国産食料を増やすように生産者がもっと発信していく

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人と人の出会い・交流が一番の強み、
それを結びつけるのが青年部

全国農協青年組織協議会(JA全青協)会長
田中 圭介 さんに聞く

 私は高校まで水泳に熱中しており、農業を継ぐつもりはなく、学校の教員になりたいと思っていました。兄、姉の3人きょうだいの末っ子でしたが、高校2年の時、農業大学校を途中まで行った兄が民間企業に就職し、自分が継ぐのかという状況になりました。
 高校時代に寮生活をしたことがきっかけで、食と農業への関心は高まっていました。それまでは田主丸(福岡県久留米市)の農家での生活で、光り輝くコメや野菜などが豊富でしたが、寮生活での食事には驚きがありました。「ご飯が黄色い」と両親に話した覚えがあります。農家の食事と一般の人たちの食事の違い、「当たり前」が違うということを初めて実感しました。農家がいないと全国の食卓に食材が届かないことにも気付き、またスポーツをやってきたこともあり、食つまり農業は大事だと思ったので、自分が農業を継ごうと進路は自然と決まりました。その代わり、「大学には行かせてほしい」と、自宅から通える地元の大学で学びました。
 一人暮らしをしている周りの学生の食生活は大変そうでした。僕は家から大学に通っていたので、同級生を家に招いてアルバイトしてもらう代わりに食事とかはいっぱい食べてもらっていました。このように、農業や食に関心をもってもらいたいとやっていたのが学生のころです。
 卒業して、すぐに就農しました。JAの青年部にも入りましたし、行政管轄の4Hクラブにも入りました。友達づくりと思って活動に参加を始めて16年くらいになりますが、先輩たちに恵まれていつの間にか今の役職(全国農協青年組織協議会会長)に就任していました。

自然災害もあれば、うまくできても価格が下がることも

 いざ就農をしてみると、農業の大変さも多く実感をしました。安定的に出荷するとなると、気候や技術的な問題もあり、非常に大変でした。
 とくに、安定的に作るというのは簡単ではなく、非常に難しかったです。野菜が中心で、とくにリーフレタスを栽培していますが、3カ月で収穫ができるので、気候によって出来が大きく変動してしまいますし、それに伴って価格も乱高下します。近年はとくに、大雨とか台風の被害など、直接的に農業被害を与える回数も多くなってきています。そういう面では、栽培技術以外にも、安定した経営に難しさを感じます。
 全国でコメの在庫が余っていて、日本農業は大きな問題に直面しています。ただ、仮に南福岡の一人の農業者として考えると、野菜がベースとなっているのであまり影響は受けません。野菜が中心で表作、コメは裏作になっています。秋口から春先まで野菜を作る。減反のところは枝豆などを作りながら、春からコメを作る。一年中田畑は働いているわけです。
 稲刈りをしたら、1週間後には同じ田んぼにレタスを植えます。普通は、同じ土地で同じ作物を作り続けると連作障害を起こします。その点、水田でコメを作ると連作障害が起こりません。稲わらは土づくりに重要で、やはり水田は日本農業のベースです。
 4ヘクタールでコメを作り、同じ田んぼでレタスなら2回転、正確には1・8回くらい回します。レタスだけでなく、正月用のキントキニンジンや枝豆、他には白菜やゴボウなどの根菜類も生産しています。葉物野菜と根菜類をうまく融合して休みなく回しています。落ち着くことができるのは8月の少しくらいで、9月からは本格的な野菜の植え付け準備があります。基本的にはずっと作業はあり、一年中休む暇なく仕事をしています。
 それでも売り上げは、レタスを2万ケース以上出荷していますが、平均1000円と計算すれば、それくらい入ってきます。それが今年は200円とか300円という具合です。安定的な収入の確保というのはやはり難しいです。
 こういったことが原因で、農業後継者問題は深刻です。地元の青年部自体もここ20年で半分以下になっています。後継者になる人材が減っているのは明らかで、その傾向は地方になればなるほど顕著です。

