トランプ政権と日本、われわれの課題

「アメリカ第一」を拒否し、自主・平和の旗を高く掲げよう

「日本の進路」編集部

 アメリカでトランプ政権が発足しました。世界経済危機が急速に深刻化する中、貧困と格差・国内対立の激化を巧みに利用し登場した政権です。国内の危機を中国や日本など他国に押し付け乗り切ろうとしています。そうでなくても全世界で貧困化が著しい各国国民だけでなく、支配層も現状にとどまれなくなっています。支配層は、国民に犠牲を押し付け、襲いかかってくるでしょう。保護主義の高まりは国際政治をいちだんと不安定化させ、世界は戦争を含む激動となり、さまざまなリスクが高まっています。
 自国の運命を自国で決められない対米従属のわが国は劇的に揺さぶられます。日米間の矛盾はかつてなく激化し、政府・支配層は対応を迫られます。アベノミクスの破綻も明らかな安倍政権は、大軍拡予算で国民を犠牲にして、アメリカの要求に応え、かつ、中国敵視でアジアに覇を唱える反動的な野望を隠しません。
 国民各層の生活条件はいちだんと悪化し、矛盾のいっそうの激化と国民の闘いが避けられない情勢です。日米間の矛盾激化も、支配層内部のさまざまな亀裂、分化を促すでしょう。それは政治に反映せざるを得ません。
 アジアの平和、国の存亡が問われる危機に際し、「自主・平和・民主」の政治をめざす明確な対抗軸を定め、亡国の安倍政治に反対するすべての人びとを結集する壮大な戦線形成をさらに推し進めようではありませんか。

国内対立激化が生み出したトランプ政権

 アメリカの抱える深刻な危機、国内対立激化がこの激変の背景です。8年前、100年に一度と言われたリーマン・ショックの危機を「国内統一」で乗り切るために「チェンジ」を掲げたオバマ政権が選ばれました。しかし、その後も危機はいちだんと深まり国内分裂・対立激化が進んで、トランプ政権となったのです。8年前とは打って変わって、新大統領の下でも国民の再結束どころか空前の反トランプ・デモがアメリカ全土で繰り広げられています。
 新政権の政策の詳細はまだですが、この深刻な危機を乗り切る道は容易ではありません。大統領が代わっても、アメリカ経済や社会の現実には何一つ変化はないからです。
 政権の基本性格はオバマ政権など歴代政権と何ら変わりません。主要経済閣僚は、ゴールドマン・サックスの7人をはじめウォール街出身者で占められていることひとつとっても明白です。むしろ、安全保障関係閣僚に軍人出身者が多いことがこの政権の特徴でしょうか。
 トランプ政権が約束した減税や投資で財政を使って矛盾を緩和させる余地は極めて限られています。確実なのは、唯一、この危機を外に転嫁する、中国、日本、メキシコなど、他国に押し付けることだけです。すでにメキシコなどとはギクシャクしています。
 世界の経済成長は長期にすう勢的に鈍化する、いわば右肩下がりです。世界情勢の基調は諸矛盾の緩和ではなく激化です。どの国の支配層も余裕がなくなっています。
 基礎にあるのは、世界的な貧困の増大による需要不足です。最近の調査結果では、世界中のわずか8人の超セレブの総資産が、世界の全人口の下位半分の36億人分に匹敵するといいます。世界中が貧困に満ち溢れて、必要なモノも溢れているのに大多数の貧乏人にはカネがなく買えない。世界的に消費は増えようがないのです。
 この数十年、世界の大資本家たちがモノづくりなど実体経済に投資しない、金融で荒稼ぎするグローバル金融資本主義が世界を支配しました。その矛盾が爆発した2008年のリーマン・ショック後、世界の政治経済の諸矛盾は急速に激化しました。先進国でも国内矛盾が急速に激化し、国民各層の不満は高まり、政治対立は激化して、英国のEU(欧州連合)離脱など欧州各国でも、米国でも政治的激変を導いているのです。その政治変化が、さらに世界経済の諸困難を深刻化させ、諸国間の矛盾の様相を激変させます。
 昨一年を通じて、国際情勢の局面は変わったと言えます。この危機は、世界中の貧困層が食えるようになる以外に終わらないでしょう。各国支配層が強引に需要をつくり出すか。いずれにしても長く続くことになります。

