女性パワーで先頭に立つ
話し手 髙良さちか 参議院議員
話し手 幸喜 愛 沖縄県議会議員
聞き手 山内末子 沖縄県議会議員
山内末子県議会議員 新年おめでとうございます。
昨年は戦後80年という大きな節目の年でした。高市首相の「台湾有事は日本存立危機事態」発言などもあり、日中関係は一気に危機的状況です。
日本を再び戦場にしない、とりわけ沖縄の現状はもはや戦争の足音がたいへん強くなりつつあることに大きな危機感を持っています。沖縄戦を振り返り再びあのような惨劇を繰り返してはならない。そういう思いで議員として活動してきたかと思います。県民生活の危機も引き続き厳しい状況が進んでいます。
さまざまな状況があると思いますが、まずは「戦争トラウマ」ということに絞ってお話を伺いたいと思います。幸喜愛さんは、県議会議員として1年目ですが、この「戦争トラウマ」の実態について活動を始めていますので、愛さんからまずこの「戦争トラウマ」についてお話をお願いいたします。
幸喜愛県議会議員 私にとって戦後80年はさまざまな課題があるなか、新たな課題として戦争トラウマについて学び解決に向けてのスタートの年でした。
戦争トラウマの定義として本土では戦争を実体験した兵士が挙げられますが、沖縄の場合は民間人同士の殺し合いや、家族・親族がやむにやまれず殺し合う実態があり、民間人の戦争トラウマが多いということが分かりました。「戦争トラウマ」の患者さんを多く治療している精神科医の蟻塚先生の実体験から判明したことです。
うつ病でもない、何らかの不調を訴えてくる患者さんらを通して、兵士だけではなく戦場に行っていない民間人、長い年月を経てその家族にもトラウマがあることを発見されました。とりわけ、沖縄では民間人のトラウマが多いということが分かりました。本土の多くは兵士の「戦争トラウマ」が多く、沖縄では民間人の「戦争トラウマ」が多い。
それは沖縄戦の特徴にあると言われています。
壕の中で、鳴き声を指弾されてわが子の口をふさがなければならなかった親、民間人同士、家族同士で命を奪い合う様を目の当たりにした残虐な戦争の実態が特徴です。
一つの実例があります。母親が3人の小さな子を連れて逃げる中、10歳の兄が下の子をおぶって逃げている最中にその兄の足に砲弾が当たり、大けがをしました。母親は、「連れて行って」と懇願する子を連れていると全員が死んでしまうと、泣く泣くその兄を置いて逃げてしまいました。
その後、収容所で米兵に助けられた兄と再会し、戦後、家族で暮らし始めた。しかし、戦場に置いていかれた兄はその後も母を恨んで生きてきた。
その恨みのある生活の中で耐えられない母は自死してしまいました。
残虐な戦争を生き残ってもその後自死してしまう。また精神を病んで一生苦しむ人が多い現実が沖縄戦の特徴だと言います。
兵士については2024年から調査が始まっています。
家族に対しての補償も検討が始まっています。
民間人の戦争被害の調査、支援補償はまだ議論もされていない。ぜひ国で整備してほしい。
戦争体験のない私も、父の実例から受けてきた心の傷は「戦争トラウマ」だということを今回知ることができました。これから体験談を聞き取りしながら調査につなげていきたいと思います。
ぜひ国における取り組みを、さちかさんが先頭になって取り組んでいただきたいと思います。
山内 国においてまだ戦争の実態は全てにおいて解明されていない。
ぜひとも、さちかさんには取り組んでいただきたいですが、どうでしょうか?
髙良さちか参議院議員 昨25年の沖縄では、戦後80年ということもあり、戦争体験やその継承が大きく話題となっていました。そのなかで、「戦争トラウマ」は私たちに「やはり戦争はしてはいけないんだ」という思いを強くさせられた事柄の一つだったのではないかと思います。愛さんの戦争体験者家族を取り巻く「戦争トラウマ」の語りは、戦争体験者の抱えるトラウマのために戦争を体験していない家族にも及ぶ、根深い影響を顕在化させた衝撃的なものでした。
これまでも沖縄では「集団自決」「強制集団死」に追い込まれ、家族が家族を殺し合う状況、目の前で子どもが戦死した絶望感など、戦後もずっと尾を引く苦悩を抱えて生きてきた人々の体験が語り継がれてきました。体験者の抱えるトラウマ、戦後その影響下で生きてきた戦後世代にも大きな傷を残す問題だと感じます。兵士のトラウマだけでなく、民間の人々の抱える戦争トラウマ、その家族への影響を調査することで、戦争の全容が明らかになっていくのではないかと思います。
日本という国は一般民衆の被った被害に対して補償を避けている国家です。戦争トラウマの実態が明らかになった場合、それを補償するという発想を持つ国家ではないとも思えます。だから、このような国で再び戦争を起こさせないことが何よりも大切だと思います。
沖縄県もパートナー
シップ制度を整備
山内 25年、沖縄県はパートナーシップ制度を整備しました。
愛さんはいち早く、その制度登録を行いました。その理由、経緯をお聞かせください。
愛 人生100年時代で、これから先、生きていくうえで支え合うパートナーがいたほうがより安心して暮らせると思います。「病気になったらどうしよう」等、手続き上パートナーが家族と見られることの安心感は生活するうえで多くあります。
選択的夫婦別姓が導入されていれば、それを選択したかもしれない。自分の名前を変えずに暮らせる方法を選びたかった。自分の名前に誇りと愛着がある。沖縄県のパートナーシップ制度では民法上の結婚ではないので名前を変える必要がない。
財産分与、仏壇事、お墓などの問題が自分の意思で決められる。
家族間の縛りとか、慣習とかにとらわれずに、結婚とみなされる制度を悩んでいる皆さんにぜひ活用していただきたい。
山内 国ではいまだに「選択的夫婦別姓」の議論が止まったままです。
女性の人生に大きな影響を与えるこの問題、前進することのない現状をどう考えますか?
