「国の進路を正しく定める」ことが何よりも重要に

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「米中衝突」、激動の世界

『日本の進路』編集部

米中貿易交渉は「岩盤」に突き当たって、「衝突」の出口は見えない。世が世ならば戦争になって不思議でない緊迫した状況である。
アメリカは、欧州との関係でも圧力を強めているし、イランとは事実上の戦闘状態である。トランプ政権は、「同盟国」であるわが国にも農畜産物輸入や自動車輸出の貿易問題、為替主権問題でも、何よりも対中国の軍事負担で圧力を強めている。
衰退したアメリカは、世界を破局の瀬戸際に追い込んでいる。世界の国々はアメリカに反発を強めている。
背後で世界経済は危機を深め、深刻な金融危機がいつ爆発しても不思議でない。どの国でも貧困層が急拡大し、貧富の格差・矛盾は極端なまでに激化し、政治は著しく不安定化している。しかも、5G(次世代移動通信システム)を中心に急テンポで進む技術革新は、経済や社会、さらには政治をも激変させつつあり、世界の危機を加速し、新しい時代の到来の予兆が現れている。
どの国も企業も、この激変の世界への対応を迫られている。とりわけ対米従属のわが国は深刻な事態に直面した。対米一辺倒できた大企業、財界ですら右往左往である。
しっかりとした国の進路を切り開かなくてはならない時である。

アメリカの対中圧力は「中国の体制転換の戦い」

1990年代初めの冷戦終焉以後、崩壊した旧ソ連と同様に衰退著しいにもかかわらず「1極」支配者となったアメリカは、世界覇権維持のために中国を対抗国にさせない戦略を一貫して追求してきた。WTO加盟を核心とする「関与」政策だった。中国はこの間に、経済を飛躍的に発展させ2010年にはGDPで日本を抜き今や3倍に、アメリカに迫るまでになった。アメリカを脅かす世界の大国として登場した。
焦ったアメリカ・トランプ政権は、2017年12月の国家安全保障戦略で公式に「関与」政策を否定した。それは民主党や労働界を含む国家合意となり、ペンス副大統領が昨年10月4日、「邪悪な中国共産党」との体制転換の戦いを宣言した。こうしてこの1年余りの米中貿易交渉は、「交渉」という「冷戦」となった。
この5月、トランプ政権の貿易戦争に拍車がかかった。当然にも中国は拒否し、アメリカは中国からの輸入品ほぼすべてに高関税をかける制裁「第4弾」を決めた。中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)からの輸入を規制。同時に米商務省は同社を規制対象リストに追加し、ファーウェイへの米国からの輸出を原則禁止した。技術革新の中核である5Gを世界的に主導するファーウェイを抑え込んで技術覇権を維持しようと策動している。トランプ政権はさらにファーウェイに対して、北朝鮮やイランなどと同様にドル建て取引を禁止するとの見方も広がっている。
アメリカの対中攻撃の本質は貿易問題ではない。中国の「体制転換」である。
特色ある社会主義大国をめざす中国は、国家主権など原則を譲らぬ態度を鮮明にして長期戦に備えるとともに当面の対抗措置も打ち出している。習近平主席は最近、「新たな長征が始まった」と「持久戦」を提起した。国務院の記者会見では20年代後半以後「理性を失った争い」なると、破局的事態をも含めた長期戦の見通しが語られた。
当面しても米中ともに内政問題を抱えている。とくにロシア疑惑で追い込まれるトランプ大統領であり、貿易問題で一定の妥協が成立するかもしれない。だが、中国にとって国家主権にかかわる問題での屈辱的譲歩は体制を揺るがしかねない。長期の熾烈な戦いが避けがたい。
こうして金融緩和で辛うじて維持されてきた世界経済は、1、2位の大国間の対立激化で根底から揺さぶられる事態となった。

わが国には、自ら変えらない大津波が襲来

わが国企業、経済にはすでに大きな影響が出始めている。
半導体製造装置や電子産業を中心に輸出は対中国を中心に大きく落ち込み始め、設備投資も減退した。1―3月期のGDPは辛うじてマイナス成長を免れた。わが国企業のサプライチェーンは米中貿易戦争の影響をもろに受けるし、農畜産物輸入や自動車輸出などのアメリカの対日貿易圧力はわが国経済を直撃する。選挙を抱えるトランプ大統領は日欧からの自動車輸入についても、「国家安全保障上の脅威だ」と180日以内の解決を迫っている。
5Gなど次世代技術をめぐる争奪のなかで、大企業も文字通り存亡がかかった局面となった。
こうして大企業、財界にも不満が高まっている。
わが国大企業も大銀行も次の局面をにらんで対米関係とドル依存の相対化を進めている。米国トヨタは5月18日、「米国への投資や従業員の貢献が評価されていない」と公式に反論するに及んだ。トヨタ自動車豊田章男社長も、「大変残念に思う」と批判した。
国際取引のドル決済システムがドル支配を支え、アメリカの金融制裁を可能としてきた。ところが日経新聞は5月19日、「人民元での国際決済システムが2015年10月の稼働後、銀行の参加が89カ国・地域の865行になり、日本では三菱UFJ、みずほのメガ2行に地銀21行が参加」と報道した。
労働者や農民・商工業者、中小企業などだけでなく、わが国大企業も大銀行もこれまで通りではやっていけなくなっているのである。文字通り民族全体にとって進路が問われている。
トランプ大統領は、ロシア疑惑追及を受け大統領にとどまれるかどうかの窮地に追い込まれ、対中軍事挑発も強めている。軍事緊張はトランプ大統領にとって内政上有利に働く。
南シナ海での「航行の自由作戦」は常態化したし、中国の最も敏感な問題である台湾をめぐっても台湾海峡に毎月のように米艦船を航行させるなど軍事挑発を強めている。
当然にも中国側も反応している。偶発的にも緊張が一気に高まる可能性を含んだ情勢となった。
アジアと世界の状況は一変した。日本には避けようもない大津波襲来となる。

