米国の対中国「新冷戦」戦略でアジアに戦乱の危険

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日中平和友好条約発効40周年

軍事大国化の「強い日本」ではなく、自主的でアジアの共生をめざす国に

『日本の進路』編集部

 日中両国は10月23日、戦争状態を法的に解消し平和と友好協力関係を確認した平和友好条約発効から40周年の記念すべき時を迎えた。安倍首相は25日、「日中関係を新たな段階に引き上げていきたい」と、日立製作所の中西宏明会長(日本経団連会長)はじめ約500人の財界人を引き連れて中国を訪問、習近平主席はじめ中国政府指導部はこれを歓迎した。両国は、「新たな時代にふさわしい新たな関係」を構築することで合意し、第三国での52件にも上る経済協力の共同展開や5年間で3万人の青年交流などを含む多方面の友好協力関係強化を約束した。
 当然にも日中両国政府にはそれぞれ思惑はあるだろう。しかし、尖閣諸島問題を契機とした深刻な対立状態にはとりあえず終止符を打った。
 一衣帯水の両国関係の平和的強化はわが国の真の国益にかない、アジアの平和にも資するものである。友好協力関係を両国政府だけでなく両国国民の努力でいっそう強化発展させなくてはならない。
 しかし、内外の環境を見ると日中関係は楽観できない。
 とくに衰退著しいアメリカが、貿易問題にとどまらず21世紀の技術覇権確保など全面的に中国の台頭を抑え込もうとする攻撃を強めているからである。ペンス副大統領演説などを見て「米中冷戦」が始まったというとらえ方が世界に広がっている。米中間は、「熱い戦争」の可能性すら含む予断を許さぬ状況となった。
 そうなれば沖縄をはじめとする在日米軍基地はその最前線となりかねない。アメリカは、対中国戦力の鉄砲玉として日本の軍事大国化を認め、そそのかすだろう。それはアジアに戦争の危険を高め、日中関係に再び取り返しのつかない破綻をもたらす。
 日米同盟に縛られたままのわが国では、この米中対決の中で自由に振る舞う余地は極めて狭い。アメリカの「対中冷戦戦略」に加担せず、自立し自主的な平和外交を進めなくてはならない。わが国とアジアの平和と安全、発展のために、アメリカの対中冷戦政策との闘いが戦略的に重要な課題となった。
 日中平和友好条約から40年のいま、過去の侵略戦争の歴史をしっかりと反省し踏まえて、アジアの平和のために真剣な努力が求められる。

40年間で激変した日中関係

 日中両国の相互関係はこの40年間に劇的に変化した。
 この40年間に世界のGDPは8兆ドルから80兆ドルへとちょうど10倍となったが、わが国は204兆円から546兆円へと倍ちょっと増えたにすぎなかった。
 一方中国は、40年前から「改革開放」と市場経済化を進め、GDPは80倍強の15兆ドル近くとなった。2010年にわが国を上回り、日中の経済的力関係は逆転し、いまや中国のGDPは日本の3倍に近い。
 中国は、この経済力を基礎に政治・軍事面でも力を強め世界政治で存在感を高め、間もなくGDPはアメリカを上回るだろうとみられるまでになった。
 こうした中国はわが国最大の貿易相手国となった。両国間の貿易は、条約締結の1978年には輸出入合わせて1兆円にとどまっていたが、今日44兆円(2017年度)と約44倍に増えた。同じ期間に、わが国の世界貿易は4・2倍増にすぎない。
 貿易にとどまらず資本関係、技術・学術、文化、人的相互交流や観光での往来など、日中関係は全面的な発展を遂げた。日中間の経済交流ではわが国が中国の発展に貢献したのも間違いないが、同時にわが国の経済発展が中国に大きく依存していたことも明らかである。
 さらにそれは単に二国間関係にとどまらず、韓国やASEAN諸国などとの経済関係の発展ともつながっている。東アジアの経済関係は、かつての「雁行形態」などと言われたような日本を頂点とする垂直分業的な関係から、水平な経済ネットワーク(グローバル・バリュー・チェーン)となって発展している。
 この強国となった中国といかなる関係を構築するか。中国をはじめアジア諸国との関係を今後どのように発展させるか、わが国の将来がかかっている。

