都内初、常設フードパントリー「コミュニティフリッジ」

都内初、常設フードパントリー「コミュニティフリッジ」(案)について

板橋区議会議員 五十嵐 やす子

 1月30日、板橋区の来年度予算がプレスリリースされました。翌31日から複数の新聞で「板橋区がフードパントリー常設 都内初、7月に開始予定」などとの報道がなされました。子ども食堂の立ち上げ支援と合わせて、この常設パントリー「コミュニティフリッジ」関連経費2194万円を新年度当初予算案に計上しています。
 (コミュニティフリッジcommunity fridge:直訳すると「公共の冷蔵庫」。フードパントリー:食品の無料配布を行うイベント)

これまでの板橋区での取り組み

 板橋区(資源環境部)は「食品ロス」の削減と食品の有効活用のため、2016年度よりフードドライブを実施しています。現在は18地域センターで募集しています。提供された食品や飲料は、その場で必要な人に配布するのではなく、社会福祉協議会やフードバンクなどを通じ、食品や飲料を必要としている団体や施設などへ届けられています。
 また、20年度から板橋区(福祉部)は社会福祉協議会に委託をし、区と共催の形で年に3~4回、区内のさまざまな地域で、不定期で食品配布会を開催してきました。
 フードドライブ⇒フードバンク⇒フードパントリー・食料配布会・子ども食堂
 という流れが板橋区の中で、この間できてきました。

支援の実態

 私のもとには年に複数回、区内外の困窮支援をしている団体や個人などから、板橋区民から食料支援の相談が来ているので情報を教えてほしいということがあります。そのつど、情報を調べ、さまざまなところにお願いして、つないできました。
 また、コロナ禍の中で「反貧困ネットワーク」などとつながり、生活保護の同行支援などもしてまいりましたが、生活保護につなげたら終わりというものではありません。
 一方、若者、特に大学生などは、学生生活を続けながら生活保護を受けることができず、親からの仕送りやアルバイトが減り収入が減るなど、民間も含めたさまざまなフードパントリーの取り組みに助けられた人がたくさんいました。
 そのような中での板橋区の食品配布会は大事な取り組みであり、社会が回り始めたとはいえ、食品や光熱費などの高騰により、ますます求められている支援の一つです。経済的な理由により支援を必要としているひとり親世帯や多子世帯、児童養護施設卒園者、高齢者等がご利用いただけるものですが、この情報が広く届かないことに、いつももどかしい思いをしてきました。

課題 その1

 先に記したように板橋区は食品配布会を板橋社会福祉協議会に事業を委託していますが、板橋区のホームページと社会福祉協議会のホームページのリンクはありません。社会福祉協議会という存在を知らない人もいます。
 また、これまでのお知らせは、社会福祉協議会の「子どもの居場所」のサイトにありますが、配布会を利用できる人は子育て中の方だけではないものです。これでは、この事業を知っている人しか探しようがありませんでした。
 委託している板橋区に対して改善を求めても、一度に150名ほどの利用でそれ以上の用意はできないこと等、結局1年以上たっても、根本的な改善はないままです。

課題2

 また、九州グリーンコープが行っている「かさじぞう基金」は、生活困窮者の支援の一環として即日小口貸付ができるものです。緊急の場合に5000円から1万円の範囲で相談者に即決で生活資金を貸すことができます。板橋区でも同じような制度を創設できないかと求めてきましたが、実現には至っていません。
 そんな中で、現金ではなく食料品=現物支給をするというのが、この常設のフードパントリーです。
 一歩前進ではありますが、これまで同様に社会福祉協議会に事業委託します。周知の方法を、ここでしっかりと変え、幅広く周知していく必要があります。

課題3

 今回予算案に示された「コミュニティフリッジ」も子ども食堂の立ち上げ支援も、社会福祉協議会に委託するものです。今回の予算案では他に「支援対象児童等の見守り強化」も社会福祉協議会に委託します。社会福祉協議会にだけ委託していくことでいいのか、それら全てを社会福祉協議会がこなせるのか、人的配置は大丈夫なのか、などまだ見えていない部分があります。三つの事業の中身はつながっていることではあるものの、どれも大事なことのため、パンクしてしまわないようにと注視していきたいと思います。

課題4

 食料品を配布して終わりにしないことが大切です。これまでもさまざまな会に参加してきましたが、食料配布と相談をセットにし、希望すれば相談が受けられるようにすることです。話していると、本人が問題に気が付いていないこともあります。
 昨年12月の食品配布会の折には暮らし相談もできたようですが、それをこれから常時行うことが必要です。先日の予算説明会では、コミュニティフリッジでも相談につなげていきたいとのことでしたが、そのためにはスキルを持った人を配置することが必要になります。仮に福祉事務所などと連携するとしても、福祉事務所と社会福祉協議会は別のものですので、連携のこまやかさも必要となります。

課題5

 常設とはいえ、土日は休みで、夜などの対応についてもどのようにしていくのかが、今後の課題となります。年末年始、ゴールデンウイークなども同様です。これまでは年末年始などの迅速な対応が必要な場合、区の職員が対応していたのが、これからはどこが対応するのかも確認していきたいと思います。

課題6

 一方で板橋区の来年度予算案では「フードシェアリング」も取り上げています。こちらは有償となり、管轄も福祉部ではなく資源環境部となります。この取り組みとも、うまくリンクさせて、横断的な周知を進めていくことでさらに有効となります。まずは手始めとして、一日も早いお互いのホームページのリンクを求めます。

おわりに

 このように課題はあるものの、板橋区が常設のフードパントリーの設置を打ち出したことは大変喜ばしいことです。また51ある小学校区全てに子ども食堂をという意思を示したことについても、高く評価をしたいと思います。
 しかしながら、本当は常設のフードパントリーも、子ども食堂がなくても、区民が、そして子どもたちが困ることなく、心豊かに過ごせる社会が必要です。
 これは自治体だけでできるものではありません。
 国がこの現状を認識し、政策として迅速に取り組み、継続的な予算をつけることが必要です。
 まずは日々の暮らしに一番近い自治体で取り組みつつ、一方では一人ひとりが大切にされ、困窮することがない、まさに「誰ひとり取り残さない」SDGsの政治を、自治体から国に求めていくことが欠かせません。
 日本国憲法第25条「健康で文化的な最低限度の生活」を国はしっかりと理解してほしいと強く望みます。