第18回全国地方議員交流研修会 ■ 川崎市で7月23日~24日開催

コロナ禍を乗り越え地方自治体議員は連帯し、
戦争に反対し、住民の命とくらしを守る

第18回全国地方議員交流研修会  ■7月23日~24日 川崎市

 第18回全国地方議員交流研修会が川崎市商工会議所・KCCIホールで7月23日~24日開催された。新型変異株コロナの第7波が急拡大する中だったが、3年ぶりの対面開催(一部オンライン)、全体で150名余が参加した。
 ウクライナ戦争により加速した国際情勢の歴史的な激変と問われる日本の進路、まずは戦争に反対すること、食料安保の観点からの日本の農業、逼迫する医療・社会保障体制、そして生活困難者への救援などの在り方と地方議員が果たすべき役割について活発に討論し、交流が進んだ。

 具体的な行動の指針を示すアピールの採択など交流研修会として大きく成功した。


玉城デニー知事など来賓あいさつ

 第1日目全体会は、藤本眞利子・和歌山県議会議員(実行委員会共同代表)の総合司会のもと開始され、実行委員会筆頭代表の中村進一・三重県議会議員が「ウクライナ戦争のさなかの参院選があり、防衛予算が倍に増額されるなど憲法9条が狙い撃ちされている。平和・貧困・食料自給率の問題等々地域での地方議員がしっかりと役割を果たさなければならない。真剣に討論しよう」と開会のあいさつを行った。
 来賓あいさつは、まず玉城デニー知事がビデオメッセージで「本土復帰から50年たったが今なお米軍基地は70・3%が沖縄に集中している」と基地の現状を語ったうえで、「今年9月は天王山の闘いだ」と県知事選への支持を訴えた。
 次いで棚田一論日本青年団協議会事務局長が、「1956年より中国との交流を続けている。青年は二度と銃をとらないというのが原点で、アジアの国々とも友好運動を進めている。地方議員の皆さんは、各地の青年団とも交流を進めてほしい」と訴えた。国会議員の阿部知子衆議院議員、川田龍平参議院議員、吉田はるみ衆議院議員からは激励のあいさつを受けた。

羽場教授記念講演、「東アジアで戦争をさせない」自治体議員の役割

 記念講演を「ウクライナ戦争と東アジアの平和~沖縄・地方自治体を平和のハブに~」と題して羽場久美子・青山学院大学名誉教授(神奈川大学教授)が行った。羽場教授は、①ウクライナ戦争の即時停戦、②東アジアで戦争を起こさない、③日本の軍事費の増大を阻止して医療や福祉、貧困者への支援することなどを提起。世界の大きな歴史的な変化、米欧の衰退と中国・アジア・アフリカの前進などに触れ、中国・韓国・日本・沖縄・台湾・ロシアを結ぶ恒常的な対話組織の形成につなげることを呼びかけて、政府がやらない以上、全国の地方自治体が平和のハブとして役割を果たすよう地方議員が奮闘してほしいと激励した。
 沖縄からの報告は、山内末子・沖縄県議会議員(実行委員会共同代表)。1955年、6歳の少女が米兵にレイプされ殺害された事件の犯人が死刑判決を受けながらその後減刑され仮釈放されていたことが明らかになったことなど、今なお基地被害・事件が相次いでいる実態をまず訴えた。さらに先の参議院選挙で伊波洋一議員が再選勝利したことを報告、今年9月の知事選での玉城デニー知事支援を訴えた。
 実行委員会からの問題提起として山本正治・広範な国民連合事務局長が4点、①国民生活が深刻であり、諸課題貧困、食料安保、社会保障・医療等に応えること、②ウクライナ戦争から学びアジアで戦争をさせない、③参議院選挙から何を学ぶか、④地方議員の役割などについて提起、最後にアピールとして問題意識を共有し共に闘おうと呼びかけた。

「進む本土の沖縄化」の実態を各地から

 次いで「進む本土の沖縄化」というべき米軍・自衛隊基地の強化について、当該自治体議員のリレートークが行われた。大波修二・大和市議が厚木基地の騒音訴訟など最近の状況、永井友昭・京丹後市議が米軍Xバンドレーダー基地について、江口善紀・佐賀県議は佐賀空港オスプレイ配備などによりノリ業者が困難に直面していること、中川義行・宮崎市議は最近の新田原基地について、上山貞茂・鹿児島県議は馬毛島への基地建設問題を報告。姫野敦子・岩国市議は米軍岩国基地の強化についてビデオレターで報告した。
 討論の時間では羽場久美子教授も討論に加わり、地方議員との問題意識を共有化した。
 名刺交換会では地元の日下景子県会議員が司会を務め、コロナ禍で限られた時間であったが交流の輪が広がった。

「農業こそ安全保障の要」鈴木教授提起

 第2日目、7月24日は会場をサンピアンかわさきに移して午前中二つの分科会が行われた。
 第1分科会は、「日本農業と食料を守るために」をテーマに座長を今井和夫・宍粟市議、副座長を西聖一・熊本県議が務めた。鈴木宣弘・東京大学大学院教授が、問題提起「農業振興こそ安全保障の要――生消を結ぶ架け橋の強化と抜本的農業予算再編に向けて」を行った。その後、三つの事例報告――①「喜多方市の学校給食と食育(全小学校での農業科)の取り組み」齋藤仁一・喜多方市議、②「福岡の農業食料問題の取り組み」上村和男・筑紫野市議、③「北海道農業の現状と課題」松本将門・北海道議――が行われた。

