「国際協調」演出のG7サミット

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「対中国包囲網」で最後の悪あがき

本誌編集長 山本 正治

 G7サミット(「主要7カ国」首脳会議)がイギリスで6月13日まで開かれた。「民主主義国」が結束して中国に対抗していく決意を確認したと伝えられる。トランプ時代と違って、形の上では「協調」が世界に印象づけられた。バイデン米大統領は「満足している」という。

 当然にも中国は、「人為的な対立と分裂を作り出した」と激しく批判した。

 わが国菅首相は、バイデンと連携して、「首脳宣言」への対中国攻撃の文言明記に腐心し、終了後、「国際秩序をリードしていきたい」などと高揚感を示したそうだ。

 しかし、7カ国は同床異夢で「結束」には程遠く、しかも各国は国内対立が激化してかつてなく不安だ。最近とみに中国攻撃を強めている日経新聞は、G7連載のタイトルを「背水の再起動」とした。最後の悪あがきを自覚してもいるのであろう。

 菅政権の対米追随の中国敵視は時代錯誤と言うしかない。

包囲網をつくっても「少数派クラブ」

 「首脳宣言」は、「東・南シナ海」「台湾海峡」「新疆ウイグル」、さらに「一帯一路」や「ワクチン外交」への対抗策等、英文25ページに及ぶ包括的な内容で、初めて「中国」が明記され、対抗していく「協調」のかたちが示された。つづいてバイデンが参加したNATO首脳会議は、中国を「体制上の挑戦」と位置づけた。G7はトランプ前大統領の時に「機能不全」となっていたから、G7は「民主主義諸国の結束を示した」(読売新聞社説)などとわが国でも期待する向きも多い。だが、「対中国の包囲網」などと言ってみても、アメリカとG7にはもはや昔日の力はない。かつて第1次石油危機に際して対ソ戦略を進めたG7だったが、今日、世界のことを決める力はもはやない。G7は、衰退する欧米大国の集まりにすぎない。

 7カ国のGDP(経済実力をより適切に表す購買力平価換算)を合計しても世界の3分の1にも届かない(グラフ―21年で31%弱)。しかも、経済成長率でも大きな差があって、IMFの予測で見ると(20年から今後7年間平均)、新興国と途上国の平均は年5・1%増に対して、G7はわずか1・3%増。発展のスピードは月とスッポンで、さらに急速に差は開く。購買力平価では中国が17年に米国を上回っているが、ドル換算GDPでも28年には逆転すると予測されている。

 世界経済の中心はすでに発展するアジア、中国である。経済関係は早晩国際政治に反映する。G7が、「中国包囲」で世界を分断してどうなるものでもなく、むしろG7が「孤立」するだけだ。

自己暴露した実力不足

 だから「主要7カ国」などと自称するが、実力不足である。

 首脳宣言で、「来年にかけて10億回分のワクチンを供給」と打ち出した。ここにも見え隠れする中国への対抗の狙いはさておき、パンデミック対策の途上国支援は結構なことだ。

 だが、何故か、わずか10億回、それも来年にかけて。ワクチンを国際公共財と位置づける中国は、6月5日の時点ですでに3億5千万回分を海外に供与したという。他方、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスはワクチン普及よりも速く拡散、G7が表明した10億回分は全く不十分、110億回分以上が必要と警告した。

 また、中国の「一帯一路」に「対抗」して、途上国支援に年間1000億ドルの資金拠出も打ち出した。「途上国」をさんざん搾り取ってきた欧米大国が、これまた「中国対抗」のためとはいえ、資金を提供するのは結構なことだ。

 カンボジアのフン・セン首相は「中国に過度に依存しているとの批判もあるが、中国以外に、カンボジアはいったい誰に頼ればいいというのか。コロナ対策でも中国の支援は不可欠だ。われわれを非難するのは簡単だが、一度現実を見て、色眼鏡を外してカンボジアの外交を理解してほしい」と、5月20日に「アジアの未来」会合で述べていた。これが世界の現実だ。

 G7は、「中国包囲網」で世界を分断するのではなく、文字通りの「国際協調」でコロナ禍とさらには世界の貧困に立ち向かったらどうか。それとも実力がないならば、米国は大口をたたかず、中国に白旗を掲げ協力を頼んだらどうか。

 米国は、それとも唯一対中国で優位に立つ核軍事力で脅すのか。そんな暴挙を全世界は許さない。

「戦略的自立」めざす欧州

 「協調体制」を「歓迎」といった論調が多い。だが同時に、「重要なのは各国の事情を踏まえつつ、大きな方向で足並みをそろえることだ」(日経新聞社説)などと言うように、足並みの乱れが現実だ。マクロン仏大統領は会議直前に、「フランスは第3の独立した道を進みたい」とわざわざ発言した。閉会後も、「はっきりさせたいのは、G7が中国に敵対するクラブではないということだ」と述べ、悦に入っているバイデン大統領や菅首相に冷や水をぶっかけた。ドイツのメルケル首相の持論は、「世界を再び二つの陣営に分けるべきではない」である。

 イタリアも含めてEUの大国は、米中の対立の中で「第3の道」を進めている。戦後、対ソ戦略もあって米国主導の欧州に甘んじてきたが、冷戦終焉以後、とりわけ最近は「戦略的自立」を果たそうと動きを強めている。

 トランプが瀬戸際に追い込んだG7だが、皮一枚でつながっているにすぎない。

 G7では力不足と、バイデンは今回会合に豪印韓、それに南アを呼んで中国を牽制しようと策した。だが、インドはオンライン参加で体よく逃げ、韓国は先の米韓首脳会談につづいて「中国」の言葉さえ避けた。各国は、付き合いをしただけで、米国の指揮棒に従う気はない。

日本も自主・アジア共生を

 バイデンは、他国の犠牲で歴史の歯車を逆回転させようと画策しているが容易でない。何よりも米国は国内が容易でない。トランプの共和党に引き続き手を焼いていて、国内対立は「内戦状態」というほどの激しさだ。周知のように、民主主義や人権の状況は、中国に何か要求できる状況にはない。

 歴史的転換点を迎えている世界である。安倍・麻生が唱え、菅首相が従う「対中国のフロントに立つ」戦略はまさに亡国の道である。

 対米従属が習い性となったわが国支配層、自民党だが、ぼつぼつ「戦略的自立」の欧州に学んだらどうか。国民は、自主で平和なアジアの共生の日本を望んでいる。

 

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