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コロナ第2波が目の前 ■ 課題を考える

民族や国籍で差別することなく支援すべき

参議院議員 徳永 エリ

あまりに場当たり的な政府の対応

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に 1月31日時点のQ&Aで、「中国国内では、ヒトからヒトへの感染は認められるものの、ヒトからヒトへの感染の程度は明らかではありません。過剰に心配する事なく、風邪やインフルエンザと同様に、まずは咳エチケットや手洗い等の感染症対策を行う事が重要です」と、危機感のない見解を示していた。
 おそらく政府は、わが国で新型コロナウイルス感染症が拡大することなど、当初は考えてもみなかったのだろう。さらに、感染が世界中に広がり、多くの尊い命が奪われ、また、国境を越えたヒト、モノ、カネの移動ができなくなり、経済活動を止めざるを得ない状況になり、国民生活や雇用に深刻な影響を及ぼし、そして、長期間にわたって収束の見通しが立たない状況になることも、想像すらしていなかったのだろう。わが国で最初の感染が見つかってからの政府の対応が場当たり的だったこと、失敗だったことは、多くの医師や研究者等が指摘している。
 新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、緊急事態宣言が発令され、外出の自粛、学校の休業、営業の自粛など、国民の協力と辛抱によって、感染第1波は、なんとか抑えることができた。しかし、6月に入ってから東京でまた感染が広がり始め、隣接県である埼玉県、神奈川県、千葉県などの感染者も増加し、さらに他県に感染が広がり始めている。感染第2波が襲ってきたと言える。
 政府は、「感染防止対策を徹底しながら経済活動を拡大していく」という方針だが、感染の広がっている地域で働く人や生活をする人たちに積極的にPCR検査を行い、徹底的に封じ込める対策を急がなければならない。
 感染者が多くなると、空気感染と似た広がりが起こり、政府が感染予防のために作成している業種ごとのガイドラインも見直さなければ、同じガイドラインのままでは感染を防げなくなることを専門家が指摘している。しかし、政府は「大きな流行は収束させた」として、何もやろうとしない。これでは、感染は収束するどころか、どんどん広がっていくのではないか。

政府迷走、 業者に混乱を広げるGoToトラベル

 東京での感染拡大を受けて、政府は7月22日にスタートさせる予定だった「Go To トラベル」東京都発着の旅行を除外した。直前の修正で関係事業者はキャンセルが相次ぎ混乱し、また、期待を寄せていただけに、落胆も大きい。しかも、「Go To トラベル」の割引対象から東京が除外されても、東京から誰も旅行に行かないということではない。だから、東京を除外したからといって、感染拡大を食い止めることにはつながらない。感染が拡大した場合、一体誰が責任を取るのか。そもそも、この事業は、新型コロナウイルスの感染収束を見据えた需要喚起策だったはず。今、事業を行うこと自体が間違っている。業界からの強い要望があることは分かっているが、政府は科学的根拠をもって、誰もが納得いく判断をするべきなのでないか。
 しかも、この事業は、1兆
6794億円計上され、観光、飲食、イベント等に対するクーポンやポイントの付与が主な内容となっているが、事業者への委託費の上限を事業全体の2割、約3100億円に設定していることが分かった。多額の税金が投入されるにもかかわらず、そのお金が地域に流れず委託費として特定の事業者に支払われることも国民理解は得られない。

多くの事業者が排除されている給付金

 国民一人一律10万円が給付されるという特別定額給付金、休業を余儀なくされた労働者の雇用を維持するために支払われる雇用調整助成金、コロナの影響によって減収となった事業者に対して支給される持続化給付金、また、無利子、無担保の融資によって、これまではなんとか倒産や廃業せずに継続してきた事業者も、感染収束の見通しが立たない中で、今後、相当厳しい状況に追い込まれていくことは想像に難くない。第二次補正予算では、家賃支援給付金の支給が決まったが、あまりにも遅すぎる。また、持続化給付金も要件が緩和され、対象も広がったが、法人の2019年新規創業特例など、例えば、19年の10月に開業したことが明らかなのに、事業の性質上、早く法人登記を行う必要があり、18年に法人登記した事業者は対象にならない。例えば旅館など、保健所の営業許可があり、また納税記録でも、19年に開業したことが明らかであっても対象になっていない。
 第二次補正予算では、主たる収入を、給与所得や雑所得で確定申告した個人事業者や、20年の1月から3月の間に創業した事業者も対象になったが、被扶養者が対象外、事業収入が1円でもあれば対象外、国民健康保険も19年より前に入っていないと対象外など、要件が厳しく、多くの個人事業者が対象にならない。
 また、性風俗で働く個人事業者は、「職業で差別してはならない」という野党の指摘により対象となったものの、ファッションホテルなど性風俗業を営む事業者は今も対象から外れている。例えば、私のところに相談の電話をしてきた岩手県でファッションホテルを経営する方は、「東日本大震災のときも何の支援もなかったが、復興のための工事関係者やマスコミ関係者が宿泊施設として使ってくれていたので、なんとか経営を続けることができた。しかし、今回は全く予約がない。そんななかで、持続化給付金の支給対象から外され、固定資産税や都市計画税の減免も対象外。さらに、家賃支援給付金も対象から外された。つぶれても仕方ない、やめてしまえということか!」と憤慨していた。
 この問題について、6月8日に、第二次補正予算に関する参議院本会議で会派を代表した質問で、私は安倍総理に直接問うた。総理は「性風俗関連特殊営業等については、災害時の各種支援も含めて、今般の給付金においても対象から除外した」と答弁した。「感染拡大により、自粛等により特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧としていただく」という趣旨に偽りがないなら、職業差別など、理不尽な線引きはしてはならないと思う。

朝鮮大学校などを学生支援から外すのは問題だ

 また、第二次補正予算で新たに創設された、生活困窮学生への支援、学生支援緊急給付金についても、朝鮮大学校をはじめとする各種学校は対象となっていない。今年4月に始まった高等教育の無償化や奨学金制度なども対象となっていないから同様の取り扱いをしたという。
 また、私費外国人留学生は、日本学生支援機構の2017年度の調査によると、全体の75・8%がアルバイトによって学業を継続している。学生支援緊急給付金の対象とはなっているものの、厳しい成績要件が課されている。異国で頑張って働きながら学んでいる留学生、卒業後は日本で就職し、わが国にとって貴重な人材として活躍してくれるかもしれない。それは、日本で生まれ育った朝鮮大学校で学ぶ学生たちも同じだ。コロナの影響は誰のせいでもない。わが国で暮らし、働き、学ぶ人たちを民族や国籍で差別することなく、支援するべきではないか。政府には引き続き平等な支援を求めていかなければならない。

一番大切なことは、政府への国民の信頼

 ワクチンや有効な治療薬ができるまで、まだ時間がかかりそうだ。ともすると、何年もかかるかもしれない。
 入国制限措置も、経済を動かし拡大するために、緩和に向けて動きだしている。海外からの変異ウイルスを今後絶対に入れないための水際対策の徹底も必要だ。
 コロナ禍において一番大切なことは、政府と国民との間の信頼だ。そのためには、正しい情報、科学的根拠、それに基づく明確な判断基準を示してほしいと思う。
 また、厳しい財政状況であっても、企業の損失補塡や、営業自粛要請を行う際の補償など、必要であれば新型コロナウイルス等対策特別措置法の改正も行い、経済と雇用、国民生活を守るために与野党協力して力を尽くしていかなければならない。