やはり「失うだけの日米FTA」

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米中紛争の「はけ口」もセットで「TPP超え」いつの間にか消えた捏造語TAG

東京大学教授 鈴木 宣弘

「TPP水準」を意図的に強調する姑息

 日米FTA交渉をめぐって、多くの報道で農産物の開放を「TPP水準にとどめた」かのように強調されているが、これは間違いである。
 ①そもそも、TPP水準が大問題だったのだから、TPP水準にとどまったからよかったかのような報道が根本的におかしい。
 ②加えて、米中貿易戦争で行き場を失った米国農産物の「はけ口」とされ、トウモロコシなどの大規模な追加輸入の約束がセットで行われたのだから、これは明らかな「TPP超え」だ。

米国の「ゴミ処理場」?

 それにしても、日本の飼料用輸入の3カ月分、300万トン近くものトウモロコシの追加輸入は異常な量であり、どうやって処理するのか理解に苦しむ。
 政府は害虫による食害のために不足するから追加輸入すると、取ってつけた言い訳をしている。だが、葉や茎を粗飼料とする青刈りトウモロコシの話を、米国から輸入している穀物としての実のトウモロコシという別物に無理やりこじつけている。何よりも、そもそも食害はほとんど起きていないと農林水産省の担当課も認めている。
 国産のコメをトウモロコシに代わる飼料にしようと推進しているエサ米政策とも真っ向から相反する。
 正直に、日本は、米国(大統領)の「忠実な手下」(ワシントン・ポスト紙)として、「親分」の後始末をする「ゴミ捨て場」(dumping ground)になったと認めるしかない。
 処理方法としては、3国間貿易(日本が買った形にしてモノは直接別の国に米国から送る)、バイオエタノールを造るとかが考えられる。
 さらに、注意すべきは、米国の中国向け農産物で行き場を失ったのは大豆で、トウモロコシは、近年、中国向け輸出はほとんどない。ただ、トウモロコシ需給も緩和しており、シカゴ相場が暴落している。
 米国農家は大豆とトウモロコシと小麦を輪作しているので、日本のトウモロコシ買い付けで相場が上昇すれば、穀物農家は助かる。日本の畜産農家にとっては飼料コストアップの不利益を被ることになる。

乳製品枠などが「二重」に課される「TPP超え」

 牛肉・豚肉の関税削減で後れを取った分を早く取り戻したいという米側の要請に応えて、アーリー・ハーベスト(先行実施)的に急ぐものを中心に決め、TPPで合意していたコメや乳製品の米国枠の設定は先送りされたとの一部報道がある。
 これについては、
 ①まず、牛肉・豚肉などの関税削減スケジュールを早めて他国に合わせることは、協定としては「TPP超え」だ。
 ②また、仮に先送りされたとしても、コメや乳製品の枠が再協議されることは間違いなく、これは「TPP超えを回避した」わけではなく、現時点で「TPP水準」と報道するのは間違いだ。TPPで合意していたコメや乳製品の自国枠を米国が放棄するわけはない。
 ただし、コメについては、すでに、日本が別枠の輸入(SBS米)で米国産米を大幅に買い増ししており、7万トンのコメの米国のTPP新設枠がかなり満たされるまでに日本側が対応している実態がある。
 TPP11では、米国も含めた全体の輸入枠を、米国が抜けたのに、そのまま他の11カ国に適用した品目が、乳製品も含めて33品目もある。これらについて、日米2国間で米国枠を「二重」に再設定すれば、ただちに「TPP超え」となる。

日本の唯一の成果はホゴに

 一方、普通自動車の2・5%の関税は25年後に撤廃、大型車の25%の関税は29年間現状のままで、その間に日本が安全基準の緩和を着実に履行すれば30年後に撤廃するという気の遠くなるようなTPPでの日米合意さえ、米国は破棄するとしている。
まさに「失うだけの日米FTA」~エンドレスに続く「25%」の威嚇効果
 農産物は米中紛争の「尻ぬぐい」も含めたTPP水準超えの一方で、成果としていた自動車の約束はホゴにされたのだから、まさに、得るものはなく、「失うだけの日米FTA」であることは間違いない。自動車への25%の追加関税に脅されて、やはり差し出すだけになった。
 恐ろしいのは、味をしめた米国大統領は、引き続き25%関税をちらつかせることで、際限なく日本に「尻ぬぐい」「肩代わり」を要求してくるということである。この関係を断ち切らない限り、日本国民の未来は暗い。

捏造語TAGはいつの間にか消えた

 また、「FTAではない」とごまかすために、日米共同声明を捏造してTAGだと言い張ったが、案の定、今はTAGという呼称は消えた。FTA交渉入りをごまかすための方便だったことが明白になった。やらないと国民に言ったことをその場しのぎでごまかして進めていく姑息な姿勢がどこまでも続いている。

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