[若手新人議員の鼎談] 激戦の沖縄県議選を終えて

再来年は復帰50年、新しい沖縄をめざして

基地をなくし、沖縄の無限の可能性を拓く

那覇市・翁長 雄治さん、宜野湾市・玉城 健一郎さん、うるま市・山内 末子さん

司会・山内末子さん
 今日は、宜野湾市の玉城健一郎さん、それから那覇市の翁長雄治さん、そして、私、山内末子の3人で県議選を振り返りながら話し合いたいと思います。
 6月7日に投開票となった今回の沖縄県議会議員選挙、お二人は初めてのチャレンジで初当選、まずは、おめでとうございます。私は4期目ということで、初心を忘れず頑張りたいと改めて決意しております。よろしくお願いします。
 最初に玉城健一郎さんに発言をお願いします。

玉城健一郎さん
 今回、宜野湾市の選挙区は保守・革新が2対2で争っている中で、私は辺野古新基地に反対という立場を明確にしながら挑戦しました。あっち側は辺野古に対して賛否をはっきり言わずに、まあ容認と言っていました。今回、私たちの陣営は1議席減ではあるんですけれど、辺野古反対が初めて得票数で相手を上回ることができた。わずか51%でしたが、これまではだいぶ差があった状況でしたから。辺野古反対という民意が宜野湾でも健在なんだよということを示せたと私は考えています。
 これからは3期務められた清涼さんがこれまでやってこられたこと、できなかったことを引き継ぐ。特に、清涼さんは、ずっと追求されてきた普天間飛行場の閉鎖、返還ができなかったことが心残りだとおっしゃっている。それは次の、雄治君も含めて私たちの世代がしっかり継承して、私たちの世代で終わらせるようにしなければいけないと考えています。

「決めよう沖縄の未来!」と行進する玉城健一郎さん(右)と翁長雄治さん(中央)(2019年2月23日、県民投票前日)r

山内さん
 ありがとうございます。健一郎さんは35歳ですが、今回3人の30代の議員が誕生しました。その中でまた一番若い、32歳の雄治君。若きホープと言われ、翁長雄志前知事の息子さんだということで本当に大きな期待感があり、プレッシャーにもなった選挙戦だったかと思います。それでも18000票余りということで、全候補者で一番多い得票をいただくいい形の選挙が行われていたのかなと思っています。感想をひとつお願いします。

翁長雄治さん
 那覇市・南部離島区の翁長雄治です。「翁長雄志の息子」というのを前面に出しながら選挙を闘ったわけで、私の18000票の多くは翁長雄志に期待していた票だと思います。シンプルに僕個人への支持票ではなくて、「オール沖縄」に対する期待の票だと思います。
 今日も子どもを連れながらこちらに来ましたけれども、これから4年間、子育て世代の代表として、子育て世代、若者世代の声が、今回3名の30歳代が当選しましたけれども、僕たちを通して県政に届くようにできればいいなと考えています。

山内さん
 ありがとうございます。これからの沖縄を背負っていくという意味で私も本当に期待をしています。
 厳しい状況の中で辺野古基地反対という柱で闘ってきた玉城県政与党は、県民の支持を受け過半数を確保しました。しかし、政府は、選挙が終わってわずか5日後、6月12日ですね、工事を再開した。沖縄県民の民意を省みない日本政府がそこにある。
 玉城デニー知事は誕生以来、沖縄の問題を国民全体の問題として、わがこととして受け止め解決してほしいということでキャラバンをしたりしてきました。全国に向けての発信は非常に大事なことだと思っています。全国に向けて、沖縄の県議会議員としては何をどういうふうにしたらよいのか。

「沖縄県以外の人たちに基地の問題を自分ごとで捉えるように促す」(玉城健一郎)

玉城さん
 私は無所属の革新系で、雄治君は保守系ということですが、「オール沖縄」の中で基地問題では一緒になってやっている。個別的に話をしたら、おそらく安全保障とかの問題で違いはあるかもしれない。だけれどもその違いを乗り越えて今やるべきこと、基地の問題、沖縄におかれているこの過重な基地負担をただしていくのは、私たちの仕事だと思っています。
 これまでもオスプレイ反対の建白書の時からも翁長雄志さんや、県民大会の歴代事務局長を務められた故玉城義和さんとか、これまでも多くの方たちが全力を尽くしながらも、なかなか動かない。本土の政治的パワーバランスも含めて、理解がなかなか進まない。面倒くさいから沖縄に置いておこうみたいなことがあるのではないか。そこを変えていくために、本土の、沖縄県以外の人たちに対して、やはり基地の問題を自分ごとで捉えるように促す。そこから解決していく。
 その先に、じゃあ基地は本当にいらないのか、もしくは本当に安全保障上で必要であるならば、じゃあどれくらい何が必要なのかという議論をするべきです。その議論もできていない状況は変えていかなければならないですよね。
 戦後レジームからの脱却という意味でも、ずっと日米安保の傘の下にいるのか。しっかり考えていくことから、本当の意味での平和というのがつくられていくと思いますので。
 そのあたりは本土を含めて一緒にやっていきたいと、伝えていきたいと思います。

