国際情勢・政治一覧

米中激突の東アジア、問われる日本の進路 2-2

第17回全国地方議員交流研修会 ■ PART2 パネルディスカッション

中国での人権や自由への弾圧を
どう考えるか?

羽場久美子

 ありがとうございます。
 重要なご指摘ありがとうございました。中国の「人権侵害」への批判はしていくべきだと思いますし、経済の問題だけで日中関係を考えるわけにいかない、というのもそのとおりだと思います。ただそれを、中国は専制主義だから民主化しなければならない、軍拡しているからこちらも対抗しなければならない、というのは違うのではないかと思います。 続きを読む


9・18満州事変90周年

友好・交流を下地に「日中不再戦」

広範な国民連合代表世話人 原田 章弘

 日米共同宣言で菅は「反中国」「台湾」の踏み絵を踏んだ。前安倍政権はQuad(クアッド)で「中国封じ込め」を提起し、以降も、米同盟国が香港、台湾を巡って東アジアの対立を煽っている。横須賀を母港とする米第七艦隊が台湾海峡の警戒航行を繰り返す。日本は米の対中戦争を許すべきでないし、協力もすべきでない。 続きを読む


経済同友会「日中経済交流の役割」報告

特に経済面では、両国が相互に補完し、
互恵関係を築くことが重要

 企業経営者が個人として集まる公益社団法人経済同友会は6月、「日中経済交流の役割」と題する、2020年度日中交流PT活動報告書を発表した。報告は、「日本が、同じアジアの一員として中国と接し、欧米諸国と中国の関係性強化、国際社会の安定に貢献することは十分可能である」と、冒頭に断言する。政界やマスコミから「中国脅威・敵視」が振りまかれる厳しい状況下ではあるが、なおかつ多くの企業家、経済人が日中関係の発展を求めていることを示している。「中国は敵ではない」「アジアの共生だけがわが国の活路」である国の進路を実現する上で重要な意義をもつ提言である。
 (以下要旨、編集部。全文は、https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/210608a.pdf) 続きを読む


「価値の同盟」は機能するか?

東アジアは「新冷戦」の舞台となるか?

神奈川大学教授・青山学院大学名誉教授 羽場 久美子

 

 20世紀の二つの世界大戦後、アメリカは「価値に基づく秩序」を形成しようとした。コロナ危機が頂点にあった時に大統領に就任したバイデンは、6月に英国で開催されたG7(主要7カ国)首脳会議で、二つの大戦に続くパンデミックの「戦後」に向け、中国の権威主義に対し自由と民主主義の同盟に基づく「価値の同盟」を提案している。
 それは新しい「封じ込め」による「新冷戦」をもたらすのだろうか? 続きを読む


柳条湖事件90周年 ■中国なしに日本経済は成り立たない

中国は日本の敵ではない 

 
アジアサイエンスパーク協会名誉会長(元神奈川県副知事) 久保 孝雄
 
 7月7日は盧溝橋事件の日。84年前の深夜、北京郊外の盧溝橋で起きた発砲事件を機に両軍が交戦、8年に及ぶ日中全面戦争に発展した。3500万の死傷者、5600億ドルの被害(中国側発表)を受けた中国は、「9・18」(満州事変。1931年関東軍の謀略事件、満州国建国へ)とともにこの日を絶対忘れない。

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緊急の国民的課題は二つ

貧窮化極まる生活危機打開と中国「敵視」政策の撤回

『日本の進路』編集部

 「総選挙を待ってはいられない」と、コロナ被災者支援に取り組む反貧困ネットワークの瀬戸大作事務局長は訴える。職も住居も失う労働者、営業困難に陥っている中小零細商工業者などの実態は厳しく緊急の支援が待ったなしだ。コロナ禍中、オリンピックどころではない。国民生活と経済が直面した危機的事態に、国と地方自治体の抜本的な対策が求められる。 続きを読む


「国際協調」演出のG7サミット

「対中国包囲網」で最後の悪あがき

本誌編集長 山本 正治

 G7サミット(「主要7カ国」首脳会議)がイギリスで6月13日まで開かれた。「民主主義国」が結束して中国に対抗していく決意を確認したと伝えられる。トランプ時代と違って、形の上では「協調」が世界に印象づけられた。バイデン米大統領は「満足している」という。 続きを読む


