「地域の農林水産業振興促進議員連盟」の1年間

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事務局長・山田 俊男さん(参議院議員)に聞く

地域が栄えて国が安定してこそ暮らしが豊かに。地域を支えている一番は農林水産業。そこにこそ予算を付けないといけない。

 私は富山県の農家に生まれ、祖父も父親も農協役員をしていて農業・農村にずっと関心があり、自然と農協を職場に選びました。縁あって国会議員にもなりました。
 ところが、ここ十数年の国の政策の焦点は、規制改革であり、成長戦略でした。
 そして第一次産業である農林水産業は無駄が多い、合理化が必要だ、規模拡大を図るべき、生産性向上を急ぐべき、とする攻撃の対象でした。またJAも抵抗勢力として改革すべき対象にされました。
 私はこの間、「納得がいかない」気持ちで過ごしてきました。「なぜもう少し農業・農村を、そしてそこに存在する農業者と農地を前向きに評価し、政策の重点として位置づけられないのか」そうしたことばかりを考えてきました。
 それゆえ、同じ思いを持つ議員と議論し仲間と集い、議員になりたての頃に立ち上げた「参議院農業・農協研究会」をはじめいろいろな議連をつくり、その事務局長を買って出ていたのです。

地域の農林水産業振興促進議員連盟を発足

 地域の農林水産業がますます元気をなくしているなかで、平成30年に入ったあたりから、地域の振興を進める議員連盟をつくれないかとする声が随所からあがっていました。とりわけ、急速な高齢化と人口減が進む中山間地からは、悲鳴と諦めの声があがっていました。
 市場原理と新自由主義的な政策が唱えられ、農業以外の会社の参入や、農地法を改廃すべきとする乱暴な提言すらなされるような動きが増してきました。
 そうしたことに反発するかのように、田舎や条件不利地域や、地域の主要産業である農林水産業を元気にする政策を検討し、推進しなければならないとする意見が澎湃として起きてきたのです。
 これを受けとめ、地域そのものを取り上げた議連ということで竹下亘先生を会長に、「地域の農林水産業振興促進議員連盟」が結成されました。まさに市場原理主義と新自由主義的な政策への対抗軸として立ち上げられました。私は事務局長を仰せつかりました。
 平成30年3月15日、多くの議員の参加のもとに第1回総会を開きました。現在の加入議員は100人を超えます。
 竹下亘会長は冒頭で、「田舎を支えるにはどうしたらよいか。地方が壊れれば、都会も壊れる。農林水産業が活力を持つ必要がある。地域を支えてきた農業者等を支えてきた農協、漁協、森林組合がこれからどうなっていくか」「われわれが考えていかなければならないことは、経済合理性だけで物事を割り切るのは学者の理論であって、政治ではない。徹底的に田舎を守っていくという決意で、これが自由民主党の大きな方向性であると認識している」とのあいさつをされました。

規制改革推進会議の進め方に、全く納得がいかない

 2回目総会は、元東大教授(現在は福島大学教授)の生源寺眞一先生をお招きし、「『農政のあり方を考える』─過去20年を振り返って」をテーマにご講演をいただき、「農業政策に関しては、農林水産省の食料・農業・農村政策審議会が本来の役割を果たさなければならない」と提言いただきました。
 産業競争力会議や規制改革推進会議からの提起について、先生は「規制改革推進会議からの問題提起の多くは、短期的な成果主義と成果誇示のスタンスが強いのではないかと思います」「政策がめざすビジョンの具体像や、検討プロセスに関する対外的な説明は不十分だと思います」「加えて、政策転換に伴うリスクを回避する姿勢が弱い」と指摘されました。
 さらに先生は、「壊しさえすれば良くなるといった議論さえ聞こえてくる状態にある」「短期的な成果主義は問題がある。矢継ぎ早に打ち出される改革について、事後的な検証・評価が不可欠であり、また政策形成のプロセスが見えにくい点も気がかりだ」と、率直におっしゃっていただきました。

経済界の指示のもとで「とんでもない提言」がなされている

 私が大きく懸念するのは、この規制改革推進会議の運営やメンバーのあり方だけでなく、大きな悪い流れがつくられているということです。
 というのは、日本経済調査協議会の報告書(平成29年5月)を見たのですが、まさに戦慄が走りました。

