「食料安全保障、農業と農民を守る」今井 和夫

市独自で反当たり8000円を支給

宍粟市議会議員 今井 和夫

 当市でこの冬に行われた稲作への支援についてご紹介します。
 このあたりのコメの単価は最近まで、農家からの買い取り、あるいは農家が直接売るなどの場合、30‌kg当たりおよそ7500円~8000円(コシヒカリ)が相場でしたが、今年はコロナ禍の影響下、買い取り価格が1000円ほど下がっています。これは、1反(10‌a)当たりにすると、1万5000円ほどの減収になります。


 それを支援するために、このたび、わが宍粟市では、販売農家に対して、自家用米分としての1反(10‌a)を差し引いた残りの水稲耕作面積に対して、1反当たり8000円を農家に支給しました。
 宍粟市は人口約3万6000人、面積は淡路島より少し大きいくらいの市です。それで、対象農家戸数は約1700戸、費用は約5000万円でした。平均して、1軒当たりの耕作面積が4・7反で、1軒当たり約3万円の支給となりました。
 財源は、国からの新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金です。
 昨年末に実施されましたが、反当たり8000円を全農家にというのは、他の市町ではあまりないらしく、その後、問い合わせも多くあったそうです。
 あらためて書きますが、今の日本のコメ作り、特に、中山間地域におけるコメ作りは、年金農家で成り立っています。つまり、コメの売上代金は生産にかかる経費がようやくまかなえるだけで、人件費は年金(あるいは兼業)でまかなっています。つまり、1袋(30‌kg)8000円の販売価格で、苗代、肥料代、農薬代や機械代がちょうどカバーできるだけで、人件費はまるでゼロ。むしろ、赤字になるのが実態です。
 にもかかわらず、このコロナ禍で米価はどんどん下がっています。当地のような中山間地域では、農協出荷よりも直接販売する縁故米の割合が大きく、そこまで値下がりはないかもしれませんが、むしろ、平地の大規模農家の方が打撃は大きいのではと思います。1袋5000円を切るところも出てきているようです。
 本当に、皆さん、真剣に食料自給について考えてください。このままでは、大規模農家が次々にやめていきます。中山間地域の年金農家ももちろん年を取れば消えていきます。
 私が議員になった5年前、宍粟市の水稲面積は960haくらいでしたが、今は約800ha。この減少の勢いはますます加速します。日本人はコメを食べなくなったから今はちょうどいいくらいかもしれませんが、その分、小麦、大豆、家畜の飼料などの輸入がどんどん増えて、ますます外国依存です。しかも、農薬・遺伝子組み換えまみれ。ホントにどうするのですか?
 今回のわが市の反当たり支給8000円。焼け石に水、来年は何の見通しもありません。それでも年金農家の方は非常に喜んでおられます。「市に少しでもコメ作りを応援する気持ちがあったんだ」と。ホントに誰も支援してくれない中、今、農家の方々は「あと何年で終わりかな~」と思いながら作っています。こんな国に未来はないです。
 前も言いましたが、全国すべての中山間地の水田に反当たり10万円を補助するのに約9000億円。それで、若者が専業でコメ作りができます。それで限界集落はなくなり、すべての地方が維持されるのです。3~4兆円で日本の農業と地域はしっかりよみがえるのです……。全国的な動きをつくっていきましょう。