終わらない水俣病
県は被害者の立場にたて 県知事に要請行動
今年5月1日、「水俣病犠牲者慰霊式典」後の環境省と患者団体との懇談会で、患者団体の発言をたった3分間で一方的に打ち切るという、まったく理不尽な事態が引き起こされた。熊本の木村知事もその場にいたが、何も言わないままだった。しかも木村知事は、後日の記者会見で「大臣はつるし上げになっていた」と発言し、水俣病被害者のことなどまったく考えていないことが暴露された。
この事態に、長年にわたって苦しんできた水俣病被害者や患者団体、また、支援者の団体は直ちに抗議した。地元マスコミも大きく報道し、県民の多くも、国や県の仕打ちに怒りの声を上げた。
私たち「自主・民主・平和のための広範な国民連合・熊本」は昨年の11月に結成後、農業問題や生活問題での取り組みや県知事選にも対応してきた。今度の事態に世話人の中から、「県知事への要望書」を出すことが提案された。相談して5月28日、福山洋共同代表と6人の世話人が参加して県知事への「要望書」を提出した。熊本県議会の立憲民主連合の4人の議員の協力を得て同席してもらった。
解決のため行動するよう木村県知事に要求する
その後の経過で、国が水俣病患者や被害者のことをまったく考える気がないことがいっそう明らかになった。環境省は最初、「発言抑止」を謝罪する方針を明らかにする一方、「再懇談の場は考えていない」と言い、再懇談が避けられなくなったら、再懇談の日程を先延ばしにして7月にずれ込んだ。
また、環境省内に、「水俣病問題の解決を強めるため」と言われてつくられた省内横断組織の「水俣病タスクフォース」は、後になって、再懇談の場を設定するだけの組織にすると、役割が後退させられ、再懇談が終われば解散とも言われている。
再懇談の場でも、環境相は水俣病の基準見直しを否定した。団体側は「ゼロ回答だ」と反発。「環境省のかたくなさの表れ。こんな姿勢で解決の糸口が見つかるのか」と怒っている。
こうしている間にも、7月2日には県の水俣病認定審査会で、より厳しい限定的な国の基準によって、13人の申請が棄却された。裁判所の判決では認められる人の認定も棄却されている。現在の運用が始まった2015年以降、熊本では1607人が棄却された。現在の未処分者は319人、うち7人が亡くなり、32人が申請から10年以上経過している。見捨てられ、切り捨てられる状況が公然とまかり通っている。
同じく水俣病問題を抱える新潟県の花角知事は毎年、未認定患者救済策の抜本的な見直しを国に求めている。同じく認定業務を担う鹿児島県は、「認定申請業務の円滑化」を国に要求している。熊本県の木村知事も、知事選公約で「水俣病を防げなかった県の責任を重く受け止める」と言っていた。その言葉が本当ならば、水俣病患者や被害者、県民の立場にたって、はっきりと国に要求すべきである。
5月以来の事態は、水俣病が終わっていないことを、県民に知らせるところとなった。私たちはこれからも、水俣病患者や被害者、支援団体と協力し、運動の広がりのために尽くし、解決のための具体的な行動をとるよう木村県知事に強く要求していく。
(熊本事務局 渡邉浩)