全国の地方議会で意見書採択を

戦没者を二度殺すな

沖縄県議会議員 瑞慶覧 功(ずけらんいさお)

常任委員会委員長として意見書審議を進める筆者

 戦争の激戦地であった沖縄県の南部地域。特に糸満市では、その地にまだたくさんの遺骨が眠っています。戦後76年たった今でも遺族のもとに戦没者の遺骨が戻っていません。

 第二次世界大戦で沖縄の地で亡くなった米国人含めすべての人の名前が刻まれている平和の礎(いしじ)には、現在24万1593人が刻銘されています。平和公園内には全国各地の慰霊碑が建立され、国内外から世界の恒久平和を祈念し戦没者の鎮魂を祈る聖地として多くの人が訪れます。

 沖縄県民ならずとも、二度と戦争を起こしてはならないと誓う多くの人々にとってこの地は「魂の地」、聖地であることは国民の誰もが理解していることではないでしょうか?

 ところが、政府はまだ遺骨が眠るこの場所から土砂を掘り起こし、辺野古新基地建設が進む大浦湾へ投入する計画を立てその準備を始めています。

 長年ボランティアで遺骨収集を続け、遺族のもとに遺骨を返す活動を続けてきた具志堅隆松さんは、「戦没者を2度殺すことになる。戦没者を冒瀆(ぼうとく)する行為」と抗議のハンガーストライキを県庁前で決行した。

 その思いは今や国内だけでなく世界にも届き、計画中止を求める活動が広がってきました。沖縄県は鉱山開発を巡り、即中止命令ができないという法的な困難さがある中、自然公園法に基づき厳格な措置命令を出すこととしました。この問題は私的制限につながりとてもむずかしい判断を迫られています。知事は人道的に配慮してほしいと事業者に求めています。

 根本は、政府がこの場所の意味を知りながら辺野古新基地建設の土砂の採取場所としていることです。

 これは県民だけの問題ではありません。日本中の戦没者遺族の皆さんの心に刃を突き刺す行為ではないでしょうか? 静かな聖地で行われようとしている死者への冒瀆を国民の皆さまが自分事としていただきたいと思います。

 沖縄県議会では全会一致で「遺骨の混入した土砂を埋め立てに使わないこと」を決議しました。全国の都道府県議会で、市区町村議会で、ぜひとも同じような意見書が可決されますと政府に対しましても強いメッセージになると思います。

 皆さまのご理解ご協力を心よりお願い申し上げます。

—————-

沖縄戦戦没者の遺骨等を含む土砂を埋立てに使用しないよう求める意見書

沖縄県議会

 沖縄戦では一般住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われ、多くの貴い命が失われた。糸満市摩文仁の平和祈念公園内にある「平和の礎」には、国籍や軍人、民間人の区別なく、沖縄戦などで亡くなられた24万1593名の氏名が刻銘されている。
 糸満市摩文仁を中心に広がる南部地域は、1972年の本土復帰に伴い、戦争の悲惨さや命の貴さを認識し、戦没者の霊を慰めるために、自然公園法に基づき、戦跡としては我が国唯一の「沖縄戦跡国定公園」として指定されている。同地域では、沖縄戦で犠牲を強いられた県民や命を落とされた兵士の遺骨が残されており、戦後76年が経過した今でも戦没者の遺骨収集が行われている。
 さきの大戦で犠牲になった人々の遺骨が入った土砂を埋立てに使用することは人道上許されない。
 よって本県議会は、下記の事項が速やかに実現されることを強く要請する。
   - 記 -
1 悲惨な沖縄戦の戦没者の遺骨等が混入した土砂を埋立てに使用しないこと。
2 日本で唯一、住民を巻き込んだ苛烈な地上戦があった沖縄の事情に鑑み、「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」により、日本政府が主体となって戦没者の遺骨収集を実施すること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 令和3年4月15日
 宛て先(略)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする