世界史的転換点を映す――ダボス会議、ミュンヘン会議

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しっかりとした国の進路を定めなくてはならない

本誌編集長 山本 正治

 新型コロナウイルスが世界を揺さぶっている。安倍政権の対応はお粗末極まりない。即刻政権を代える以外にない。官民の知恵と力を総結集した強力な対策を強く求める。
 「歴史的に見れば新興感染症は世界史的転換点で発生してきた」(中西寛・京都大学大学院教授)といわれる。時あたかもこの時期に二つの国際会議が開かれた。
 一つは通称「ダボス会議」、全世界の有力な企業経営者やトランプ米大統領など政治家、それに研究者など3000人以上が集まった世界経済フォーラム総会が1月末にスイスで、もう一つはドイツのミュンヘンで、「安全保障版のダボス会議」とも呼ばれる国際安全保障会議が2月中旬に開かれた。当然どちらでも新感染症対策は議論になった。
 これらの会議も、歴史的な大転換期を経過していることを全世界に印象付けるに十分だった。
 コロナウイルスから国民の生命と安全を守るためにも、何よりもこの世界的な大転換期に対応できるわが国政治が求められる。その自覚が与野党問わず求められる。その第一歩は、アメリカへの従属を脱却して真に自立し、平和にアジア諸国と共生する日本をめざす政権の実現である。

「第1次大戦前に匹敵」、核軍拡進めるアメリカ

 英国フィナンシャル・タイムズのマーチン・ウルフ氏は昨年末、「現在は第1次世界大戦前に並ぶ難局」と断じた。本誌前号で羽場久美子・青山学院大学教授も、セルビアの一青年が放った銃声が世界を驚がくさせた大戦につながったと指摘。長い間平和が続き、戦争など起こらないと誰もが思っていた中で凄惨な世界大戦が勃発した。
 何が引き金になるかわからない。
 2月初め、アメリカが原子力潜水艦に小型核を実戦配備したと発表、中国をにらんで太平洋に配備する。日本などアジアの陸上には中距離核戦力を配備するとも発表している。当然のように、中国もロシアも対抗し、世界は核軍拡競争が激化している。
 2019年の世界の軍事費は前年比4%増加、過去10年で最大の伸び率。世界は、戦争か平和か、地球と人類を滅ぼしかねない瀬戸際に近づいているといっても過言ではない。それほど世界の抱える諸矛盾は深刻である。まさに、「第1次世界大戦前に並ぶ」状況下で、ウルフ氏が言うように「戦争を避けることの圧倒的な重要さ」を教訓としなくてはいけない。
 GDP(購買力平価)はもはや中国の5分の1、国民は総貧困化、しかも財政累積赤字はGDPの2・5倍近く世界の断トツ。このわが国が、この世界に大軍拡で臨むなど言語道断、無謀としかいいようがない。

ダボス会議・「持続可能な資本主義」は可能か

 日経新聞は、ダボス会議で「資本主義の再定義」が課題となったと伝えた。「株主への利益を最優先する従来のやり方は、格差の拡大や環境問題という副作用を生んだ。そんな問題意識から、経営者に従業員や社会、環境にも配慮した『ステークホルダー(利害関係者)資本主義』を求める声が高まる。中国主導の『国家資本主義』に抗する新たな軸への模索が始まった」と。世界の経営者や政治家たち、すなわち世界の支配者たちといってよいが彼らの危機意識がよく出ている。このままでは、資本主義は持続不可能でひっくり返されかねない、中国にも負けてしまう。「強欲資本主義」を何とか変えなくてはということのようだ。
 『ステークホルダー資本主義』は、可能か。こんにちの世界が抱える深刻な諸矛盾を解決するのか。マイクロソフト創始者で世界一の金持ちといわれるビル・ゲイツ氏や投資家ジョージ・ソロス氏などが、「超富裕層に増税しろ」などと言っている。無理もない。所得の再配分以外に解決策はないからだ。ダボス会議に合わせて国際NGOオックスファム・インターナショナルが発表した推計によると、世界のビリオネア(10億ドル以上の資産を持つ人)の数が過去10年間で倍増。最富裕層2153人は最貧困層46億人よりも多くの財産を保有しているという。46億人は世界人口の60%超に相当する。これほどの「格差」だから、大富豪から身ぐるみはぐなら別だが、少々の増税では気休めにもならない。
 しかも、5G(第5世代移動通信システム)やAI(人工知能)など急展開する技術革新が、それを握る巨大グローバル企業の経営者や投資家による富の独占を加速している。世界中の貧困と格差はますます耐え難いまでになる。
 わが国も例外ではない。総貧困化である。とくに、下層のいっそうの貧困化で格差が開いている。女性、とくに子育て中のシングルや青年男女、それに高齢者などへの抜本対策と根本的打開の政治が求められる。

「富の再分配」を恐れる経営者富裕層

 しかし、ダボス会議で経営者と政治家は、「資本主義の再定義」でまとまっていたわけではない。トランプ大統領は、経済は「今までにないブームの中にある」と自己の経済政策と自国経済を自賛した。参加のアメリカ企業経営者の大半はその見方を支持したという。
 これを伝えたフィナンシャル・タイムズの女性コメンテーターは、アメリカの政治・歴史学者の著書から「欧州の多くの国で過激な思想を持つ政治家が台頭し、国を動かすまでの権力を握るに至った背景には、経済界が過激な政治思想に対する脅威よりも、富の再分配のされ方が変わる方をより恐れたことが少なからずあった」との指摘を引用した。アメリカの多くの経営者は、金持ち・大企業増税を唱える「民主社会主義」の大統領を恐れているようだ。
 資本主義経済の限界を乗り越えるには富の再分配以外にないが、経済界の多くがそれを望まない。経済界は、富が再分配されるよりも、ポピュリズム政治、強権政治を選ぶ。彼女は、ドイツでナチス・ファシズム国家が登場した歴史的経験を想起させている。
 世界の分断は、深刻さを増す。国際政治は試練を迎えている。

「消える西側」

 安全保障のミュンヘン会議でも劇的な変化が見え始めた。主催は民間とはいえ参加者は西欧中心に各国首脳、閣僚たちである。
 会議のテーマは「消える西側」だった。各国国内では、ポピュリズムと極右勢力の台頭など分断と政治の不安定化が著しい。そうした内政を背景に「自国第一主義」が広がり、「西側世界」の国際協調は風前の灯となっている。すでに、EUからイギリスが離脱した。米欧亀裂も修復不可能となって、フランスのマクロン大統領は昨年、NATO(北大西洋条約機構)は「脳死状態」と言い切っていた。この会議でも、トランプ大統領と欧州首脳の激しいやり取りとなった。
 マクロン大統領は、イギリス脱退後のEUで唯一の核保有国となったフランスの核を中心に「地域共通の防衛戦略」構想を唱えた。ヨーロッパは第2次世界大戦の経験を踏まえた、米ソ冷戦構造の中での統合推進から再び大国間の争いの場に変わっている。2月末のEU首脳会議は独仏が対立し、予算案を決めきれなかった。しかも、東側には、ロシアがいる。もちろん中国は陰の主役である。
 衰退したアメリカは、アジアだけでなくヨーロッパでも大国間の「勢力均衡」を利用しながら、中国を抑え込み、世界支配の巻き返しを企んでいる。ヨーロッパもさらに著しく不安定化が進む。

 わが国は、この世界に対処できる自主の政権を急がなくてはならない。安倍首相は即刻辞任することが、わが国の安全であり真の国益である。安倍政権打倒で結束するとともに、その後、「どのような日本をめざす政権をつくるか」、真剣な議論が急がれる。

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