労働運動の社会的役割を考える

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北海道の課題と労働運動がめざすもの

連合北海道会長 出村良平

オスプレイに抗議して街頭宣伝する出村会長(中央)
オスプレイに抗議して街頭宣伝する出村会長(中央)

 今回北海道で開催された第14回全国地方議員交流研修会は、夕張市視察を盛り込むなど内容的にも充実し、意義深いものであったと思います。交流研修会の呼びかけ趣旨には、21世紀日本の縮図である北海道で開催とありました。

人口減少が日本で一番早く進む

 さて、増田寛也さんの『地方消滅』にも詳しく述べられているのですが、北海道は、人口減少が日本の中で最も早く進みます。北海道の人口は、1995年がピークで569万人でした。その人口が、2015年には、30万人ほど減って538万人になっています。40年には、人口推計で419万人、そこまで減ってしまう。
 人口減少は、当然にも労働力人口の減少をもたらします。これは私たち連合にとっても非常に大きな問題です。特に若年層の減少が、「2018年問題」などとも言われていて、18歳の高校卒業生人口が減り始める。今、北海道の高校卒業生は4万6千人ほどですけれども、10年後には4万人くらいになってしまう。6千人というのは相当大きな数字だと思いますけれども、そのくらいのペースで減っていく。そんな減り方です。ただ、実感としては、私もそうですけれども、なかなか感じきれないのですが、ここにきて、中小企業を中心に人手不足が叫ばれるようになってきました。

深刻なJR廃線問題、北海道は解決策出す姿勢も見せない

 人口減少問題と併せて、今、北海道を悩ませているのが、JR北海道の一部路線廃止問題です。JR北海道は、昨年の16年11月に、「10路線13区間」を単独では維持困難な路線として発表しました。それは、全体では1237キロメートルにも及び、対象になる沿線自治体は56市町村にまたがり、道内179市町村のうち約3割にあたる規模になります。関係自治体や道民には衝撃が走りました。道民の足の確保の問題、つまり交通権をどう保障していくのか、農産物等の運送は大丈夫なのか、北海道の観光に重大な支障を来すのではないかなど不安や怒りが交錯している状況が続いています。
 しかし、いまだに解決の方向性が見いだせていません。関係自治体は反発していますが、北海道もそれらの問題を引き受けて、解決をめざす強い姿勢が見られません。JR北海道も国に支援を求める姿勢がほとんどうかがえず、単独での路線維持は難しいの一点張りのように見えます。なぜこのような状況になっているのか。それは、JR北海道が問題の所在をはっきりさせていないからではないでしょうか。
 1987年に国鉄が分割民営化される際に、沿線に人口が少ない北海道において、鉄道事業を維持していくのは難しいことから、JR北海道には、6822億円の経営安定化基金が積まれ、その運用益で赤字を補塡していくスキームがつくられました。しかし、バブル崩壊以降、運用益の利回りは低下し続け、特にここ数年、アベノミクスで日銀がつくり出した低金利、マイナス金利政策の影響で、当初描いた運用益は大幅に減少し、運用益で赤字を補塡しながら経営を維持していくことが困難になってきました。
 JR北海道は、この間、大幅な人員削減等で労働者を犠牲にした合理化努力を行ってきました。当該関係労働組合も、何度も労使交渉で苦渋の判断を迫られてきました。分割民営化当時1万2700人ほどいた職員が現在では7千人ほどまでに減少してきています。したがって、JR北海道は、この間の経営努力を説明しながら、経営スキームが崩れてしまったこと、言い換えれば国の責任を明確にし、国からの支援をもっと主張すべきであると思います。責任の所在が曖昧で、国に支援を要請しないJR北海道の姿に関係者はいらだちを覚えているわけです。したがって、こういった姿勢の中で、関係自治体に路線廃止や上下分離方式を求めても理解が得られるはずがありません。どこの自治体も財政的余裕などありません。
 国への要請などはオール北海道の行動として追求していかなければ実現しないと考えられますので、今後はその枠組みづくりが求められてくると思います。このことが当面する課題です。

国策で進められてきた産業の衰退

 次は雇用の課題です。まずは、安定した雇用の場がどんどん失われてきました。炭鉱の閉山に象徴されるように国策で進めてきた産業の衰退、地方行政改革による公務員の削減と公務員職場の減少、公共事業の削減、農林漁業など一次産業の衰退……と、歴史的に続いてきています。したがって、北海道の産業構造は、安定した二次産業の割合が全国に比べて少なく、三次産業、サービス業の割合が高くなっている現状にあります。
 そのことにも起因するのでしょうが、非正規労働者の全労働者に占める割合は全国平均でおよそ38%くらいですが、北海道は40%と高い。このことは、労働者間の格差が大きいということですし、安定した職場が相対的に少ないことを意味します。また、就職してから3年間に離職する割合は、全国平均が41%ですが、北海道の場合は49%と高い水準にあります。
 このことは、安定した職場が少ないことの証左ではないでしょうか。そのために、結果として、若い人たちが道外に出て行ってしまう。道内では、札幌一極集中になってしまっています。では、どうしたら安定した雇用の場をつくることができるのでしょう。
 政府はこの3月に「働き方改革実行計画」をまとめ、長時間労働の是正と非正規労働者の処遇改善の方向を打ち出しました。連合も参加した働き方実現会議での結論ですので、その方向性については、一部規制緩和の内容を除いておおむね評価しています。ただ、安定した雇用の場をつくっていくためには、さらなる努力が必要です。それは、産業・仕事の創出と仕事がしやすく生活がしやすい環境をどう具体的につくり出せるかということです。
 北海道は、道庁が音頭をとって、「北海道創生協議会」を設置し、地方創生に向けた意見交換や取り組み事例の紹介を行ってきています。私もこの中で、地方創生を展望するためには、何よりも地方に安定した雇用の場をつくることと仕事がしやすい環境をつくり出していくことが重要だと主張してきています。