山内さん
 健一郎さんは革新系で、雄治さんは保守系ですよね。その立場から、基地問題などどうですか。

「日本全体でどんな安全保障態勢をとるのか議論がされていない。問題の根本はそこだ」(翁長雄治)

翁長さん
 保守の一部の人はよく、辺野古は先輩方がつくり上げてきた苦汁の決断であるので受け入れざるを得ないだろうと言う。でも私は逆に、先輩方が苦汁の決断でやってきた条件などを、沖縄県民の知らないところで全部ほごにされて、全く違う形のものにつくり替えられている。これでは沖縄の保守が今後、機能しなくなると考えています。


 先ほどから話があるみたいに、安全保障の問題として見たときに、沖縄に基地が必要なのかどうか、どれくらい必要なのかどうかという議論が全くなされていない。例えば沖縄に基地がなかったら中国が攻めてくるという話があるけれど、それは沖縄が攻められるんじゃなくて、日本が攻められるということですよね。
 結局、日本全体でどれだけの軍事力が必要か、どんな安全保障態勢をとるのか、そうした議論が政治の世界ではほとんどされていないように僕は思います。官僚の中ではされているのかもしれませんけれども。問題の根本はそこだと思います。
 しかも、辺野古の問題を一つ取ってみても、私は県民投票以降、ボールは政府側にあると思います。県民投票の前までは、いろんなやりとりがあったかに思いますが、県民投票であれだけ圧倒的に辺野古反対となった。
 ところが今回、野党(自民党)が少しくらい議席を増やしたぐらいのことで、官房長官が「理解が進んだ」と言うのは、ちょっと暴論ではないかと思います。

「コロナ後、貧困問題はさらに深刻に。経済政策の課題は非常に重要に」(山内末子)

山内さん
 私も本当にそのとおりだと思います。NHKだけが県議選投票所で出口調査をやったんですけれども、玉城県政に対して8割が評価をしているんです。辺野古は77%が反対している。この数値は玉城県政誕生からほとんど変わっていない。その間、工事は進んでいますけれども、それでも評価が高い。県民の思いが辺野古に対しては、保守だろうが革新だろうが揺るがない。
 玉城県政は辺野古ノーで揺るがないが、今、雄治さんが子育てで一生懸命頑張っていますが、県も子どもの貧困対策なんかもけっこうちゃんとやっています。それでもいろんな課題がたくさんあるんですよね。
 コロナ後、これまで好調だった観光業が大きな打撃を受けていて、今後2、3年はとても厳しいと見られる。そうだと貧困問題は沖縄ではさらに深刻になってきます。経済政策の課題は非常に重要になってくる。県政は支持を持続できるか。
 与党の立場は大変になってくると思います。私は、県議会の中でしっかりと県政とスクラムを組んで、同時に、もちろん違うものは違うとはっきり言える議員でなくてはいけないと思っています。与党であろうが野党であろうが、保守であろうが革新であろうが、県民の思いと切実な願い、県民第一に考えることが大事だと思っています。
 そのへんについては、雄治さんは特に子育ても一生懸命にやっていますので、ちょっとお願いできますか。

翁長さん
 僕が今、この仕事をしている一番の理由は、沖縄に生まれた子どもたちがこれからどういう社会の中で生きていくのかということがあります。今、沖縄の置かれている状況はすごく厳しいが、これからもっと厳しくなるだろうと思います。コロナの中では生活保護の申請が随分と増えてきています。社会保障の問題、これは沖縄だけではなくて全国的な問題だと思うんですけれども、そのあり方さえ変わっていかなければならない、そんな状況だと思います。
 沖縄にとってこれからの4年間というのは、重要な4年間になる。本土復帰50年を迎えて、次の10年、20年、50年をつくり上げていく4年間になっていきます。子どもたちが毎日ちゃんとご飯が食べられて、ちゃんと学びたいことを学べて、挑戦したいことに挑戦して、努力できるような社会を、僕らは若い世代の代表として議会にいるからには、つくっていく必要があるのかなと思います。

玉城さん
 僕自身も若い世代として雄治君と同じような感じで、子どもたちにしっかりと投資をしていくということを選挙戦で訴えてきました。コロナの影響で、子どもたちは教育を受ける権利が保障されない。普段でも爆音とかモノが校庭に落ちてくるとか基地問題などで侵害されている。リモート教育といっても、家庭環境によってはその状況にない。早急にその設備や環境を無償貸与などで進めなくてはいけない。コロナがなくてもこれからの時代に不可欠ですね。

山内さん
 今、辺野古の問題であったり、経済の問題であったり、子どもたちの問題もと、やるべきことがたくさんあるのです。
 その中でも沖縄の可能性というものをもっともっと広げないといけない。それには沖縄の自然や農業、食料を守らないといけない。今は種子法や種苗法の問題もあります。県内でも若い人たちがそうした問題に取り組み始めている。
 こういう問題はこれまでは県議会でやられていなかった。今、真剣に守っていかなければならないときかなと思っています。
 沖縄の可能性を、私たちは未来に向けて守っていく、引き継いでいく。未来を、沖縄の可能性をどう発展させるか、どう取り組むか、どうでしょうか。