日本経済調査協議会の報告書「日本農業の20年後を問う~新たな食料産業の構築に向けて~」は以下のURLからダウンロードが可能。

http://www.nikkeicho.or.jp/wp/wp-content/uploads/syokuryou_houkokusyo.pdf

 その報告の骨子は私がまとめると次のようなことになります。

  • これまでの農業政策は後ろ向きであり、現状維持ないし平均的な農家の維持を目的に行われてきた。
  • 日本農業の成長は、皆が手を携えて仲良く歩みを進めるものではない。
  • したがって日本農業の20年後に明るい未来を見るためには、フロンティアに立とうとしている農業者・企業の活躍の場を広げなければならない。
  • 農業経営者の能力を最大限発揮する制度改革を行うことである。
  • これまでの農政で農業経営者の最大の足かせになっていたのはコメの減反政策である。
  • 生産調整と飼料米生産の対策をやめて、日本の国内市場におけるコメ価格は20年後までに国際価格に限りなく近づけるべきである。
  • 制約と規制が重くのしかかる農地制度が問題である。
  • 農地が市場を通じて流動化するシステムが必要である。
  • 問題は、農外から新規参入と所有に厳しい規制があることである。
  • 農地法を撤廃する、農地の管理や転用規制は地域の土地管理委員会のような審議会に任せる。
  • 農地指定を受けた土地では誰でも自由に農地の取得と利用を可能にする。
  • 農地中間管理機構が進まない以上、さらに抜本改革する。
  • 平均的農政から脱却し、最先端の農業を積極的に後押しする。

国民全体の意識が常に農業や環境に向くようにして持続可能な社会に

 第5回の総会では、東京大学名誉教授で前文化庁長官の青柳正規さんを講師にお招きして、「国・地域・ひとづくりと農業─文化の側面から」と題して、講演をいただきました。
 先生は、講演の最後に、「わが国の農村にあって、もっとも重要なことは、農業従事者の高齢化や担い手の減少であって、これに対しての妙案がないなかで、まず農業が国にとって重要である、持続可能な社会を実現する。その中核に農業と環境があるということを、皆で声を大きくしていただいて、国民全体の意識が常に農業や環境に向くようにして、そのことによって、持続可能な社会に少しでも近づけなければならない」とおっしゃっていました。
 まさに、「わが意を得たり」です。地域が国を支え、地域を支えているのは農業です。
 国の政策は、「地域を元気にする」ことを基本に行わなければなりません。地域が栄えて、国が安定してこそ暮らしが豊かになるのです。そして、その地域を支えているのは、農林水産業です。
 ヨーロッパの国々も、そして米国も地域を支える農業と、その担い手の経営と所得の安定に、しっかりと予算を付けて政策を推進しています。

欧米並みの経営所得安定対策が不可欠だ

 これ以上の農産物の自由化、グローバル化の動きを断固としてはね返す一方で、国内農業における万全の対策が必要です。すなわち、コメをはじめ、各作物の経営安定措置をしっかり点検し、万全な対策が講じられなければならないのです。
 ところが、わが国の農業支援への対策は、ヨーロッパ、米国等に比べて、十分なものとは言えません。

各国の農業所得に占める補助金の割合等

 

農業所得に占める

補助金の割合(%)

農業生産額に対する農業予算比率(%)
2006年 2013年 2012年
日本 15.6 30.2(*) 38.2
アメリカ 26.4 35.2 75.4
フランス 90.2 94.7 44.4
ドイツ 69.7 60.6
イギリス 95.2 90.5 63.2

出典:鈴木宣弘、磯田宏、飯國芳明、石井圭一による報告書より作成
*日本の2013年の数値は2016年の数値を使用
 農業所得は、農業粗収益から支出経費を控除し、補助金を加えたもの  

 確かに新たに収入保険制度が導入され、担い手経営安定法による米・畑作物の収入減少影響緩和対策(いわゆるナラシ)等の制度も引き続き存続していきますが、TPP関連対策で強化された牛肉・豚肉の経営安定対策(いわゆるマルキン)と比べても、ともに補てんの基準が低く、補てん割合も十分ではありませんし、燃油高騰などコスト高による所得減には対応できません。これらの対策がさらに充実されないと、経営の継続性が確保できないと考えられます。
 地域の農業を大切にし、担い手と後継者をしっかりと確保する。そのための思想と制度の改善が必要です。今の規制改革推進会議の進め方に、全く納得がいっていません。
 皆さんとも力を合わせて、農産物の自由化、グローバル化の動きをはね返すとともに、地域農業対策として経営安定措置を実現するため頑張ります。

「地域の農林水産業振興促進議員連盟」の趣旨
 近年の我が国の農林水産業は、経済・社会の国際化、自由貿易の促進のなかで、それなりの生産を伸ばしてはいるが、その一方で海外からの農産品や加工食品や木材製品等の輸入拡大が進み、自給率を引き下げるとともに、担い手の著しい高齢化が進み、とりわけ、条件が厳しい中山間地の耕作放棄、鳥獣被害、山の荒廃等が増大している。
 こうしたなかで、政府は国土や農地の基盤整備の強化や、需要に応じた生産の拡大、農林水産業の担い手の育成・確保に政策・予算対策を講じてはいるが、食料や材木等の自給率の低下が進んでいる。
 また、これまで、地域の農林水産業を支えてきた農協や森林組合、漁協等の協同組織は、多様な活動を展開してきているが、現下の環境の大きな変化に苦しんでいる。
 こうした事態にどう対処するか、そして、国民理解のもと、政策をどう講じていくか、懸念を持つ有志議員による議員連盟を設立するものてである。

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