地域の産業創出に努力する自治体

 自治体もいろいろ苦労しながらも雇用創出や働きやすい環境づくりに努力し始めています。北海道の十勝地方に上士幌町という町があります。十勝地方は、米沢則寿帯広市長が中心となり、「フードバレー十勝」を提唱し、食の価値の創出と一次産業の振興に努めている地域です。
 上士幌町の町長は、竹中貢さんといって、自治労の組織内町長で連合とも親しい関係にあります。上士幌町は、十勝管内に19の市町村があるのですが、1年間(2015~16年の1年)で唯一人口が増えた町です。31人増えました。その内訳は、41人の自然減(出生者32人、死亡者73人)に対して、72人の社会増(296人の転入者、224人の転出者)で、トータル31人の人口増です。上士幌町に来たい人が増えたわけで、住みやすい町づくりに成功したと言えます。上士幌町は、町に無料職業紹介所を開設し、職業斡旋の努力をしたり、さまざま補助金等を活用して、新規事業をつくり出したりで、雇用の創出に努め、一方では、保育料の無料化や住宅助成等の施策で働きやすく生活しやすい環境づくりを追求してきました。その結果、転入者を増やし、人口増を実現できたのです。
 この課題は、道政上の重要な課題でありますし、19年4月に実施される知事選でも大きなテーマになってくると考えられます。

アベノミクスで地方は良くならず、地方は疲弊するだけ

 さて、最後に安倍政権について。最近、安倍首相はあまりアベノミクスと言わなくなりましたが、アベノミクスでは地方はよくなりません。北海道がその実例を示していると思います。自治体間の競争を促していますが、それでは地方が疲弊してしまうだけではないでしょうか。地方の基金が多すぎるとか、地方交付税を削減するとか、そんな発想では地方創生どころか地方衰退を進めるだけです。地方の現実を見据えて、上士幌町の例のように、一つ一つ政策を積み上げていく努力を追求していくこと。こんな地道な取り組みが求められているように思えます。現場のニーズに根ざした政策が必要です。地方に裁量権がある一括交付金等をもっと増やすべきです。
 それからもう一つ、地方自治を進めていくことで大切なことは、民主主義と平和を実現していく姿勢です。安倍政権の立憲主義や民主主義を軽視した姿勢は目に余るものがあります。憲法違反と思われる安保法制を強行採決で成立させ、共謀罪では加計問題での追及を避けるために、参議院での委員会採決をしないまま本会議で強行採決を行いました。その後、東京都議選で自民党が歴史的敗北をし、内閣支持率が急速に低下し始めてからは、「謙虚に」を繰り返していますが、私には、どうも本質は変わっているとは思えません。

「オスプレイ反対」の意思表示で、沖縄と連帯

 今、北海道では米海兵隊と自衛隊との日米共同訓練が実施されています。その規模は、今までに例がない3千人を超える大規模なものになっていますし、何よりも8月5日にオーストラリア沖で墜落したオスプレイが6機参加して訓練が実施される内容です。夜間訓練も予定されています。オスプレイの事故は、原因究明がはっきりなされていません。しかし、米軍は事故後、すぐさま一方的に「安全宣言」を行い、北海道での日米合同訓練にオスプレイを参加させることを決めました。
 小野寺防衛大臣は、事故原因の究明と安全の根拠が示されないまま、オスプレイの参加を了解してしまいました。言語道断です。私たち連合北海道は、訓練前日の8月9日に、北海道平和運動フォーラム、北海道農民連盟、民進党北海道共催で「日米共同訓練の規模縮小とオスプレイの参加反対」の集会およびデモ行動を行いました。また、オスプレイの参加が確定した17日にも街頭での抗議宣伝を実施しました。こういった訓練は、沖縄の負担軽減を理由になされていますが、オスプレイの存在そのものが沖縄の平和と安全を脅かしているわけで、「オスプレイ反対」の意思表示を行うことが、沖縄との連帯の道であると考え、行動してきています。
 連合北海道は立憲主義と民主主義の回復、極東アジアにおける平和の実現のためにも、安倍一強政治の転換を引き続き求めていきます。謙虚に地方の声を聞いて、地道なまちづくりに汗をかいていきたいと考えています。

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