「日本の一地域の沖縄でなく、沖縄はすごいよねと言われる地域を実現していく」(玉城)

玉城さん
 末子さんの言うとおり、本土のまねをするのではなくて沖縄独自のことを考えないといけないと思います。アジアとの近さだとか、翁長雄志さんが言っていたアジアのダイナミズを取り込むことだと思う。コロナ危機は、これまでやってこられなかったことを進めるいい転換期だと思います。この転換期をうまく使いながら、沖縄を成長させていく。
 日本の一地域の沖縄でなく、沖縄はすごいよねと言われる地域を実現していくことが必要です。それに伴い、どうしても必要になってくるのが基地の返還です。どうしてもじゃまになっている。宜野湾市では市のど真ん中にあって3分の1を占領している。未来の子どもたちが活躍して沖縄をつくっていくためにも基地の返還が必要です。

「沖縄の可能性は無限大だ。そこに居るだけで人にエネルギーを与えられる地域だ」(翁長)

翁長さん
 僕も、沖縄の可能性は無限大だと思っています。それは目に見える何かだけじゃなくて、そこにいるだけで人にエネルギーを与えられる地域だと僕は思っています。
 観光の問題で言うと、今は自然の消費だけでしかないと思います。沖縄に来る観光の皆さんは、青い空、白い雲、青い海、これを見に来ている。アジアの方々は日本で買い物がしたい、一番近いところが沖縄だということで。
 沖縄じゃなければならない理由がすごくないがしろにされていると思う。僕がずっと訴えているのは、沖縄の食文化も含めて健康・長寿を取り戻して、沖縄で1カ月くらい滞在して、身体をメンテナンスしていくような癒やしの沖縄。そんなツーリズムを推進できないかとずっと考えて、議会でも質問してきました。

山内さん
 沖縄は、自然だけでなく、三線など伝統文化・芸能もあります。それに人と人のつながりが一番の沖縄の魅力だと思っています。その沖縄の魅力を若者が世界に向けてすごい発信をされている。若者は沖縄の宝です。沖縄県議会与党の中にも、あなた方二人を含めて30歳代前半の若者が3人もできました。沖縄の宝は若者だということを踏まえて、活躍を期待します。
 最後に、一言述べていただいて終わりとします。

玉城さん
 全国の皆さん、本当にありがとうございます。実は私の後援会顧問は、今は広範な国民連合の顧問をされている石川元平先生です。
 そういった関係で、広範な国民連合の皆さんの勉強会にも参加して、付き合いが広がり、さまざまな方たちがいる中で、沖縄だけにとどまらず全国の問題を広範囲に追えるようになりました。私たちは、基地問題に関しては自分の生活の問題なのでしっかりとどういう問題なのか捉えているとは思っています。ところが例えば原発問題とか、原発立地がない状況の中で、じゃあ本当に私がそれをしっかりと実感として分かっているかというとそうは言い切れない。そこを全国の皆さんとの交流の中で、自分の原発に対する考え方とかがまとめられてきたなと考えています。
 沖縄の基地問題も、同じように「自分の問題として沖縄の基地問題を考える」機運が広がっていると思います。少し前までは、「沖縄の基地問題でしょう」というふうに捉えられていたものが、ここ数年、沖縄を全国で考えようという動きになってきたと思いますよ。すぐに明日、明後日に基地問題が解決というふうにはならないと思いますけれど、ただ、こういうふうに徐々に考え方を広げることによって変わっていく。
 私たちも、全国の運動と連動しながら、沖縄の問題だけでなく全国の問題もしっかり取り上げられるよう、私も全力を尽くしてまいります。全国の皆さん、よろしくお願いします。

「沖縄には闘いによって民主主義がまだ生きている」(山内)

翁長さん
 沖縄に今ある問題というのは、沖縄だけの問題じゃなくて、全国の問題だと思います。辺野古の問題ひとつにしても、シンプルに基地問題だけじゃなくて、地方が、地域の人びとがこれだけ声を上げても、一顧だにしないという政府の姿勢そのものが、一番大きな問題だと思います。沖縄の問題は沖縄問題としてだけ捉えるのでなく、ぜひ全国の皆さんも自分たちだったらと置き換えて、やっていただければなあと思います。一緒にこの問題を解決できればなあと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

山内さん
 よく全国の方から、沖縄には民主主義がまだ生きていると言われることがあります。その民主主義が生きている沖縄の県議会の中に、若いお二人が初当選したということで、大変、全国からも期待をされております。私たち、沖縄にいる者も大変期待をしております。そういう意味で全国の皆さんと一緒に、今の安倍政権に対してもしっかりと沖縄から怒りの声を発していかなければならないと思います。そういうこの4年間だと思っていますので、協力してよろしくお願いします。
 今日はどうもありがとうございました。

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