従属関係極まる米軍基地職場

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今こそ平等な日米関係を

與那覇 栄蔵・全駐労沖縄地区本部委員長に聞く

■労働者の権利守れない基地職場の現実

 全駐労は在日米軍基地で働く従業員を組織して、北は青森の三沢基地から沖縄まで、全国7つの地区本部があります。現在、全国では2万5千人くらいの従業員が働いていますが、そのなかで全駐労は1万6千人ほど組織しています。沖縄では8千700~800人くらいの基地従業員がいますが、このなかで約6千人、70%くらいを組織しています。
 在日米軍基地が職場という特殊な環境ですから、いろいろなジレンマというものを抱えています。わが国は日米同盟を基軸に防衛政策を掲げ、政治・経済あらゆる分野でアメリカと密接に関わってきました。「従属関係」とよく言われますが、実は基地の職場に集中的に問題が露呈しています。
 日米安保条約の下に日米地位協定があり、在日米軍が日本国内に基地を置き、あらゆる権限がそこで認められていますが、その地位協定によりそこで働く者も制約を受けています。地位協定では「排他的基地管理権」ということで米軍は何でもできる権利を与えられているので、日本国内で日本人の従業員を雇っているけれども、国内法さえも未適用の実態があります。労働者としての権利は日本国内と同じようには認められていません。
 例えば、日本の労働基準法では労使で団体交渉を行って、賃金や労働条件を労使双方が同意したら労使協定や労働協約を結んで、賃金や労働条件を改善していきますが、そうした労使協定・労働協約さえ米軍が不同意としているため結ぶことができません。また、労働者が残業する場合には従業員の過半数を占める労働組合があれば、労使で36協定を結んで初めて残業が可能となりますが、基地従業員は36協定を結ぶことができません。
 同じように、本来なら基地内においても日本の労働安全衛生法が適用されなければいけませんが、労働基準監督署も米軍の同意と同伴がなければ基地内に入れません。こうしたさまざまな点で、基地内で働く者の安全確保さえ難しい状況にあります。
 象徴的な例を挙げると、昨今アスベスト被害の問題が社会的にクローズアップされました。
 米軍基地でもアスベスト被害がありました。在日米海軍横須賀基地で働き、じん肺になった元従業員と遺族が損害賠償を求めた裁判では、「……被告(国)は、米海軍横須賀基地内における個々の作業内容や粉じん対策をほとんど把握していなかったということができる。このような状態では、不断の調査・監視をしていたということはできないし、また、必要な措置を講ずるよう働きかけることもできないというべきであるから、被告(国)は、対策推進義務を充分に尽くしていなかった」と指摘し、国に安全配慮義務の責任があったとして、原告全員を救済する国側敗訴の判決(平成14年10月7日、横浜地裁横須賀支部)が出されています。
 このように働く者の命に関わる話であっても、残念ながら日米地位協定の下での従属関係という高いカベの前では、そこで働く者の命さえ守れないのが実態です。このようなことは数え上げればキリがありません。
 日本とアメリカは同じ主権国家のはずです。ところが、米軍が基地職場のすべての権限をもっていて、米軍の同意なしにはわれわれの賃金・労働条件は変えられない。日本では最近、少子化対策が問題となって、関係法の改正などがどんどん進んでいます。しかし、基地労働者には適用されません。
 基地労働者は「間接雇用形式」ということで、雇用主は日本政府という形を取っています。そして、地位協定に基づいて、日本側が米側に労務を提供して、使用者は米軍です。つまり、日本政府という雇用主と米軍という使用者の二つの管理下に置かれています。ところが米軍の同意がないと賃金・労働条件が変えられないという制約があるので、日本政府の方針に基づいて少子化対策で法律ができても適用されません。
 この日米間の従属関係は基地内の職場にあって顕著に表れています。だから、本当に日本は主権国家なのかということを常々思いながら仕事をしているというのが実態です。私たちはそろそろアメリカとの関係を対等・平等な形にして、主権国家として、米軍基地内にあっても憲法が保障する日本人としての権利がしっかりと行使できるよう求めています。

