敗戦80年 ■ 歴史を踏まえ対米自立、アジアに生きる日本へ

第一歩は日米地位協定の抜本改定から

『日本の進路』編集部

 今年は戦後80年、敗戦80年である。より正確には二つの敗戦、一つは日米戦争でのわが国の敗戦であり、もう一つはアジア侵略戦争での日本の敗戦である。
 80年も前の出来事であり、今を生きる日本人の大半が生まれる前の敗戦である。しかし、昔のことではない。この二つの敗戦は、今もわが国の抱える根源的課題のまさに源である。
 「日米戦争敗戦」で米軍占領下から始まった戦後日本は、対米従属で国家主権も著しく制約され、人権すら守れぬ国のままである。
 侵略戦争の敗戦。それは80年前、アジア各国・人民の解放戦争勝利で終わった。アジアの状況は本来ここで一変した。だが、わが国はこの歴史をしっかりと受け止めなかった。朝鮮民主主義人民共和国とはいまだ国交も結べないままである。
 しかし世界は今、米欧日の帝国主義に歴史的に蹂躙されてきた中国をはじめグローバルサウスと呼ばれる国々が勃興を遂げ、世界を平和と発展へと導く努力を強めている。「進んだアジア」である。
 他方、衰退する米国ではトランプ政権再登場に象徴される「自国第一」、他国を犠牲に生き延びようと画策を強める。わが国はどちらの側に立つのか。
 敗戦後80年、しっかりとした道を定めたい。

外国軍隊が80年間も居座る独立国はあり得ない

 敗戦から80年、いまだに戦勝国米国がわが国に軍事基地を置く異常さを改めて直視する必要がある。外国軍隊が80年間も居座るなど、およそ独立国にはあり得ないことだ。だが、わが国政府と対米追随勢力にはその自覚もない。米軍は、わが国の主権と国民の人権を一切顧みない傍若無人だ。
 特に日米戦争で「本土防衛」の犠牲となった沖縄は、サンフランシスコ講和条約で日本が形式的独立を実現した後も1972年まで米軍統治下に捨て置かれた。その後も、米軍基地集中政策で負担を強要されてきた。本土日本国民も十分に闘えなかった。敗戦80年に際し、全国は心すべきだ。
 それだけでない。米国駐日大使は昨年5月、台湾を臨むわが国最西端の沖縄県与那国島に米軍人を伴って訪問し、「台湾有事は日本有事。抑止力が重要」と戦争挑発した。日本と中国、アジアを対立させようと画策する。とりわけトランプ政権になって、策動を強めるのは間違いない。
 グリーンランドやパナマ運河もよこせという政権である。軍事費5倍増くらいで済むはずがない。トランプは日本にも、「ただ乗りをしている。だから全額払え。払わなければ、米軍は撤退する」と恫喝する。
 結構だ。米軍には日本から出て行ってもらおう。沖縄の人びとは、対中国戦争の報復攻撃を恐れる必要もなくなるし、米兵の凶悪犯罪の恐怖から逃れることができる。
 敗戦80年、米軍の撤退を求めようではないか。

進んだアジアと共に

 明治維新直後以来わが国は「富国強兵」路線で「遅れたアジア」に大国としての登場を試みた。植民地支配から大陸への侵略戦争、幾千万の民を殺害、強姦など暴虐の限りを尽くし富を奪い焼き尽くし破壊荒廃させた。そして80年前、当然にも諸国民の解放戦争に敗北した。
 しかしわが国は、近隣諸国に与えた筆舌に尽くし難い苦しみ損害をキチンと受け止め反省し賠償などしてこなかった。
 こうした敗戦後も今なお引きずるわが国の抱える根源的課題が改めて浮き彫りになっている。今や、「失われた30年」で経済低迷する日本である。ましてや近隣諸国と緊張関係を抱えたままで繁栄できるはずがない。
 長年の敵国同士だったドイツとフランスが、戦後処理を正しく行い平和的関係を築いたにとどまらず、経済共同体からEUにと、安定的な関係を築いた歴史と比べれば一目瞭然だ。
 他方、中国はGDPで日本の5倍近くの大国に興隆した。韓国も1人当たりGDPで日本を上回る。「進んだアジア、立ち遅れた日本」である。日本の平和と発展に、これら近隣諸国との良好な関係は不可欠で、共同体形成の重要さは明らかである。
 その選択が敗戦80年の今年、厳しく問われる。

