核ゴミの最終処分地問題

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原発政策最大のアキレス腱 今ならまだ間に合う

北海道議会議員 市橋 修治

 日本原子力研究開発機構は昨年1月、北海道幌延町の深地層研究期間の延長を決め、8月には500mの追加掘削を道と幌延町に提案した。期間延長間もなくの追加掘削提案は道民の大きな不信を招くことになった。そんな折、北海道の西部の町と村に突然の衝撃が走った。考えもしなかった「高レベル放射性廃棄物の最終処分地」を巡る閃光だった。

 「トイレなきマンション」と言われた原発政策最大のアキレス腱が急速に動きだした。

寝耳に水の「文献調査」への応募

 降って湧いたような「高レベル放射性廃棄物」に揺れる寿都町と神恵内村は、ともに日本海に面した水産の町。古くはニシン漁で栄えた町。この町と村は北海道唯一の北海道電力泊原子力発電所を挟んで立地している。

 私が、寿都町の情報を入手したのは昨年8月11日。私はその日のうちに寿都町へ走った。

 9月8日には対岸の神恵内村では商工会が請願を村議会に提出。どちらも多くの住民は寝耳に水。寿都町は2カ月足らずで、神恵内に至ってはひと月で決定し、早々と応募を決めた。

 説明会も開かれたには違いないが、推進側のNUMO(原子力発電環境整備機構)や資源エネルギー庁の説明のみである。寿都町長は、事前の住民説明会を「かえって面倒だ!」と言い放った。確かに詳細が分かれば「面倒なことになる」に違いない。ただ「住民軽視!」のそしりは免れまい。

 しかし、調べていくうちに巧妙な手口が明らかになった。

 寿都町は1年ほど前からNUMOを呼んで、「洋上発電の勉強会」と称して「会」を重ねていたことが判明。神恵内村に至っては、14年も前から商工会中心にNUMOと学習会など連携があったという。まさに住民には内密裏にかつ周到に進められたことが分かる。

 私は、寿都町長に8月24日に会った。町長は「町の将来の財政が厳しい。2年間の文献調査で20億円を目標にする」と言った。また「2年(文献調査)で終われる。国と契約してもよい」とも述べた。

 今回の寿都町、神恵内村の「応募」決定過程は大問題だ。寿都町(人口2800人)の議会は9人、神恵内村(人口800人)8人。過半数はどちらも5人。全道530万人の生活と、10万年先の将来がこの10人で決まってしまう。国や原発推進団体には都合は良いが道民には不条理な制度だ。

 寿都町、神恵内村ともにNUMOの要請を受け「対話の場」を設定する。しかし、寿都町では、「対話の場」の参加者を公募せず、漁業関係などの各分野から20人を指名することに。神恵内村は公募するとしているものの、参加者20名中公募参加者はわずか5名。まさにアリバイ的「対話集会」だ。

困惑の周辺町村住民たち

 北海道各地からの「反対」「慎重に」との動きは早かった。

 8月20日には寿都町に隣接する島牧村、蘭越町、黒松内町の3町村長が知事に「慎重な対処」を要請。寿都町から150㎞にある札幌市長も「道の条例を順守する責務がある」と述べ、28日には100㎞離れた小樽市長も「反対」を表明。21日には小樽地区9漁協組合長会議が「反対・抗議文」を提出。北海道森林組合連合会も「反対」表明。24日には島牧村、蘭越町、黒松内町の3町村長が寿都町長へ「再考」を要請。9月2日には道南4町長が「性急な判断には反対」と申し入れた。

 これらの動きに対して寿都町長は「賛否が五分五分ならやるべきではない」と述べていた。しかし10月8日、寿都町全員議員協議会で「賛成5、反対4」で決定し、住民の意向は「肌感覚」で賛成多数と判断された。

寿都町民の怒りが爆発!

 9月10日には寿都町の水産加工業者らからなる「子供たちに核のゴミない寿都を町民の会」が設立され、7836名分の署名を提出。それに先立ち結成された「北海道子育て世代会議」は片岡町長に公開質問状を提出。

 寿都町の住民説明会も、当初1カ所で済ます算段が、議会の反発を受けて地域ごとに行うことになった。

 寿都町漁協では役員全員が2月に辞任、正組合員から役員の改選請求が出され体制一新を余儀なくされた。役員だけで町長の文献調査応募を支持する姿勢を決めたことが一因と言われる。漁協内では核ゴミ問題で議論の場は1回も設けられなかった。

 年明け1月には、寿都町に、新たに「脱・肌感覚リコールの会」が発足した。前年12月に寿都町議会が「寿都町に放射性物質等を持ち込ませない条例」案を賛否4対4、議長採決により否決したことから、賛成した5人のリコールを求めるもの。

 原発で多額の交付金を得た自治体では1次産業は衰退の一途。人口は確実に減少する。故郷は昔のたたずまいはなく、「廃棄物の町」が残るだけ。この11月には寿都町の町長選挙が執行される。当然、選挙戦になるはずだが、寿都町の将来を考えるうえで、これまでになく大事な選挙となる。

 一方、神恵内村では9月8日、神恵内村商工会が応募の請願を村議会に提出、10月2日には神恵内村議会総務経済委が商工会の請願を採択。8日には神恵内村議会本会議で請願を採択。翌9日、神恵内村は核ゴミ処分地の応募を受諾。何ごともなかったかのように事は進んでいる。だが、いつまでもそうか。