両国関係の平和的発展は政治の責任

 対米従属のわが国は、アメリカに安全保障を依存するだけでなく経済主権まで譲り渡しながら、しかもごく一部の輸出大企業が儲けただけだったが、対米関係中心に経済成長を図ってきた時代は過ぎ去った。
 いまや、中国などアジア諸国との経済関係が大きな比重を占めている。成長率を加味すればアジアは圧倒的な存在感である。それだけでなく第4次産業革命で経済や社会、政治まで激変が進んでいる中でどのような国づくりをするか、安倍首相の臨時国会所信表明を待つまでもなく今後のわが国にとって決定的に重要な課題となっている。こうした技術面でも中国の存在感が日に日に強まっている。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)の本年度調査は、とくに大企業で「中国ビジネス拡大」の動きが2年続けて強まっていると報告している。中国側の提唱で、両国の官民で協力し自動運転技術の国際標準づくりに向けて連携する合意なども進んでいる。
 日中両国の、さらにはアジアの諸国の連携は発展の原動力である。中国の強国化を日本は受け入れなくてはならない。隣が豊かになって蔵を建てたからといって腹を立ててはならない。
 それはひとえに日本政府の対応にかかっている。
 この1年、政府の一定の前向き姿勢もあって40周年を記念し両国間の平和と友好協力を促進しようとする行事、取り組み、相互交流などが両国の各地、各方面で実にさまざま取り組まれてきている。「尖閣諸島問題」を契機に6年前の国交正常化40周年の時に予定されていたさまざまな行事、交流の多くが中止に追い込まれたことを振り返るとまさに様変わりである。「最悪」といわれた状況は変わったかに見える。対立ではなく平和と協力関係発展へ、さらに歩を進めなくてはならない。
 民間の調査によると中国人の対日感情は大きく好転しているにもかかわらず、日本人の対中感情は悪いままである。これにはわが国政府や政治家、マスコミなどの責任が大きい。とくに、重要ではあるが日中関係の一部にすぎない尖閣諸島問題や、ましてや域外の南シナ海の問題などを毎日のように騒ぎ立て国民の間に嫌中感情、反中国感情をあおってきた結果にほかならない。
 安倍首相は国会の所信表明で、「強い日本」を新しい国づくりの目標と掲げた。この間も、「中国の脅威」や「朝鮮の核ミサイル」などの危機感をあおって醸し出した雰囲気を、軍事力増強と集団的自衛権行使などの軍事大国化を正当化し、また、選挙戦を有利に進めたり政権浮揚に利用したりと内政に最大限利用してきた。
 「強い日本」を目標に安倍政権は、これから中国などアジアにどう向き合おうというのか。植民地支配と侵略戦争の反省の上にある平和主義を謳った現憲法まで変えようとしている。これではアジア諸国との友好協力関係は進まず、日本の真の国益にかなわない。

安倍政権は実際には何をやっているのか?

 安倍首相の訪中と日中間の合意は、関係を安定・発展させるものとなるであろうか。
 安倍首相は訪中に先だって香港のテレビ・インタビューで、中国の「一帯一路」構想について「透明性が確保され債務国の持続可能性、債務健全性等の確保」という前提を付けたものの、「日本もそういうプロジェクトについて協力をしていきたい」と述べた。さらにはトランプ政権とも合意している中国包囲網のインド太平洋戦略についても、「自由で開かれたインド太平洋という考え方も『一帯一路』構想を掲げる中国とも協力できる」と手直ししていた。
 二階俊博自民党幹事長や斉藤鉄夫公明党幹事長などが参加し10月12日に開催された「第8回日中与党交流協議会」は、「『一帯一路』を含む経済協力の推進」で合意した。「一帯一路」構想での協力は、すでに企業も動き始めており財界はそれを望んでいる。
 こうした協力が進めば、両国関係と広くアジア諸国の経済発展に結びつき、平和で安定したアジア地域の実現に役立つのは間違いない。それはわが国が生きる道である。
 安倍首相が舵を切ったのであれば結構なことである。米中対立が深まる中で、対米一辺倒には国内各層の間に不安が広がっている。それに応えようとする側面、国内政治的な狙いもあるのだろう。
 しかし、安倍首相は対中友好関係も口にしながら、同時に、中国包囲網の強化の外交と自前の軍事力強化で「強い日本」を進め、自立した日本を演出しようとしている。背景には、海外事業展開を強めている大企業、多国籍化した大企業が政治の支援、軍事力でも裏打ちされた国際的発言力強化を求めていることもある。
 わが国政府の動向を全体としてみると「衣の下の鎧」である。
 直近の主な動きだけ見てみても10月10日、日豪2+2(外務・防衛)閣僚協議を行い、「法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋地域を維持・強化」の協力強化を確認。安倍首相は、北京から帰国の翌28日にはインドのモディ首相と首脳会談を行い、さらに11月にはオーストラリアに出かけて日豪首脳会談を予定し、どちらも「インド太平洋戦略」促進を確認する。安倍首相は10月16日からスペイン、フランス、ベルギーを訪問し各国とも「自由で開かれたインド太平洋の実現に」協力を確認した。
 軍事面でも露骨だった。9月13日には、南シナ海に海上自衛隊艦隊を派遣、対潜水艦を想定した訓練を実施。新設された陸自の「水陸機動団」と米海兵隊による「離島奪還」の共同訓練が10月5日から種子島周辺で行われた。年末の防衛大綱改定などで「敵基地攻撃能力」確保など軍拡路線に変わりはない。
 日中関係強化の「法衣」を着たかに見える安倍首相だが、その下の「鎧」も日に日に強化されている。安倍政権の日中友好協力関係強化にいささかも幻想を持つことはできない。

