自治体レベルで共同して行動を起こし、国政に発言する
第17回全国地方議員交流研修会は8月10日オンラインで開催され、北海道から沖縄まで全国34都道府県、73の自治体から議員が参加した。「歴史的転換期の世界、問われる国と地方の生き方――地方自治体議員の課題は何か?」がテーマであった。三つのパート、①「コロナ禍が暴く地域の諸課題、地方政治の役割」、②「米中激突の東アジア、問われる日本の進路」、③「大阪府の医療崩壊と維新政治」に分けて討論が行われた。
今回はコロナ感染が急拡大する中、「緊急事態宣言」が発出されている下での開催となった。Zoomシステムを使った交流研修会は初めての試みであったが、コロナ禍の困難を乗り越え交流と連携を深め、大きく成功した。
開会にあたり、実行委員会代表の中村進一三重県議は、当初、対面で大阪での開催を予定したが完全オンライン開催に切り替えた経過の簡単な報告と、奮闘された大阪の実行委員会の皆さんへのお礼を述べた。さらに7月29日、プレイベントとしてオンラインで行われた「農林業を核に地域循環経済の実現へ」と題する鈴木宣弘先生の講演も成功したと報告。
その上で、「新型コロナ感染症で格差が拡大、公的病院再編も誤りが明らかになった」「(米中対立の中)アメリカの言いなりで日本の平和が守れるのか、戦争は避けられるのか、緊張せざるを得ない」「現場での実践体験を出し合って、地方議員に何ができるのか、ここでの議論を政府に届けられないか、あるいはどこまで可能なのかしっかり議論をお願いしたい」と、この交流研修会の意義と課題について提起した。
玉城デニー沖縄県知事がビデオメッセージを寄せ、「コロナ禍の下、大変厳しい状況ではあるが、住民投票で反対の意思が示された辺野古新基地建設問題の解決をめざす」「日米地位協定改定へ機運を醸成し、アメリカにも働きかける」などと決意を述べた。
特別ゲストとして嘉田由紀子参議院議員が問題提起した。嘉田さんは冒頭、コロナ対策に無力な菅政権を、「科学的データなし、ビジョンなし、そして魂なし」の三無政治だと厳しく批判。「リスク多発時代の政治の在り方」ということで、自らの岡山・真備町、熊本・球磨川の水害実態調査に基づき甚大化する災害への備えとその根源について問題提起した。
パート1「コロナが暴く地域の諸課題、地方政治の役割」は、小椋修平足立区議と松尾ゆり杉並区議が司会を担当。前半で、山田厚甲府市議が「いのちを守ろう! 病床削減などの医療破壊を許すな!」と訴え、「政府は病床削減を奨励し、公的医療を削減することに全てを傾けてきた」と厳しく批判し、「新公立病院改革ガイドライン」でコロナ禍の中でも病床削減が進んでいる実態を暴露。続いて小椋区議が、「コロナ禍の困窮者支援の現場から」として、首都圏を中心とする超党派の自治体議員による「新型コロナ災害緊急アクション」および「コロナ災害対策自治体議員の会」がつかんだコロナ禍で困難に直面している人びとのリアルな事例報告と問題提起を行った。
二人の報告を踏まえて伊藤周平鹿児島大学教授が、「コロナ禍で明らかになった日本の社会保障の脆弱さと医療政策を中心にした地方政治の課題」について問題提起。菅政権が「自助、共助、公助、絆」などと言って公的支援を放棄していることを糾弾。「今、命の危機にさらされている。そこで明らかになった社会保障の脆弱性を地方議員が指摘して提言していくこと。それが国政転換の力になる」などと訴えた。討論では河内ひとみ荒川区議が自らケアマネでもある視点からコロナ感染自宅療養者の厳しい実態等の報告、新谷信次郎柳川市議からは非課税所得世帯の支援枠を拡大できないかなどの意見が寄せられた。
後半では、玉城健一郎沖縄県議が「コロナ禍で改めて浮き彫りとなった米軍基地問題」と併せ、観光・地元芸能の壊滅的な打撃と県の対策などを紹介。原田和広山形県議は「山形県内では二極化が急速に進んでいる。中小飲食業やブライダル業界等は壊滅的な打撃を受けている」として「日本型PPP(官民連携)の必要」を訴えた。また、政治を変えるため衆議院候補として立候補する決意を語った。
金井利之東京大学大学院教授は、「コロナ禍で浮き彫りになった諸課題」として、「深刻な課題から目をそらす作戦は為政者の常套手段。そうしたものとしてのオリンッピクである。そういうコロナ対策が災いをもたらすのが〈コロナ対策禍〉である」と菅政権を厳しく批判。自治体(議員)は、地道にニーズを掘り起こし、国に「課題」を認識させるべきと地方議員の役割に期待を表明した。
パート1のまとめをした北口雄幸北海道議(実行委員会副代表)は、「コロナによって、日本の雇用、社会保障の問題点、矛盾点が暴かれた」「『地域医療構想』で公的医療を縮小してきた国の政策の矛盾が明らかになった」「定例議会前にまた(オンラインで)地域の課題を出し合い、それぞれの議会の中で取り組む課題をはっきりさせていく。そして地域から国の政治を変えていこう」と実践的な提起を行い締めくくった。
パート2「米中激突の東アジア、問われる日本の進路」は、広範な国民連合の山本正治事務局長・月刊『日本の進路』編集長の司会で、羽場久美子神奈川大学教授、柳澤協二元内閣官房副長官補、伊波洋一参議院議員によるパネルディスカッションが行われた(詳細は本誌16ページ)。討論では、国吉亮うるま市議から米軍基地問題、長野広美西之表市議から馬毛島基地建設問題、國仲昌二沖縄県議から台湾を巡る緊張の高まりと地方議会での意見書の提案、日下景子神奈川県議から日米地位協定改定へ向けた取り組み、上村和男筑紫野市議から自動車産業を中心とする地域経済とアジアの平和の活動、森一敏金沢市議から日韓の自治体間の友好の取り組みなどの報告と問題提起が行われた。
パート3「大阪府の医療崩壊と維新政治」は、馬場慶次郎吹田市議が司会を行い、学生の小寺七佳さんがアシスタントを務めた。山田けんた大阪府議が冒頭、「大阪府の医療崩壊と維新政治―全国最高評価の知事がなぜ最悪の事態を招いたか」と維新大阪府政の問題点の概略を報告。その後、第1部「維新政治の改革政治の現在」、第2部「全国の維新型県政、市政についての報告」、第3部「維新政治からの脱却」と分けて討論された。
第1部では、武直樹大阪市議が「都構想、府市統合、広域行政」、野々上愛大阪府議が「行財政改革」、渕上猛志堺市議が「選挙とポピュリズム」、野村生代枚方市議が「教育改革」、松平要東大阪市議が「府民の生活は豊かになったのか」などの事例報告。
第2部では、大島淡紅子宝塚市議は「宝塚市長選、兵庫県知事選」について、松尾ゆり杉並区議が「東京都議選」について報告を行った。伊藤周平鹿児島大学教授は「事例報告は大変参考になった。命を守らない維新政治の実態をもっと知らせる必要がある」と激励した。
第3部では田中誠太前八尾市長が自らの市長時代の経験を踏まえて問題提起を行い、討論を行った。
北口雄幸副代表は最後のまとめで「コロナ禍で中小企業の困窮、社会の分断が進む。地方議員がしっかりと受け止め、定例会の前ぐらいに意思統一しながら、意見書の問題も含めて取り組みを進め国の政治を変えよう」と呼びかけて第17回全国地方議員交流研修会を締めくくった。