地位協定改定の一点で
幅広い共同を

 沖縄では殺人や強盗、女性に対する強姦などが頻発、80年たっても事態は変わらずむしろ深刻化する。昨1年だけで米兵の性暴行事件が5件も発覚、凶悪犯事件が1992年以降で最多となった。日本国憲法が保障する「基本的人権の享有」すら認められない沖縄、この事態をわれわれはいつまで許すのか。
 沖縄では女性たちを先頭に12月22日に県民大会が開催された。日米政府に抗議し、被害者への謝罪と精神的ケア、完全な補償、米軍構成員を特権的に扱う日米地位協定の改定などを求めた。しかし、米軍が言う「綱紀粛正」と裏腹に米兵は昨年11月にも性暴行、県警が1月8日に書類送検した。
 県民大会実行委員会は、1月22日に緊急抗議集会を開催し、怒りの声を上げた。
 沖縄に応えて全国で地位協定改定の声を上げなくてはならない。すでに沖縄県議会は昨年7月に地位協定改定を決議、同様に県内すべての市町村議会が昨年中に改めて決議している。
 石破首相も、地位協定改定を主張している。財界にも、日本製鉄のUSスチール買収問題への米大統領の介入やわが国大企業の対中経済関係への内政干渉がましい圧力に不満が高まる。
 対等な日米関係へ、見直しを迫るチャンスである。自主的な政権でなくては米国のたくらむ「日中衝突」回避は容易でない。
 まずは日米地位協定抜本改定で、主義主張、立場の違いを超えて共同しよう。沖縄を先頭に全国で声を上げよう。全国の自治体議会に意見書決議を呼びかける。
 米国は安全保障に「核の傘」を振りかざす。結構だ、唯一の被爆国日本は「非核三原則」堅持こそが最大の核安全保障である。
 敗戦80年の今年、自立の日本へ第一歩を記そう。

最低でも米軍に国内法を適用する

 沖縄県は、地位協定問題について米軍の駐留する世界各国での調査など熱心な努力を続けている。2024年の最終的な報告書は次のように結論する。
 「ヨーロッパ4か国では、国内法の適⽤、基地の管理権、訓練・演習への関与、航空機事故への対応の全ての項⽬において、それぞれの国が⾃国の主権をしっかりと行使していることが分かった。その⼀⽅で、⽇本においては、全く主権を放棄しているかのような状況が明らかになった。…(各国では)それぞれの国の実情に応じた形で地元⾃治体への説明や意⾒聴取等を実施していた。さらに、⽶軍機事故の際にも、受け⼊れ国が主体的に関与している状況であった。
 このような状況がNATO、ヨーロッパの標準的な状況であると考えられるが、これに対し、⽇本では原則として国内法が適⽤されず、⽇⽶で合意した⾶⾏制限等も守られない状況や地域委員会設置、主体的な事故捜索、基地内への立ち入り権確保等が実現していないなど、NATO・ヨーロッパとは大きな違いがあることが分かった」と。要するに、「⾃国の法令を⽶軍に適⽤させ、⽶軍の活動をコントロールしていることを確認した」と断言する。
 しかも、教訓に富むこととして「ドイツ、イタリア共に、米軍機の事故をきっかけとした国民世論の高まりを背景に、地位協定の改定や新たな協定の締結交渉に臨み、それを実現させている」と。
 動かすのは「国民世論の高まり」である。