「抑止一辺倒を越えて」を提言して

日本は嬉々として米国陣営の「雄」となり、「熱戦」の道を進むのか

NPO「新外交イニシアティブ(ND)」

代表・弁護士 猿田 佐世

 米中対立は激しさを増す一方であり、このままでは「新冷戦」にとどまらず、この地域で「熱戦」が起き、日本も戦場になりかねない。世界も米ブロックと中国ブロックに二分されていく。この状況下で日本には、軍事力強化の声しか存在しないかのような空気である。筆者が代表を務める新外交イニシアティブ(ND)では、この事態を強く懸念し、安全保障についての政策提言書「抑止一辺倒を越えて~時代の転換点における日本の安全保障戦略」を発表した。ぜひ、ご注目いただきたい。 続きを読む


米中対立を乗り越えて沖縄の基地負担軽減を

復帰50年の現状は日本という国家の堕落の象徴

沖縄国際大学准教授 野添 文彬

 

 近年、米中対立が激化し、特に台湾海峡における緊張が高まっている。3月9日には、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)が、「6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と発言した。 続きを読む


中国と私の85年

「天の呼ぶ声」に導かれた中国との関係

早稲田大学名誉教授・元総長 西原 春夫

「盧溝橋」の形で登場した「中国」

 1937(昭和12)年7月7日、盧溝橋事件が勃発した。その後、支那事変(現在でいう日中戦争)、大東亜戦争(現在でいう太平洋戦争)へと拡大していくきっかけになった事件である。 続きを読む


盧溝橋事件、柳条湖事件記念日――歴史を鑑とすべき

「尖閣問題」 何故、中国と話し合わぬのか

『日本の進路』編集部

 7月7日は、1937年に日本の中国侵略戦争が本格化した盧溝橋事件の記念日である。9月18日には中国侵略を始めた柳条湖事件(「満州事変」、1931年)から90周年を迎える。

 日本は歴史を鑑に、発展し強国化する隣国中国と向かい合わなくてはならない。アジアの共生だけがわが国の生きる道である。 続きを読む


中国共産党設立百周年への特別な感懐

命がけで活躍した中国人青年の想いが乗り移った私

早稲田大学名誉教授・元総長 西原 春夫

 今年7月1日、中国は共産党設立百周年の記念式典を予定している。百年前の7月23日から上海で開かれた初め

ての全国代表大会(以下「中共一大」と略称)で正式に共産党が設立されたのを祝賀するためである。
 私は日本人だし、共産主義者ではないから、中国人と同じような感情は持っていない。ところが不思議にも、私にはちょっと違った特別な「感懐」がある。これは誰にも見当つかないだろう。早稲田大学の元総長である私にとっては、共産党の設立を含む中国の近代化にそれこそ命がけで活躍した多くの中国人早稲田大学出身者の想いが乗り移っているからだ。 続きを読む


「新冷戦」を回避するために

中国にとってはもはや
どうやって米国を超克するかが問題ではない

東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

 

 

アメリカ傾斜を強めた日本のメディア

 アメリカでバイデン新政権が発足してから、日本の主流メディアの中国に関する論調が変化した。アメリカはトランプ政権時代から中国への攻撃を続けてきたが、トランプ時代には、日本のメディアはアメリカの立場から距離を置いていた。中国からの広範な輸入品に対して関税を上乗せするアメリカの措置はWTOのルールに反しているので、日本のメディアは米中貿易戦争の展開をあきれ気味に報じていたし、ポンペイオ国務長官が新疆ウイグル自治区における人権侵害を「ジェノサイド」と呼んだことに対しても必ずしも同調していなかった。
 ところが、バイデン政権になって、中国に対するアメリカの攻撃的な姿勢が弱まるどころか、むしろ中国に対する非難と圧力を強めるようになると、日本のメディアの論調はすっかりアメリカ寄りになった。トランプ前大統領の極端な個性に発するとみられていたアメリカの対中政策がバイデン新大統領にほぼ継承されたことによって、まるでそうした政策の正しさが証明されたかのようである。 続きを読む


日米首脳会談 ■ 台湾問題の「踏み絵」を踏んだ菅首相

安全保障も経済も 「反中国同盟」ではわが国はやっていけない

『日本の進路』編集部

 日米首脳会談が4月17日、ワシントンで行われた。そこで菅首相は、米国の覇権維持のための対中国戦略に全面的に合意し、日米同盟の深化、「防衛力を強化すること」を約束した。
 米国の「日本を前面に立てて中国を抑え込む」策略に取り込まれた。中国は当然にも猛反発している。焦点は台湾問題である。東アジアの政治・軍事、経済の緊張は一気に高まる。 続きを読む