■「国民の幸せ」を指標にすべき

 沖縄はたくさんの問題を抱えています。ご承知のようにかつての沖縄戦で県全体が焼け野原になり、その後27年間も米軍統治下に置かれ、それゆえに経済発展などが阻害され、全国と比べても経済発展が遅れ、今でも賃金水準は最下位で、子どもたちの貧困問題も深刻です。
 しかしながら沖縄のこうした現状が全国の皆さんにうまく問題として共有されない、浸透していないというところに沖縄における問題解決が遅れる原因があると思っています。日本国民が今後の日本をどうするのか。
 アメリカと北朝鮮というあれだけ対立していた国同士の首脳が会って、新たな時代が始まるかもしれない一歩を踏み出しました。
 これまで日本の防衛政策の根拠に「北朝鮮脅威論」があり、アメリカもそうした備えをしてきました。ところがそうした根拠がなくなったときに、日本はどうするのかという問題が国民のなかで広範に議論されるかどうかが肝心だと思います。日米安保に基づく国防はどう変化するのか、さらに過重な基地負担がのしかかる沖縄についてどうするのかという国民的議論がどうしても必要だと思うのです。
 米朝ともに世界でもまれなリーダー二人ですから、今後の予測はつきません。しかし、期待もしています。こういう時期だからこそ、この国の形や未来、国民が豊かさを享受できる国に向けた議論を起こすチャンスだと思っています。
 つい最近、面白い記事をネットで見ました。アメリカではトランプ政権が誕生しましたが、トランプ大統領は差別を拡大して、言いたい放題で、自分の身内だけ登用したりと社会的に反発が強まっています。そのなかで、「ポリティカルコレクトネス」(政治的に正しい表現)というものが求められているという記事でした。日本もそうした視点が必要じゃないかと思っています。
 また、本当に日本は「幸せな国」なのか。この視点を政治の一つの指標にしてもらいたいと思います。「国民は幸せなのか」「この国は平和な国か」ということが指標になって、追求されるのであれば、現在の沖縄のような現状にはならないだろうと思います。

■沖縄への「同情」だけでは前に進まない

 日米地位協定がアメリカ政府、米軍に絶対的な権力を与えている問題についての指摘があるわけで、そこはしっかりと取り組まなければいけません。
 連合本部の方針でも地位協定について基地労働者の課題を含めて改定すべきと要求に組み込んでいますが、運動として必ずしも浸透していません。従属関係の下にある日米関係のなかで、沖縄県がどんなに強く地位協定の改定などを要望しても、結局「運用の改善」ということで問題が解決しません。日米関係という高いカベがあっても、基地被害を受けたり、貧困といわれる経済状況など沖縄県が置かれたりしている状況について国民の皆さんに分かってほしいと思います。沖縄だけで「困った」「けしからん」とどんなに言っても、国民の共通意識にならなければ、変わりません。そうした視点を国民連合の皆さんや、地方議員の方々などに共通認識として活動してもらいたいと思います。
 例えば「日米安保は国策だ」と言います。ところが、その負担のほとんどを沖縄に押し付けているのが実態です。日米安保によって、日本は防衛予算を諸外国に比べて抑制できた面もあって、経済発展したわけですよね。一方、沖縄は米軍に占領されて、今でも過重な基地負担で全然恩恵を受けていません。自分たちは意識をせずに沖縄に「タダ乗り」をして豊かになったという認識が国民の間で足りないような気がします。
 私が疑問に思っていることがあります。原発の問題です。あの「3・11」で福島原発が事故を起こしました。そして、電力供給との関係で沖縄県を含めて、料金を上乗せされました。しかし、沖縄は原発の受益者ではありません。受益者は東京都民や関東近辺の人たちです。しかし、受益者ではない沖縄県民にまで負担を求めているわけです。沖縄で米軍の事件や事故が起きても、「沖縄の負担を国民全体で分かち合おう」という話は全く出てきません。これは一種の差別ではないでしょうか。
 「フリーライダー」(タダ乗り論)という言葉があります。沖縄に基地を押し付けて成立している安保への「タダ乗りじゃないの」とわれわれからは見えます。その是非についての議論が起きない限り、沖縄の未来は今とあまり変わらないと思うのです。国民の皆さんが、まずは日本の未来についてどういう形で平和で豊かで、平等で暮らしやすい国にするのかということがしっかりと議論されて初めて沖縄の問題が正当に議論されると思っています。
 沖縄県や県民はこれまでもこうしたことを発信してきました。ところが現状を見ているとそれを受け止める姿勢が本土にはないように感じます。「沖縄は大変だ」という同情だけでは問題は前に進みません。