コロナ禍での活動、深く考えるきっかけに

 こうした営農を続けながら、昨年度からJA全青協の会長を務めています。
 僕が感じるJA青年部の一番の魅力は、人と人とが意見を交換し、交流して、モチベーションを高めて、それぞれの地域でしっかりとした農業をしていくということです。人と人の出会い、交流が一番の強みで、それを結びつけるのがJA青年部という枠です。ところが、新体制発足時からオンラインでしか意見交換や交流ができない、制限されるなかでの会長就任となりました。
 しかし、組織活動が制限されても、種を植え、農畜産物を育てるという農業の生産現場はコロナがあろうがなかろうが、絶対に止めてはならないですし、実際にも止まっていません。そのような営農の状況と、社会的に組織として行動ができないという状況の中で、誰が若い生産者の声を代弁するのか、そこが全青協の会長の役目だと思い活動してきました。
 実際の活動でも、海外研修だけは中止になりましたが、それ以外の全青協の行事はすべてやりました。
 コロナ禍という困難な中でも、Web会議システムなども導入しています。新しい技術、システムを取り入れた。盟友は行動力を持っています。決めたら活動にすぐに取り組むことができ、この点は非常に良かったと思います。
 さらに、これまで「継続」してやってきた行事の本質を考えるきっかけになったかと思います。つまり、この行事、取り組みは何のためにやっているのかを真剣に考えるようになり、コロナ禍でもやらなければならないのか、形を変えてでもやる意味があるのか等々、JA全青協だけでなく各青年部内でも意見がたくさん出た一年だと思っています。
 2月16日に開催するJA全国青年大会も、YouTube Liveで配信しますが、初めての挑戦です。JA全青協の執行部内でも、なぜJA全国青年大会があるのか、本質を議論しようと、長い時間話し合いを続けてきました。気付いたことは、各地域で行っている青年部活動や日々の営農活動、それを担っている盟友たちが意見を主張する場、これがJA全国青年大会のあるべき姿だということです。それが本質だから、JA全国青年大会を開催すべきだとなりました。一カ所に集まっては開催できないのでライブ配信にし、できれば一般の人にも見られる形にできるよう準備を進めています。
 こうした本質を考える議論を全国各地ですることで、各青年部の結束が強まったように思います。結果的に実行できた、できなかったかはありますが、その経過も今年の大きな収穫だと思っています。できたことで不備があれば、改善して来年度に実行できればいいですし、できなかったことは、どうすればできるかを来年度にまた見詰めなおしていけば、青年部活動がコロナ前よりもいいものになるのではないかと思っています。

食と農の大切さを消費者に知ってもらう

 今は、消費者はコロナ禍であっても自分の食を選ぶことができます。ところが、国の農業の基盤が脆弱だと、その選択肢がなくなる可能性があります。だからこそ、僕たち生産者は食料を安定的に供給することが非常に大事だと思っています。しかしながら今、例えば、「いただきます」という食への感謝の思いや産地や農業生産に思いをはせることが少なくなっているように感じます。特に、コンビニやスーパーなどに当然のように食材が並んでいる大都市で生活すると見えにくくなってきているように思います。
 今回のコロナの影響で国民も制限される生活になり、不自由さなどを多くの方が感じていると思います。しかしながら、生産現場、流通現場、販売現場それぞれが頑張っているから食卓に安心・安全な国産の食料が届いている。でも、輸入品と国産品の違いを意識できている消費者は少ないと思います。だからこそ、僕ら生産者は、もっと積極的に情報発信をする責務があります。
 JA全中の広報部が配信するYouTubeチャンネルに「アグリンch」があります。このチャンネルで、JA全青協はJA全中広報部と連携し、全国の若手農家の特徴ある農業現場を配信する「農Tuber」の動画を作成し、生産現場を見える化していこうと取り組んでいます。
 国民の皆さんに、とくに都会の人たちから農業生産現場が見えにくいということをどう解決するか。農業者や農業団体だけでなく、農業以外の外部の団体とも連携をしていきながら進めてこうと考えています。先日も、JFの全国漁青連とWebで意見交換をしました。第一次産業でタッグを組み、活動していきましょうと確認して、今後の進展に期待しているところです。
 また、JA全青協はアグリカルチャーコンペティション(略してアグコン)に審査員として参加しています。アグコンは、大学生を対象とした農業、食、地域に関するプレゼンテーション大会ですが、学生のアイデアには面白いものがたくさんあります。来年度は、学生たちと一緒に何か取り組めないかと考えています。学生が出したアイデアを具体化する橋渡しを僕たちがやろうということです。また、農業現場を知ってもらうなど、学生にも役立つことを形にしていきたいと考えています。

30年先40年先の持続する農業を展望して

 会長就任から全力で駆け抜けてきましたが、地方の困りごとや現実を訴えることが僕の役目ですから、そのスタイルは変わりません。国民の危機に直面した時に、僕たち生産者にとって大事なことは生産現場の手を止めないことで、逆にそれを続けていくためには、国の政策も大きく関わってきます。
 僕らは今後30年、40年農業をやっていくので、今後を見据えた活動、行動は非常に重要だと思います。それを一人ひとりが考えることが重要です。今年度のJA全国青年大会のテーマの一部には「Letʼs think」という言葉が含まれています。コロナ禍というのは、何事も深く考えさせられる状況で、常にどうしたら改善できるか、前進できるかをポジティブに考えてほしいということを全国の仲間に伝えたいと思っています。
 私は、これまで自然の中でいろいろ教えてもらいました。自然の恩恵に比べれば僕らの力は本当に微々たるものです。農業は自然の恩恵で成り立っている。太陽がないと光合成ができませんし、水がなければ発芽しない。そういう自然の力が非常に重要で、同時に、台風、豪雨、暖冬、大雪などの猛威も食らいます。
 受けている恩恵の一部分としての災害で、自然の恩恵なしには農業生産はできません。ただ私の出身地域では、4年連続で水没しています。水田の洪水防止の役割は承知していますが、毎年水没してしまうことを防ぐためにも、行政としての治水対策をお願いします。同時に、水没しやすい土地に新しい施設が建てられるなど、こうしたことは、長期の課題として僕らも考える必要があります。
 豊かな自然、山や谷、川の恩恵で日本農業があり、国民が生きているわけです。自然の恩恵を大切にしながら、30年先、40年先の農業を頑張っていきたいです。

(文責、見出しとも編集部)

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