「医療の再構築、困窮者の生活保障など議員のやるべきこと」伊藤教授提起

 第2分科会は、「コロナ禍での医療、保健、介護 社会保障体制を再構築するために」というテーマで座長を松尾ゆり・杉並区議が務め、問題提起を伊藤周平・鹿児島大学教授が行った。事例報告は、①コロナ禍での対政府交渉について(山田厚・甲府市議)、②医療・介護現場からの報告(河内ひとみ・荒川区議)、③和歌山県の医療保健体制について(藤本眞利子・和歌山県議)を行い、討論に移った。
 午後からは全体会で、「生活困難をかかえる地域住民のために」をテーマに、瀬戸大作・反貧困ネットワーク事務局長が問題提起を行った。さらに事例報告、①貧困者の実態と何が求められているか(小椋修平・足立区議)、②板橋区における生活保護の先進事例(五十嵐やす子・板橋区議)を行った。

アピールを採択、共同の努力を確認

 その後の全体会討論では、まず分科会報告で、第1分科会を今井和夫・宍粟市議が、第2分科会を河内ひとみ・荒川区議が行った。各分科会報告の報告と討論が行われ、アピール案が西村和子・筑紫野市議から提起され活発な討論が行われた。出された意見をもとに、全国実行委員会で成文化することが確認された。
 最後に、実行委員会共同代表の北口雄幸・北海道議会議員が、「今年は沖縄復帰50年、日中国交正常化50年という大きな節目の年。中国との友好を政府がやらない以上、友好都市を結んでいる地方自治体がやればよい。私たち自治体議員の役割は大きい。アピールを全国で具体化していこう。沖縄に連帯する、玉城デニー知事再選勝利の闘いを全国で。今後の奮闘を共にしよう」と呼びかけ、最後に故菅原文太の沖縄県民大会での発言「国の役割は二つある。一つは国民を飢えさせないこと、そしてもう一つがとても大事なのですが、それは絶対に戦争をしないこと」との話を披露し、閉会を宣言した。

全国の地方議員は政治の転換のために力を合わせよう
~第18回全国地方議員交流研修会アピール~

 私たち超党派の地方自治体議員は、7月23~24日川崎に集い、第18回全国地方議員交流研修会を開催しました。
 今日、地域経済、地域住民の生活は深刻な危機に直面しています。
 食料品など生活必需品や光熱費の高騰の一方、賃金は上がらず、多くの人が生活に困窮するようになっています。米国の金利引き上げやウクライナ戦争の影響も大きいものの、この間、一部の大企業と富裕層の利益だけを優先してきた「アベノミクス」が招いた結果です。
 食料危機に直面するいま、「食料安全保障」は国の要となる課題です。輸入に頼らない食料自給確保は国の責務です。私たち地方議員は、地域の農業生産、農家の経営が成り立つよう、農業に対する国費による十分な所得補償を求めます。
 新型コロナウイルス感染症の蔓延に見舞われたこの2年余りは、特に中小零細事業者の経営が直撃され、多くの自営業者が廃業を余儀なくされました。また政府が進めてきた医療提供体制の削減、特に公的医療の「民営化」「効率化」は「医療崩壊」の事態を招き、痛ましい犠牲も引き起こしました。私たちは地域住民の命と暮らしを守るため生活保障、及び医療施設特に公的医療の拡充、医師、看護師、保健師等医療職の増員を求めます。

 このように危機に直面する地域住民の命と暮らしを守るため、私たち地方議員は地域住民と共に国と地方自治体に対して声を上げ、危機打開のために行動します。
 いま政治には、戦争をさせない、平和を守ることが何よりも求められます。
 ロシアのウクライナ侵攻をうけて、政府与党を中心に「次は台湾有事」「台湾有事は日本有事」と、ことさらに危機を煽り、「敵基地攻撃能力」や軍事費倍増、「日米同盟強化」を声高に叫ぶ論調が目立ちます。しかし、国を守るには軍備強化ではなく、戦争を起こさせない外交の力が必要です。
 日米同盟に縛られ、集団的自衛権の行使のもと対中国の前線で軍事的に対立させられることのないよう、自主的な平和外交に転換しなくてはなりません。特に、前線基地化が進む沖縄を再び戦場にしてはなりません。沖縄をはじめ全国の米軍、自衛隊基地の強化を許してはなりません。辺野古新基地建設に反対します。憲法改悪に反対するとともに、屈辱的な日米地位協定の抜本改定を求めます。
 折しも今年は日中国交正常化50周年にあたります。その原点に戻り中国との善隣友好関係が求められます。今年は国交正常化を約束した「日朝平壌宣言」20周年でもあります。隣国である中国、韓国、朝鮮、ロシアと敵対ではなく平和善隣関係を進めることこそ戦争を防ぐ道です。
 地方自治体にも重要な役割があります。私たちは、この交流研修会で、沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークの可能性と自治体、民間の役割についても学びました。近隣国都市との友好姉妹都市の推進、核兵器禁止条約締結と東アジア非核地帯推進など、アジア地域の安全保障信頼醸成を進めるため、全国で連携して奮闘します。
 私たち地方議員は、地域、地方にこそ力があることを知っています。生活の心配なく豊かに暮らせる地域を築くため、東京一極集中の中央集権国家ではなく、エネルギーや食料の自給など地域の力を生かす、地域が自立した平和な国をめざしましょう。
 全国の地方議員のみなさん。政治的立場を超えて団結し、独立自主、アジアの平和と共生をめざす新しい政治を実現するため奮闘しましょう!

2022年7月24日
第18回全国地方議員交流研修会
参加者一同

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