中国の台頭許さぬアメリカ・・・米中間の緊張激化はすう勢

 アメリカは、衰えたりとはいえ国民総生産(GDP)で世界経済の4分の1を占め、ドルの基軸通貨国であり、随一の核軍事超大国です。そのアメリカが、経済も政治や軍事も、徹頭徹尾「自国第一主義」。すなわちそれはこれまで以上により公然と、他国に犠牲を押し付ける攻撃を強めることです。
 他方で、とりわけ中国の台頭は急で、すでにGDPでもいつアメリカを追い越して世界一になるかと注目されています。世界はこうした経済構造変化の過渡期にあり、国際政治にも変化が避けられません。中国も、「中華民族の偉大な復興の実現という夢」への挑戦を明確にしています。
 アメリカが圧倒的な経済力と軍事力を背景につくり上げた戦後世界秩序は明確に崩壊局面に入りました。まさに多極化の世界です。
 しかし、アメリカは、黙って引き下がらず、この歴史の歯車を逆転させようとしています。トランプの役回りはそれです。米中関係は劇的な波乱要因となります。
 当面しても、アメリカにとって中国は最大の貿易赤字国であり、雇用を重視するトランプ政権が経済、貿易面で対中国の圧力を強めるのは避けられません。すでにトランプ政権は、台湾問題を持ち出して「一つの中国」原則を否定してみせるなど、中国の最も敏感な問題で挑発しています。空母も派遣するなど強硬姿勢を強め、不測の軍事衝突の危険すらも想定しなくてはいけない状況となっています。不測の事態が避けられても、米中両国がいくらかの安定的関係を合意するにはしばらくの時間が必要です。
 いずれにしてもアメリカは中長期的に、中国の台頭を許さず、基軸通貨ドルの特権を使い通貨・金融面など、さまざま画策するでしょう。核戦争は避けるでしょうが、米ソ冷戦で、自らは一発のミサイルも撃ち込まずにソ連を崩壊させた経験をもつアメリカです。いっそう力衰えたアメリカが歴史を逆転せさようと金融やサイバー・宇宙空間などを含む全面「戦争」を画策するわけで、東アジア、太平洋の不安定化は避けられません。
 フランスの知識人ジャック・アタリは「17年の最大の脅威は日米と中国の紛争だ。アジアは爆発寸前の状況にある。将来、日米と中国が戦争になれば、世界戦争に拡大するだろう」と見ています。
 米支配層では対中穏健派とでもいうべきキッシンジャーも、「(米中間)大国間における1回の戦争だけでも大惨事となる。だが、両国間には文化的な大きな違いがあるだけに最も難しい課題と言える」と警告しています。

揺さぶられる日本・・・「日米同盟第一」ではなく「日本国民第一」へ 

 日本はこのアメリカに縛られ、あるいは安倍は進んでアメリカについて行こうとしています。「狂犬マティス」の異名をもつ新国防長官が、真っ先に日本を訪問するとの発表を政府、自民党は大歓迎です。マティス氏に「同盟維持のお墨付きをもらうべきだ」との声が高まっていた安倍政権では、「早期訪日は理想のシナリオ」と安堵しているといいます。安倍首相も、参議院本会議で日米経済関係について「さらなる発展、深化を図るため官民を挙げて取り組みたい」と言明しました。
 「アメリカ第一」への協力を公式表明したということです。日本は、国益を貫くことはますます不可能で、対中国戦略の鉄砲玉に使われることになります。安倍政権は日米同盟路線の破綻を隠すためにも中国の脅威を煽り、危険な道を突っ走るでしょう。
 安倍政権は、トランプ政権登場をチャンスと見て踏み出しています。大軍拡予算案を国会に提出し、軍事大国化を推し進めています。「尖閣防衛統合計画」と日米協力指針を夏までにつくるなどと戦争準備を急いでいます。中国海空軍の動きを抑え込もうと南西諸島でのミサイル基地建設など軍備増強に突っ走っています。
 外交面でも安倍は年頭から、フィリピンやオーストラリアなどを歴訪し、アメリカに代わって「中国包囲網」維持・強化に犬馬の労をとって、緊張を煽っています。自主・平和の外交でなくては、対米自立の潮流が強まるアジアで、わが国はいちだんと孤立するだけです。
 フィリピンのドゥテルテ大統領は、「安倍はミサイルを提供すると言った」と暴露し、自主路線を強めています。隣国韓国では、朴槿恵即時退陣、財閥体制解体、 終末高高度防衛(THAAD)ミサイル配置撤回などでの自主・平和の闘いが大きく発展し、慰安婦問題「解決」への批判も高まっています。
 戦争に反対し平和をめざす、発展するアジアの一員としての日本、「アジアの共生」こそ、日本の生きる道です。沖縄県民の闘いを支持し、すべての米軍基地撤去、属国協定=日米地位協定の抜本改定などの闘いを発展させ、自主・平和をめざす時です。当面して、日中友好関係と日朝国交正常化は非常に重要な課題となっています。

大軍拡予算で社会保障費削減・・・国民の生命と安全を守れない

 大軍拡の新年度予算案は、社会保障費削減など国民生活破壊で成り立っています。広範な国民各層の生活困窮化はいちだんと進み、国内矛盾を激化させるでしょう。
 日米間の経済摩擦もさらに激化し、アベノミクスの破綻は明白です。トランプは環太平洋経済連携協定(TPP)を拒否し、より強硬に米国の国益を貫こうとしています。農業などを中心にいっそう譲歩させられる2国間交渉を迫られています。日本の自動車産業を名指しで攻撃し、多国籍大企業の利益を膨張させた円安政策も攻撃の的にしています。犠牲が転嫁されて農民や中小企業、また輸出大企業の労働者にも攻撃の嵐が強まるでしょう。多国籍大企業の中にも対米関係第一ではないだろうとの不満も強まるでしょう。
 非正規雇用をなくして労働者の大幅賃上げを実現し、農民や商工業、建設業の自営業者、中小企業が営農、営業、生活できるよう政府財政を投入する内需拡大政策が今こそ必要です。
 安倍政権は、国際緊張の高まりの下で国内対立激化も不可避と見て、共謀罪導入策動など政治反動を強めています。教育や司法の反動化、さらに憲法改悪策動もテンポが速まるでしょう。反動化に反対し民主主義を擁護する課題は、激動の情勢を展望するとき非常に重要な課題となります。
 こうした内外情勢下で、わが国でも、沖縄をはじめ全国で平和と独立、民主主義への希求は高まり、アメリカに縛られない自主・平和の国、アジアの共生を求める機運が急速に高まるでしょう。昨年の選挙結果にもそれは出ていました。
 全国で、この怒りとエネルギーを結集して政治変革に結びつけることが求められています。広範な国民連合は、労働者や農民、商工自営業者や中小企業などの生活と営業のための切実な要求と闘いを支持し発展させるとともに、自主・平和・民主の広範な戦線構築のため奮闘します。

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