対中冷戦戦略に踏み切ったアメリカ

 周知のように戦後の日中関係は、国交正常化以前も、1972年の国交正常化それ自身も、それ以後も、ずっと米中関係に大きく規定され、対米従属の日米関係に縛られてきた。
 いま、衰退するアメリカは強引な巻き返し策動に出ている。とくに、アメリカを上回る猛スピードで登ってきている第2の大国中国をたたき落とそうとしている。
 ペンス副大統領が10月4日の演説で、「長期にわたる対決が始まった」という対中国戦略を「国家意思」として表明した。ニューヨークタイムズ紙が「新たな冷戦の前触れ」と評したように、かつてソ連を滅ぼした長期にわたる冷戦が宣言されたとの見方が広がっている。昨年12月の「国家安全保障戦略」で、中国とロシアをアメリカの支配する世界秩序に挑む「修正主義」国家と規定した方向の具体化である。
 ペンス演説は多方面にわたるが、軍事面でも強硬である。「われわれは核兵器の近代化を進めている。新たに最先端の戦闘機や爆撃機を配備し開発している。新世代の航空母艦と軍艦を建造中だ。かつてないほど軍隊に投資している。宇宙における優位性を維持する宇宙軍を設⽴するプロセスを開始する。抑⽌⼒を構築するためにサイバー世界における能⼒を向上させる」等々と。まさに宣戦布告に等しいものだった。
 この対中冷戦戦略の宣伝役、かつ安倍首相訪中前の対日牽制役としてか、エドワード・ルトワックなる戦略家と称する人物が日本に来て恫喝的世論工作を行った。その中でルトワックは「長期的な対決が始まった。米中の対決は習近平政権、共産党の体制が終わるまで続く」と断言した。
 他方、トランプ大統領は20日、中距離核戦力(INF)廃止条約からの離脱を表明し、中国に対抗する「使える新型核兵器」の開発に着手する方針を示した。先だって南シナ海では航行の自由作戦なる軍事挑発で、対抗する中国海軍との間で「あわや衝突」という状況すら発生している。ルトワックは、「仮に中国艦が米艦に衝突すれば、米艦にたたきのめされるだけだ」とまで述べて中国を挑発した。米中間は一触即発で「熱い戦争」の可能性すら含むような予断を許さぬ状況となった。中国が「中国製造2025」で技術大国となることを進めるここ数年が当面の山場である。
 米中の経済関係の深さ密接さから、米中冷戦などありえない、できないという楽観的な見方もまだある。しかし、そうした人びとにペンスは警告する。「(最近は政府の政策の結果)企業家たちが中国市場に参⼊することについてためらっている。しかし、もっと多くの⼈がこの後に続かなくてはならない。例えば、Googleは…」と、名指しでグーグルに迫った。
 これはアメリカの国家的戦略決断である。英国フィナンシャル・タイムズのグローバル・ビジネス・コラムニストであるラナ・フォルーハーは「(米中冷戦で)企業が進む先には、事業の存亡に関わる本質的難題が立ちはだかる」と警告する。
法外な負担を求められる日本、日米間の矛盾激化は不可避
 力の衰えたアメリカの対中国戦略は、従属国日本の負担と犠牲なしには成立しない。
 すでに9月の日米首脳会談では、為替主権を奪う為替条項やISDS条項(資本家対国家紛争条項)など日本の経済主権を制約する日米FTAを進める事実上の合意がなされた。大量の米国製武器を言い値で購入する約束もさせられた。これにはわが国財界や自民党国防族からも反発が上がった。
 アーミテージ元国務副長官やナイ元国防次官補らのアメリカの超党派グループは「21世紀における日米同盟の刷新」を10月3日に発表、「日米合同統合任務部隊」の創設や「米軍と自衛隊の基地共同運用」などを提唱した。
 このようにアメリカは完全な日米一体化で対中国戦略を実現しようとしている。わが国の経済主権も、軍の一体化も、戦後の形式上の独立国の形すら危うくなっている。
 こうして日米間の矛盾は各方面で激化し、それは日本国内の諸矛盾の激化となって現れる。安倍政権の対中政策での幅のある対応はこうした情勢の反映でもある。
 世界支配維持のために強引な巻き返しに出てアジアに戦乱を招きかねないアメリカの策動を許さず、中国などアジア諸国と手を握り平和のための先頭に立たなくてはならない。「強い日本」の軍事大国化ではわが国とアジアの平和を守ることはできない。戦乱を引き起こしかねない米軍にアジアから出て行ってもらうのが一番である。