全道に広がる「核ゴミ受け入れ拒否」の動き

 文献調査が始まってまだ3カ月。全道、管内での「反対」の動きは止まらない。

 寿都町の隣接、島牧村、黒松内村で「核ゴミを持ち込まない」旨の条例が成立。神恵内村の隣接、積丹町でも同様の条例制定。神恵内村に隣接する古平町、そして仁木町や蘭越町でも「決議」等が可決された。日高管内浦河町、上川管内美瑛町、宗谷管内幌延町、後志管内小樽市をはじめ、他の自治体でも条例制定がなされ、さらに全道に広がりつつある。

 また黒松内町、蘭越町、ニセコ町、島牧村は、関連補助金、交付金を受領しない旨を声明。もちろん、北海道もだ。

「核ゴミは受け入れ難い」との北海道条例

 今回の事態が表面化するやいなや、道知事も動いた。8月21日、鈴木知事が概要調査に移行の場合は反対することを表明。9月3日には寿都町長と、10月7日に神恵内村長と会談。北海道は「核廃棄物を受け入れがたい!」との条例(2000年)を背に負って「周辺自治体の意見を尊重するよう」求め、「概要調査に移行する場合は反対する」と明確にした。

 二つの町村も北海道の自治体。町民、村民も道民だ。道条例は皆のものではないのか、そんな疑問を多くの道民は持っている。

 知事は8月27日、「判断は慎重に」「撤回を要請」「10万年の危険を1カ月で決めるのは拙速だ」、国に対しても「頰を札束でたたくようだ」と、今回の手続きの危うさを表した。道民、すべての自治体は、この条例を思い起こし、政府に反対の強い意志を表明しなければならない。

「原発マネー」は町を豊かにしない!

 両町村が「応募」した理由の主なものは、将来に向けた「財政の厳しさ」だ。

 文献調査の2年間で20億円、続く概要調査の4年間で70億円。この原発マネーに対する期待は大きい。決して小さな額ではないが、分母は10万年だ。

 ましてや、2年間の文献調査後、あるいは4年間の概要調査後、引き返せるか? いったん手を挙げた自治体に、20億円、70億円を交付する国が「後戻りを」をやすやすと認めるか。だれもが感じる素朴な疑問だ。安易に「最終処分地」に応募できるとしたら大問題だ。

 政府は原子力施設の立地自治体を財政支援する「原発立地特措法」が3月末に期限となるのを前に、10年間延長する改正案を今国会に提案する。「原発マネー」の存続だ。

 「核ゴミの最終処分地に応募すること」と「財政再建問題」は全く別次元のことだ。住民にとってはなおさらのことだ。

 そうは言っても、「原発マネー」への呼び水が、小さな自治体の財政問題だとしたら深刻だ。国や道も、市町村自治体の地方財政の健全化、財政支援の取り組みを真剣に考えるべきだ。

途中下車はできるのか?

 寿都町長は「(文献調査は)2年で終われる」と言い、神恵内村長も同様の認識と思われる。一方、国のほうがどう考えているのかは判然としない。

 9月1日に梶山経産大臣が寿都町長に宛てた文書では、「知事や市町村の意に反し、概要調査に進まない」とした。しかし「白紙」になるとは言っていない。また、同6日の資源エネルギー庁の説明では、最終処分関連法では「知事や市町村町の意見に反して先に進まないが、調査継続への理解は求めていく」と言う。

 政府は今年2月、逢坂誠二衆議院議員の質問主意書に、「どうすれば核ゴミの最終処分地選定プロセスから離脱できるのかの手続きは明文化しない」と閣議決定。文献調査が進む寿都町と神恵内村には不安の声が漏れた。

今後の取り組みに向けて

 高い放射能を帯びた廃棄物は、まず30~50年間は陸上で冷却。その後10万年くらい地中に貯蔵される。この間、天変地異が起こらないと誰が保証するのか。寿都町長も神恵内町長も「責任は私が」とは言うけど、実際に廃棄物が持ち込まれるのは30年先。何年生きるのか、まったく無責任だ。ましてや10万年など想像すらできない時間軸だ。

 北海道を、そして寿都町、神恵内村をどのような地域に、町にするつもりか、大きな議論が必要だ。町は大きく変わる。町の将来はそれでいいのか、今、生きている人はともかく、子や孫が住みやすい、安全な街として存続できるか、だれが保証する?

 「国をだまして20億円ゲット」が正当なはずはないし、寿都町民の期待ではない。寿都町民には「厳しく、つらい評価」が待っているはずだ。

 一方、核燃サイクルが破綻しているのに、国や電力会社は再稼働を目指すばかり。廃炉やゴミを減らす努力がまるでない。これも無責任だ。

 日本学術会議は2012年に、人が管理できる「暫定保管」と、併せて「廃棄物総量も減らす対策も必要」と提言。これこそ真剣に考えるべきだ。

 降って湧いたような「核ゴミの最終処分地問題」。寿都町や神恵内村など一自治体で決定できるものではない。このことは北海道全体のこと、日本全体のこととして捉えなければならない。

 私は今、この後志管内の超党派でつくる「核ゴミを考える自治体議員の会」(仮称)を結成すべく奔走している。全国の意を同じくする仲間と連帯したい。

 全国で、問題をぜひ自分のこと、自分の町のこととして捉え返してほしい。今ならまだ間に合う。

 

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