国会は、6月16日未明、自民・公明与党と一部野党の賛成をもって、急速に高まる危惧と反対の声を恐れるかのように、「重要土地利用調査規制法」を強行採決、成立させた。
菅政権は、日米共同宣言で中国を名指しで敵視し、「台湾有事」を喧伝して、軍事的緊張を煽り、列島弧、とりわけ沖縄、南西諸島に長距離ミサイルを大量に配備し始めている。「敵基地先制攻撃能力」保有と併せて、戦争準備のための法整備を強引に進めている。その一つが、この「重要土地利用調査規制法」だ。私たちは、声を大にして怒りを表明し、政府と国会を弾劾する。
この法では「重要施設」周囲1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、土地や建物の利用状況を調べ、持ち主を調査できることになっている。さらに、司令部機能がある自衛隊基地など、特に重要な地域は「特別注視区域」とし、一定面積以上の土地や建物を売買する際、事前に氏名や利用目的の届け出が義務とされる。だが、対象地域は明示されず、どこに住む市民が対象になる可能性があるのか明らかにされないままだ。
原子力発電所や自衛隊が共有する空港などが想定されている「重要インフラ施設」の対象についても、政府は「柔軟かつ迅速に検討を続ける」と述べ、鉄道や放送局などへの拡大についても「将来的にはありうる」と含みを持たせている。
対象区域が曖昧、調査内容が曖昧、罰則対象が曖昧など、この法が多くは首相権限に基づくことを明示しており、法の運用が時の政権の裁量次第ということになる。罰則を与えると脅かすが、上にあげたように「何をしたら違反」ということがないのでは「罪刑法定主義にも反する」「法に値しない」重大な欠陥法だ。
「思想・信条などに係る情報収集は想定していない」と担当大臣は答えるが、内閣官房は「条文の規定では排除されない」と述べ、可能性は残されている。
国会審議における「参考人質疑」で、与党推薦の参考人も「条文案を読むだけでは様々な憶測が広がる恐れがあることを痛感した」と述べている。
全国で「反原発」を闘う人々や、沖縄をはじめ全国の基地周辺で闘う人々にとって、この法は「原発阻害行為」「基地機能を阻害する行為」として認定され、活動は制限されてしまう。
この法で、自衛隊や米軍基地等の周辺の土地を外国資本が取得して、その機能を阻害することの防止を目的としたが、そうした立法事実はないと政府も認めている。戦前の「旧要塞地帯法」や「軍機保護法」が想起される。要塞地帯付近では「写生」や「写真撮影」なども「スパイ行為」とみなされ、憲兵が巡回・弾圧していた。本法の狙いはまさに軍事優先体制の構築だ。
立法事実もないのに、あたかも「あるがごとく」予見と偏見の下に外国人を貶め、「曖昧」な判断基準をもって刑罰や罰金で畏怖させ、反原発・反基地運動の縮減、個人の財産権、プライバシーを侵害するこの法は明白に違憲立法である。憲法前文には「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とある。
まさに戦争準備法案であり、主権者としてこの法律成立に断固として抗議する。
全国の仲間とともに今後もこの法と戦争準備の策動に反対し闘う。
以上、抗議宣言とする。
2021年6月16日
自主・平和・民主のための広範な国民連合