■国民の生活要求を基礎にすることが重要

 沖縄の側でも考えなければいけない問題もあると思っています。実は基地問題も大きな課題ですが、沖縄でも経済や、子どもたちの貧困、県民生活の問題など変えていかなくてはいけない問題がたくさんあります。県民同士がいがみ合う状況から抜け出さなくてはいけないと思うのです。子どもたちが未来を夢見ることが可能で、努力すれば幸せになれる、沖縄にある豊かな自然や伝統文化に誇りがもてるような努力も必要です。こうした点について私たちも県内の地方議員の方々と意見交換をしたり、あるいは沖縄県にもそういう方向性を求めたりしています。こういう沖縄の現状の克服も併せて必要だと思います。

 「森友・加計問題」について多くの国民はダメだと思っていますが、安倍首相の支持率はあまり落ちていません。安倍政権は「賃金が上がった」と表現します。わずかでも上がれば多くの国民は「安倍政権が景気を回復させてくれた」という受け止め方です。そうなると、「森友・加計問題」などは大きな問題とは思わず、消極的にせよ、安倍政権を支持するという構図になってしまいます。
 アルバイトなど非正規雇用だとしても雇用が増えて、失業率が減ればいいと思ってしまう。株を持ってたくさんもうけている人もいるが、自分は貧困層ではなく、少し出費を控えれば生きていけるから何も問題がないという意識は強いと思います。
 だから、国民に対して、「格差社会で大変だ」と言っても届かないのです。確かに安倍政権は金持ち、一部の富裕層のための政権だと指摘されています。だからといって、スタンスの違いや自分たちの価値観ばかりを強調するのではなくて、現状について国民はどう思っているのかというところにまず立脚すべきだと思います。「格差社会だから国民はきっと不幸だと思っている」ということで、だから「一部の人たちに利益が回っていて、けしからん」とだけ言えば支持を得られるだろうという発想では国民はついてこないと思います。
 この間の沖縄県内における首長選挙などを見ていてもそう感じます。ちょっと刺激的に聞こえるかもしれませんが率直にそう思うのです。全国的にも野党が有効な対抗勢力として自公与党に対抗できていない大きな一つの要因だと思います。
 不十分であっても、鳩山政権が誕生したときの民主党は「国民の生活が第一」と言って、国民の共感を得られました。ところが政権に就いた途端、国民の意識と乖離した政策と運営をしたので国民からの支持を急速に失ったというのが実際ではないでしょうか。
 だから、野党に、国民の視点、生活者の視点があれば、そこから国民の理解が広がると思うのです。
 労働組合の立場から見ると、私たちはユニオンショップではなくてオープンショップですが、組合員の要求に応えないと組織率は下がってしまいます。そこを丁寧にしないと共感を得られないし、組織にも入ってくれません。労働組合、あるいは沖縄から見ていると、国民の視点を気にしていない、そういう気がしてなりません。

■全軍労のこと 先輩たちから学びながら

 全軍労を立ち上げて、初代の委員長に就任して占領下の沖縄における運動を引っ張り、本土復帰前の国政参加特別措置法に基づいて行われた衆院選で当選して、国務大臣を歴任した上原康助さんが昨年8月に亡くなりました。上原先生がよく言っていたのは、「勉強しなさい。勉強というのは知識だけでなく、人との付き合い方や、人と話すときの温度についてもだ。そういう勉強のなかから労働運動が生まれてくる。そこを怠ったらダメだ」ということでした。
 強い信念の人だからあつれきもあったり、いろいろ言われたりもしましたが、揺るがない素晴らしい人でした。実は私からが全軍労の経験をしてない委員長です。私は全軍労の闘争を経験していませんから、先輩方からいろいろなお話をしていただきました。そうした先輩方の努力をつないでいくことが私の使命だと思っています。
 そして、立脚すべきは組合員の立場です。そうしなければ労働組合は存続できません。だから、私たちは、そういう視点で先輩方の運動を引き継いで、組合員の目線や立場で物事を考えて、方針をつくって皆と相談をしてやっているつもりです。幸いにも組織率も保っています。しかし、減少傾向も見えるので、職場の代表に集まってもらって、仲間を一生懸命増やそうと呼びかけ、この3カ月間で組合員が増えました。やはり、その人の立場に立って伝えるという努力を熱心にやることが重要なのでしょうね。
 組織として思いを伝える力をアップさせることが大事ではないかと思い、リーダー研修会なども開催して、基地労働者の身分、日米地位協定、労働者の権利等について勉強しています。
 この国の政府でさえかなわない「世界一の権力者」である米軍と日々闘うのですから、大変です。しかし、先輩方はこれまで基地従業員の権利を守って、賃金・労働条件をアップさせていくという離れ業をよくやりました。国ができないことを一人ひとりの労働者が集まって、まさに団結という信念の下で成し遂げてきたのだからすごいですよ。

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