ国も反対ないし棄権。賛成は日韓など少数である。
 日本は中国やインド、ASEANなどアジア諸国と共に、ウクライナ停戦のために役割を発揮すべきだ。国家間の利害対立が著しく激化した力の激突の世界で、わが国がアジアで平和に生きていくためにも不可欠だ。

衰退する米国の悪あがき

 だが、真の問題解決はそれにとどまらない。
 フランス有数の知識人、エマニュエル・トッドは、「戦争の責任は米国とNATOにある」と断罪する。「米国はウクライナ人を〝人間の盾〟にしてロシアと戦っている」「ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊で、その意味で、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突している」と喝破する(『文藝春秋』5月号)。
 そして冷戦崩壊以後30年間の米国のねらいについて、「ウクライナなしにロシアは帝国にはなれない」との戦略判断で、ウクライナと対立させてロシアの力を削ぐことを一貫して追求してきたと指摘する。衰退する大国アメリカの悪あがきだ。トッドは、「欧州を〝戦場〟にした米国に怒りを覚える」と悲憤する。そして欧州での「ロシア嫌い」の高まりは米国の戦略的成果と見る。同じことをアジアの対中国でやられてはならない。
 しかも、この戦争に笑いが止まらぬ連中が米国にはいる。
 米国・ヒックス国防副長官は米軍事企業の幹部を集め、装備品の確保に協力を要請した。ロシア侵攻後の米国の支援額は25億ドル(約3135億円)超で、ウクライナの2020年の軍事費59億ドルの4割超に相当。供与する装備品は米国の在庫から供出しており、5500基超を供与する対戦車ミサイル「ジャベリン」は、在庫の3分の1近くにも上ると指摘される。(「読売新聞」4月15日)。
 「需要」不足に苦しんでいた軍事企業に莫大な利益をもたらしている。ロシアでも同様だろう。両国は、世界1、2位の武器生産大国である。トッドは、「戦争はもはや米国の文化やビジネスの一部」と断罪する。
 日本は停戦に全力をあげなくてはならない。自主的にアジアの平和共生をめざす選択の時だ。

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