保守派に広がる「対米一辺倒」への不安と動揺

 アメリカの衰退、中国の強国化の中で、従属的な日米関係への動揺が保守層、支配層の中に広がっている。中国との連携強化を望む声は財界にも強い。
 「『米国第一』のトランプ政権の登場は、日本が米国一辺倒から自主的な外交を展開する余地を生んだ。中国との連携は国際社会における日本の存在感を高めることにもなる」(『毎日新聞』10月27日社説)という判断もあるのであろう。
 対米従属関係を見直すべきとの意見は自民党や各層のリーダーたちにも出ている。
 例えば元⾃⺠党副総裁⼭崎拓⽒は、「⽇本の外交安保政策⾃体が対⽶従属でやってきたわけだから、対⽶従属⼀辺倒を改めないと新しい外交路線は出てこない。(安倍政権に従⽶路線の⾒直しは)できない。戦略がない」と断言。聞き手の毎日新聞元論説委員長の倉重篤郎氏は、「⾃⺠党国防族のボスだった⼭崎⽒から、従⽶外交の⾒直しという⾔葉を聞けたのは収穫だった」とコメントした。自民党のあるリーダーは、「日本は、日米安保という異様で、変わった安保を維持してきた。これはサステナブル(持続可能)なものか」と発言している。
 日米同盟路線の限界と保守層の動揺が鮮明になっている。
 だが、鳩山由紀夫民主党政権の崩壊を見るまでもなく、日米同盟強化路線に異議とまでもいかなくても疑問を唱えるだけで両国の諸方面から包囲、引きずり下ろされる。かつて日中国交正常化を遂げた田中角栄首相もそうだった。
 安倍首相も「対中接近」をアメリカがどう見るか心配になったのであろうか。訪中直前の16日に側近の谷内正太郎国家安全保障局長をワシントンに派遣し訪中の意図を説明、「十分理解」してもらったと読売新聞は伝えた。
 戦後70年間に形成された対米従属体制は日本の政治、国家をからめとっている。横田、横須賀、座間と空・海・陸の米軍が首都東京を包囲しにらみを利かせる態勢は変わらず、およそ世界の独立国には他にない異常事態が続いている。米軍が支配する日米合同委員会は日本の官僚体制をがんじがらめにしている。
 「強い日本」をめざす安倍首相だが、この対米従属体制から抜け出すことはできない。結局、対米従属下で軍事大国化だけが進み、アメリカに引きずられてアジアに戦雲を招きかねないのである。「戦後日本外交の総決算」というのであれば対米従属こそ総決算しなくてはならない。
 戦後70余年続いた「対米従属政治体制」の全体と闘わなくては、日本が平和的に自主的な道に踏み出すことはできない。そのための国民的世論と力の結集が必要である。

野党も国の運命に責任を持たなくてはならない

 野党各党はこうした事態にもっと切り込まなくては役割を果たせない。
 アメリカの衰退と米中冷戦という事態をきちんとリアルにとらえて、日本の将来、平和と繁栄の国づくりに積極的に発言すべきである。日中平和友好条約40周年というのに、目立つのは政府と財界だけではあまりではないか。
 参院選への野党共闘も必要でないとは言わない。だが、目前のこと、枠組みだけではどうにもならない。
 肝心なことはこの歴史の節目でどのような日本、国家をめざすかである。この情勢下で「日米同盟は大事で深めていく」といった姿勢では、わが国の運命に責任を持っていないと見られても仕方がない。
 米中冷戦は長期に続くことになる。アメリカに引きずられる日本では大事な隣国、中国はじめアジア諸国との平和的共生の道が閉ざされる。
 国の運命を自民族の手に取り戻し平和なアジアをめざすために、しっかりとした一歩を踏み出すことが求められている。

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