朝鮮半島情勢 緊張打開の道筋を考える

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2.国際的取り組み

 朝鮮半島情勢の緊張を解消・打開するためのこれまでの国際的取り組みには、1994年の米朝直接交渉による枠組み合意、2003年以後の中国主導の6者協議、2006年以後の米国主導の安保理決議による非難・制裁がある。

米朝枠組み合意

 まず米朝枠組み合意に関しては、合意履行特に軽水炉建設は遅々として進まなかったが、クリントン政権時代は、米朝双方ともに合意破棄は考えていなかった。ブッシュ政権が第2の「核疑惑」を起こさなかったならば、合意が維持された可能性はあった。朝鮮が最初の人工衛星を打ち上げたとき、米国が制裁に動かなかったことは示唆的だ。
 しかし、枠組み合意自体は朝鮮が核武装に踏み切る以前に成立したものであり、現在、この合意に回帰する現実的条件はない。むしろ、この枠組み合意が与える有益な示唆は、米朝が直接交渉する用意がありさえすれば、問題の外交的解決は可能ということだ。

安保理決議

 安保理決議による国際的制裁で圧力をかけ、朝鮮の譲歩を迫るという米国主導のアプローチは、事態を深刻化させただけでなく、国際法的に許されない行動である。
まず、米国が近年多用する制裁によって対象国の譲歩・屈伏を引き出す政策そのものに重大な疑問符をつけなければならない。ここではイラン及びロシアのケースで考える。
 米国は、イランの核問題に関する国際合意(JCPOA)が成立したのは、安保理決議による国際的制裁の圧力がイランを核兵器開発断念に追い込むことで可能になったとする。
国際的制裁が対外依存度の高い国家に対して大きな圧力となることは否定できない。イランが交渉による問題解決に真剣に取り組んだのはこの負荷の重圧によるものだったことは確かだ。しかし、イランはNPT加盟国であり、その原子力利用計画は平和目的であって、核兵器開発の意図はないと一貫して主張してきた。イランは、JCPOA成立を、原子力の平和利用の権利を国際社会に認めさせた外交的勝利と位置づけている。
 ウクライナ危機後のロシアに対する米欧による制裁は、ソ連崩壊後急速に対外依存度を高めてきたロシア経済に深刻な影響を与えている。しかし、プーチン・ロシアはそれによって政策を転換させる兆しはまったくない。
むしろ、シリアを筆頭とする中近東・北アフリカからの大量難民の流入に直面したEU諸国は、シリア軍事作戦で成果を挙げているロシアとの関係修復を望んでいる。中東政策で頓挫しているオバマ政権も、シリア問題でロシアの協力を求めざるを得なくなっている(2月22日の米露共同声明)。米欧による対露制裁は明らかに破綻している。
 朝鮮は対外開放を模索しはじめた段階であり、その対外依存度は、イラン及びロシアとは比べものにならないほどに低い。確かにその国家的生存を確保する上で、中国に対する依存度は高い。しかし、中国にとっても、朝鮮という国境を接する国家が崩壊しないことを確保し、中国の安全保障を全うすることは至上課題だ。したがって、朝鮮の崩壊をも視野に入れて制裁強化を主張する米国と同一歩調を取りうるはずはない。
次に、朝鮮の人工衛星打ち上げ及び核実験に対する米国主導の安保理決議に関しては、国際法上、重大な問題がある。
 人工衛星打ち上げ(宇宙の平和利用)は、宇宙条約によってすべての国に認められる権利(第1条)であり、宇宙条約に加入している朝鮮は当然この権利を有する。安保理がこれを制限・否定する決議を採択すること自体、不法かつ無効である。
 確かに国連憲章(第25条)により、国連加盟国は安保理決定を「受諾し且つ履行する」ことに同意している。しかし、安保理が加盟国の国際法(国際条約を含む)上の権利を制限し、禁止する決定を行うこと自体が許されるはずがない。仮に許されるとすれば国際法は反古同然となり、国際社会は5大国の意思がまかり通るヤクザの社会になってしまう。
 次に、朝鮮がNPT加盟国であれば、その核実験は条約違反であり、安保理が取り締まることにはそれなりの正当性がある。しかし、朝鮮は用意周到にもNPTから脱退した上で核実験に踏み切った。国際条約に関するイロハは「条約は締約国のみを拘束する」ということだ。したがって、朝鮮の行動をNPT違反として取り締まることはできない。
 確かにいかなる国家による核兵器開発も国際の平和と安定に対する重大な脅威となり得る。国連憲章(第7章)はそういう脅威を安保理が取り締まることを予定している。
 しかし、朝鮮からすれば、インド、パキスタン(及びイスラエル)の核兵器開発を「黙認」した安保理が朝鮮だけを狙い撃ちするのは、あってはならない二重基準であり、それに従ういわれはないということになる。
国際法を対外政策上の手段として位置づける米国は論外だが、米国の専横に対して国際法重視を主張する中国(及びロシア)が2006年以後、米国主導の安保理決議採択に同調したのは重大な誤りだった。

6者協議

 すでに述べたとおり、6者協議は、朝鮮が第1回核実験を行った後にも継続され、9・19合意実施のための措置を取ることに合意するという成果を挙げた(2007年2月及び9月)。しかし、2009年の朝鮮による人工衛星打ち上げ以後、米国主導の安保理中心の取り組みが中心となり、6者協議は中断を余儀なくされた。
 だが、今回の朝鮮の核実験及び人工衛星打ち上げ以後高まった緊張を打開すべく、中国は改めて、「半島の非核化と停戦協定を平和協定に代えることを併行して推進すること」を主題とする6者協議再開を提案した(2月17日の中豪外相会談及び同3日の中米外相会談)。問題は、朝鮮南北及び米国がこの提案に応じるかどうかだ。
 韓国は、朝鮮の第4回核実験及び人工衛星打ち上げに対して過剰反応を示している。すなわち、南北和解の象徴とも言うべき開城工業団地の閉鎖を一方的に決定した。また、3月から開始する米韓合同軍事演習では、朝鮮首脳部を除去する「斬首作戦」演習を行うことを公言している。
 米国は、任期1年弱となったオバマ政権がレーム・ダックである。しかも同政権は、アジア太平洋リバランス戦略を打ち出し、この地域に米戦力の60%を集中する政策を遂行している。強大な軍事プレゼンスを正当化するためには「朝鮮脅威論」を手放せない。
 朝鮮は、2015年以来、6者協議は成果を挙げなかったとして、米朝直接交渉による問題解決を主張するようになった。しかも6者協議の行われた時期とは異なり、朝鮮はいまや核保有国であると自己規定し、その立場での交渉を主張している。

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