中国包囲敵視の安倍政権は国を誤らせる

この世界でトランプ大統領との関係を最大の政治資産とする安倍首相は5月25日、大統領を「令和」最初の国賓として招いた。二人して空母化が決まっている横須賀基地・海上自衛隊護衛艦「かが」を訪問するなどして、中国をにらんで「強固な日米同盟」を演出した。
しかし共同声明発表は見送られ、大相撲観戦やゴルフでごまかして対朝鮮・中国外交と貿易問題など両国間に横たわる深刻な矛盾は塗りつぶされた。すでに農畜産物輸入合意は間違いないが、発表は参院選後となった。
安倍政権はアメリカの対中国包囲戦略に縛られ、その先兵となって危険な策動を強めている。南西諸島への自衛隊ミサイル基地建設が強行されている。南シナ海への海上自衛隊艦船の派遣は常態化しているし、東シナ海では事実上の空母「いずも」に日本版海兵隊である陸自水陸機動団を乗せて常時航行させる計画である。対中軍事挑発の最も危険な役割を負わされている。
しかも、国民の血税でかつてない巨額の米国製武器購入が進む。こうしたことには防衛産業の企業幹部からすら不満の声が漏れる。
歴代自民党政権が続けてきた日米同盟路線、対米従属路線の限界があらわになった。
安倍政権の日米同盟強化路線は危険で、しかも永遠にアメリカの属国から抜け出すことができない。
国の進路を正さなくてはならない。
貿易戦争から現実の戦争に転化した歴史を想起せざるを得ない情勢が始まっているのである。核兵器のある世界で、核保有国同士の戦争はあり得ないといわれる。だが、通常兵器での戦争は世界で絶えない。そこにはいつもアメリカがいて、そうすることで世界支配を維持してきた。
対中国で同様の軍事挑発が行われないという保証はまったくない。沖縄をはじめ日本は第一線、「浮沈空母」にさせられかねない。
日本の運命はアメリカ次第ではだめだ。アメリカに縛られない自主的で平和な生き方が求められる。それは文字通り民族全体の課題である。

「自立」の欺瞞外交は袋小路に

安倍首相は「戦後日本外交の総決算」を掲げ、自立をめざし安倍政権で実現するかの幻想を煽ってきた。しかし、その一番の目玉だった対ロ関係は完全に行き詰まり、「拉致」問題を棚上げした日朝関係打開もめどは立たず、日韓関係は国交正常化以後最悪である。
国民の多くが心配した日中関係について安倍首相は「完全に回復した」と強弁し、昨年秋の訪中時に中国が提唱し進める「一帯一路」についても「協力」をうたいあげた。今、財界にもせかされて習近平主席の訪日実現に躍起である。
そうした中でこの4月、第2回目の「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが北京で開催された。だが、前回参加した米国も日本政府も出席せず、自民党二階俊博幹事長の参加にとどまった。日本はアメリカに縛られて進められないのである。
逆に、安倍首相も、河野太郎外相も、世界を飛び回って国民の血税をばらまいて、「積極平和外交」という名の中国包囲網形成の外交を進めている。5月18日も河野外相は中国のすぐ西側タジキスタンで中央アジア5カ国と外相会合をもち、「質の高いインフラ投資」を進める方針を示した。「巨大経済圏構想『一帯一路』で同地域に影響力を広げる中国」を牽制した。
対米関係に縛られた安倍政権は日中関係も独自には進められず、「自立外交」どころか近隣で完全に孤立状態、八方ふさがりである。

求められる国民的闘い
野党に野党らしい奮起を期待する

こうした情勢にもかかわらず野党各党はこうした深刻な問題に関心が薄いように見える。
米中関係にも、貿易戦争にすらもほとんど発言せず、アジア近隣諸国との関係、日韓関係にも日朝関係にも触れない。安倍政権の危険極まりない日米同盟強化路線に対抗しない。沖縄県民の声にすら真剣に向かい合おうとしない。対中国も、対韓国も、対朝鮮政策ではとりわけより強硬路線を要求するような場面すらたびたびである。いったいどうしたことか。
日本の、民族全体に共通する課題、国の運命に十分な関心を払わなくて、どうして国民的な支持を得られようか。選挙でも中間層を含む広い支持獲得は困難である。すでに触れた二階訪中団には、経団連会長はじめ財界だけでなく、県知事など地方自治体首長や農協関係者なども含まれていた。安倍政権の側は、まったく欺瞞的だが国民の多くが心配する日中関係にも気配りしているように演出し、中間層の支持を引き付けようとしている。
野党各党は野党と言うのであれば、日米同盟強化路線ときっぱりと手を切って「米中の覇権競争に関わらない」、自主的で平和な道を対抗軸として打ち出す時である。国政を争う参院選でも争点化すべきだし、そうした野党共闘が求められている。
文字通り広範な国民的戦線を形成し、自民党政治を揺るがし打倒する国民運動を発展させなくてはならない。その時である。

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