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[新春メッセージ]水岡 俊一

2100年代を生きる子どもたちのために

参議院議員(参議院会派「立憲民主・社民」議員会長) 水岡 俊一

 昨年後半を振り返ると、10月20日に第212回臨時国会が開会しました。会期は12月中旬までの約2カ月という短さでした。その間に衆議院長崎4区、参議院徳島・高知選挙区の補欠選挙が行われるなど、慌ただしい日程となりました。10月22日投開票の徳島・高知の参議院補欠選挙では、2004年の同期当選仲間である広田はじめさんが見事に当選し、参議院へと戻ってきました。ともに参議院で活動できることをうれしく思います。
 この補欠選挙は、自民党議員が秘書への暴力行為を理由に議員辞職し、その欠員補充のために実施されました。そのような事情があったとはいえ、野党の統一候補である広田はじめさんがダブルスコアに近い圧勝となったことは、有権者がいまの自民党に対して不満をもっていることの表れではないでしょうか。
「大学の自治」の危機
 今回の臨時国会は短い会期中に、多くの法案が可決されました。とりわけ問題だったのは、「国立大学法人法の一部を改正する法律案(国大法改正案)」です。この法案は、大規模な国立大学法人に中期計画や予算などを決定する「運営方針会議」という合議体の設置を義務づけることなどを盛り込んでいます。問題はさまざまありますが、改正法が「合議体の委員を文部科学大臣が承認する」と定めていることは大きな問題です。つまり、大学が合議体の委員を決定しても、文科大臣によって任命拒否することが事実上可能となります。これは大学の自治を完全に侵害しているとして、大学教員などの大きな反発を招きました。
 政府は、「委員の承認の申し出は明らかに不適切などと認められる場合を除き拒否できず、大学の自治に反するという指摘はあたらない」と言いますが、菅義偉政権下で日本学術会議の会員任命拒否が起きたことを思えば、今後絶対にありえないとは言い切れません。なぜなら、日本学術会議の会員任命についても、1983年の国会で当時の中曽根康弘総理は「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と説明し、所管大臣も「推薦された者をそのまま会員として任命する」と答弁していたからです。ご存じの通り、2020年の菅政権下では、解釈変更のないまま6人の任命を拒否する事態が巻き起こりました。任命を拒否した理由は、いまだに明らかになっていません。
 そもそも、運営方針会議の設置対象は当初「国際卓越研究大学のみ(現在の候補は1校)」だったのにも拘らず、今回の改正案では「一定水準の規模と政府がみなしたすべての大学法人」へと突如拡大しました。また、「一定水準の規模」の範囲をいくらでも政府が調整することができるため、将来的にはすべての国立大学へ対象を広げるのではとの疑念が残ります。
 参議院では文教科学委員会で、蓮舫筆頭理事を先頭に鋭く政府を問いただしました。これだけ多くの問題をはらむ中、与党は拙速な審議を進め、残念ながら法案は可決されてしまいました。立憲民主党は、今後のさらなる改正も視野に、政府の動向を注視していきます。
過酷な学校現場
 昨年は、文部科学省が行った教員勤務実態調査の結果が公表され、教職員の働き方についての衝撃的な実状が明らかになりました。この調査では、持ち帰り仕事の詳細までは調査しきれていませんが、それでも月80時間残業の「過労死ライン超」は、小学校教諭の14%、中学校教諭の36%にも及んでいます。この結果をもとに、国は教職員の働き方を真剣に見直していく必要があります。何より、教職員の過重労働は、本人や家族はもちろん児童生徒たちに大きな影響を及ぼします。また、このような働き方では、教職員を志望する学生が増えるわけもありません。
 いま学校現場に必要なのは、定数増と給特法の抜本的な見直しです。給特法とは「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」のことで、この法律があるために公立学校の教員には原則的として時間外勤務手当や休日勤務が支給されていません。その代わり、給料月額の4%に相当する額が「教職調整額」として支給されています。つまり、4%というわずかな額で「定額働かせ放題」となっているのが現状です。
 この給特法については、長らく国会で廃止、改正の訴えを続けていますが、昨年少し動きがありました。与党自民党が給特法に関する特命チームを作り、「教職調整額」のパーセンテージ変更などについて議論を行ったのです。しかし、大切なのは調整額の割合ではなく、現在の膨大な業務量がどれくらい減るのか、正規の勤務時間がきちんと守られるのかということです。与党で行われている議論は、残念ながら学校現場の実態を知らなすぎるものになっています。立憲民主党は昨年、現場の声をもとに作った「給特法廃止・教職員の働き方改革促進法案」を国会に提出しました。
 給特法改正については、今年の国会で議論が始まる可能性があります。教職員が子どもたちと向き合う時間をしっかりと取ることができるよう、委員会審議では給特法の廃止も含む抜本的な改善を求めていきます。
相次ぐクマの被害
 今国会も引き続き環境委員会に所属しました。11月16日、伊藤信太郎新大臣の所信に対する質疑で、危機が迫る気候問題と頻発するクマ問題などについて、大臣に問いました。
 23年は、国内でのヒグマとツキノワグマによる人身被害が過去最多となっています。各地で相次ぐ被害に、計画的に捕獲することができる「指定管理鳥獣」にクマを指定することを東北・北海道の知事が求めるなど動きがありました。環境省もようやく検討しはじめましたが、もはや検討の段階はとうに過ぎ、すぐにでも大臣が決断する必要があることを政府に迫りました。指定管理鳥獣は法律ではなく省令で追加できるため、大臣の決断により閣議決定で変えることができます。何よりも命を守るために、大臣の決断力が求められているのです。
「地球沸騰化」の時代に
 気候変動を超えて、「気候危機」とまで言われるようになった時代です。差し迫る危機を傍観するのではなく、積極的に対策へ打って出る必要があります。23年は、エルニーニョの上を行く「スーパーエルニーニョ」が発生すると言われました。24年の夏にかけては、とてつもない異常気象が起きる可能性があるようです。気候問題は、いまを生きる私たちだけでなく、将来世代により大きな影響を与えます。2100年は遠い未来ではなく、今年生まれた赤ん坊が生きていく世界です。子どもたちの未来のために、私たちができる最善を尽くしていかなければなりません。
 立憲民主党は昨年、「未来世代委員会」を立ち上げました。環境エネルギー分野で活動する団体の若いメンバーで構成された委員会で、未来世代の視点で政策を幅広く検証し、提言を行っていくことをめざしています。将来的には、国会への独立調査委員会の設置を目標に、今後も活動を続けていきます。
 本年がみなさまにとりまして良い年となりますよう、引き続き国会で活動を続けていきます。ともにがんばりましょう!