選択的夫婦別姓の導入を
さちか 「選択的夫婦別姓」、同姓も別姓も選ぶことができます。誰にも不利益にならない制度の改変になぜ長い時間かかっているのか大変不思議です。
私は法律婚をしていて、戸籍上は夫の姓です。しかし自らの姓を使い続けています。煩雑です。愛さんはパートナーシップ制度を利用しているとのこと。
しかしパートナーシップ制度では自治体によって適用範囲が異なったり、法律婚と同等でない部分が多く、やはり姓を統一しない選択をしたためにパートナーシップ制度を使わざるを得なかった人たちに不利益があったりします。
同姓の強制によって、負担を負っているのは9割以上のカップルで女性です。姓はアイデンティティーの一部であり自分の生きてきた歴史の一部だと思います。
便利不便の問題として通称使用に落とし込むのではなく、そろそろ実態に合わせた改正が不可欠だと感じています。別姓が選択できるようになれば、別姓の家族も増えそれが特別視されなくなるのではないでしょうか?
私は通常PTA活動の中でも「髙良」と名乗っているので、子どもは姓が別です。しかしそのことで子どもが差別を受けたことはありません。もし差別ならばそのような社会を変える必要があると思います。そのためにも法改正は必須です。
戦争の記憶の風化は
新たな危機を生む

山内 お二人とも議員1年生という中で、今課題となっていることに真摯に取り組んでいただいております。
次年度に向けての抱負をお聞かせください。
さちか 戦後80年が終わっても、戦後の記憶の掘り起こし、継承を続けていく必要があると感じます。戦争の記憶の風化は新たな危機を生む危険性があると思うからです。特に学校教育の中での平和学習や地域の戦争の歴史を学び継承することが必要ではないかと感じます。
学校教育の平和学習の充実には先生方の教材研究が不可欠ですが、今の厳しい労働環境の中では難しいと聞きます。教員の労働改善も必要だと考えます。
沖縄は地上戦を体験し、大規模な空爆の経験はありますが原爆体験はありません。非核三原則見直しで新たな戦い方としてドローン兵器なども国においては議論されています。
沖縄でもその議論をしっかり受け止めなくてはいけないと思います。「持ち込まれる」先は沖縄かもしれません。海外では多くの民間人がドローンにより戦争の被害に遭っています。
子どもの権利の問題として基地問題を考えることも必要だと考えています。日々の騒音や土壌、水質汚染は子どもたちの育つ環境、教育環境を蝕んでいます。
これらのこと含め全て国会でしっかり議論を重ね、より良い国、沖縄のために頑張りたいと思います。とくに、ますます厳しさを増す日中関係、高市政権の危うさを徹底追及していかねばなりませんね。
しっかり頑張っていきます。
もっと国民主体の政府に
愛 戦争は戦闘を行っている間だけが戦争ではない。記憶を持っている間戦争が続いていることに気づいてほしい。
戦争は絶対してはいけない。国は絶対に戦争を起こしてはいけない。
国は戦争で傷ついた国民を二度と生まないためにも正面から向き合うこと、そういう取り組みをさちかさんに求めていってもらいたい。
子どもの問題、貧困対策、物価高、環境問題、全ては政府の姿勢で決まっていく。もっと国民主体の政府でなければならない。
とりわけ沖縄に寄り添う政府の誕生をひたすらに願い頑張っていきます。
山内 国は、国民によって成り立っている。だからこそ国民一人ひとりの平和な暮らしをつくることを第一に取り組むべきです。
とくに女性議員のパワーに期待しています。
戦争トラウマ、パートナーシップ制度の問題も人権の問題です。一人ひとりの命と人権が守られる国づくりをめざしたい。日本は世界からいちばん人権と命が守られる国として称賛される国になってほしい。
私はその最前線の沖縄の県議として県民の皆さんと共に歩んでいきたい。
とくに今年は、知事選はじめ県下の多くの自治体で選挙が行われます。1月25日投開票の名護市長選挙から始まります。広く県民の、また、全国にも呼びかけながら勝ち抜きたい。
さちかさん、愛さん。今日はありがとうございました。今年も一緒に頑張りましょう。
