[持続と循環の食料自給経済へ]浄慶 耕造

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「企業農業」ではなく「中山間地の有機農業」の全国発信をめざす

養父市議会議員 浄慶 耕造

 

 鈴木先生のお話、非常に明快でかつ「怖い」話でしたので、心の中にずっしりと響きました。
 われわれの養父市、話がありました「国家戦略特区」に2014年、最初の5地区のなかの一つとして「農業特区」に指定されました。当時市長は、「中山間地の革命児」などと多くのメディアで持ち上げられました。
 養父市はどういうところかといいますと、2004年に平成の大合併によって市になったわけですが、当時の人口が3万人弱、現在は2万2千人で高齢化率39%の少子高齢化の地域です。かつて経済は、鉱山、林業、養蚕の山村経済の上に商業の隆盛を誇った地域でしたが、ベースの産業の衰退と「大店法」の廃止に伴う郊外店の進出によって「ひっそり」とした中心市街地になってしまいました。

 そこに安倍政権の目玉政策である「国家戦略特区」の指定となったわけです。住民にとっては大きな期待と、幾分の猜疑心によって受け止められたように思いました。私は、大々的にメディアで取り上げられ「行政の常識」に反して「空気を読まずに」提案した(という評価のもとで)市長への賛美の嵐の中で、これはわれわれの地域は大きな変化に見舞われると感じたものでした。
 事実、農業委員会の権限を市に移すとか、農地法の規制を外す、という戦後農政の大転換で、これはもう非常に国家レベルのプロジェクトなんですね。官房長官や小泉進次郎さんらが次々とやってくる。経団連や関経連のトップに近い人などが講演会開催する。相当大きな変化に見舞われるというふうに思いました。
 一方で私たちの「猜疑心」とか不安の正体は何かといえば、恐らく、農業は「栄える」、しかし、農民は滅ぶと。あるいは農業が「栄える」けども、地域の共同体が解体される形になるんじゃないかということでした。
 これまで「担い手」といえば農業後継者のことだった。今は「新しい担い手」と言って、企業のことなんですから。
 それから7年くらい経過をしたわけですけど、「国家戦略特区」に参入した企業は13社です。そのうち大手がオリックスと農機具会社とエネルギーの会社、この3社が大手で、その他は兵庫県とこの養父市のなかの中小企業の関係の農業参入というような形でした。
 なかなか、農業が「栄える」、あるいは農業で大きな変化があるというような事態は今のところ進行してはおりません。特にオリックスが9千数百万円の資本で始めた企業農業は、債務超過に陥る寸前のところになっています。業績は今良くないということで、「国家戦略特区」によって、地域が変わったということがないわけです。逆に期待をもって迎えた農家の方にしては、これだけ大きな「農業特区」という話がありながら、われわれ農家にとっては何のメリットもないじゃないかという不満がたくさん出ているというのが現状です。
 私たちとしては「国家戦略特区」が企業の農業参入のための制度改革、規制の撤廃であって、もともとここで農業をやっている人たちにとっては何らメリットがあるものではないということを、やはり話をしていかないといけないということです。
 この地元の中小企業が参入した部分で活性化した、いい効果をもたらしているという面もございますので、企業の参入が全部ダメだという話ではなくて、企業の参入も一部の形としながら、全体として中山間地の農業をどうやっていくのかということです。「国家戦略特区」ではなくて、われわれの地域の農業をどうやっていくかというような話にもっていくべきだろうと今思っています。
 したがって、今のところは「農業も栄えず」、ただし、「農民は滅んでいる」わけです。この状況を変えるために市側にも求めているのは、「基本計画」です。この地域の農業の「基本計画」を策定すること。そして、われわれの地域のなかで、どんな農業が可能なのかということを明らかにするような活動を農家といっしょにやっていきたい。もちろん、めざすところは有機農業ということになると思いますけど、中山間地の有機農業というような姿をつくって、この養父市から全国に発信する。「農業特区」という企業農業の全国展開ではなくて、中山間地の有機農業という姿がつくれたらうれしい。
 「農業特区」になってイオンアグリもわれわれのところで農地の集積を試みましたが達成できずに撤退しました。広大な農地で機械化とAI化で効率的な農業をめざす企業が、参入規制を取っ払う既成事実を求めたのがこの養父市。ここの農家が、その意に反して「伝統に基づく農業改革」を進めることができたらと夢を描いています。

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